中国CATL、リチウム生産再開か 投資銀行がメモ、価格に冷や水の恐れ
車載電池世界最大手の中国の寧徳時代新能源科技(CATL)が、停止していた中国江西省でのリチウム生産を再開したとの観測が浮上している。リチウム価格はCATLの減産で供給が細るとの見方が価格の下支え材料になっていたが、再開ならば冷や水となる恐れがある。
2月7日のロイター通信が、スイス投資銀行UBSのメモの内容として伝えた。メモは上海有色網(SMM)の情報をもとに作成されたとしている。ロイターが取材したバッテリー金属トレーダー2名も、2月7日に、この地域での採掘が再開されたと聞いたと語ったという。ただ、UBSのほか、CATLやSMMも取材には直接回答していないとも伝わった。
■中国のEV補助金延長などで価格戻したが
米ブルームバーグ通信は2024年9月、やはりUBSのメモから、CATLが江西省のリチウム事業で生産調整を計画していると伝えた。これを受け、中国の広州取引所ではリチウムの取引価格が一次急騰し、米資源のアルベマールをはじめ中国内外のリチウム企業株が一時大幅に上げるなどの反応があった。
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ただ、リチウム価格自体は9月時点では本格反発せず、結局10月に炭酸リチウム仲値RMB7万1000/mtと二番底を付けた。2月6日の価格はRMB7万6000。中国の電気自動車(EV)向け補助金の延長などを手掛かりに、やっとRMB7万台後半まで戻してきたところだ。
過去1年間の炭酸リチウム価格の推移(99.5% China)(RMB/mt)
リチウム価格は中長期で見れば2021年春以来の安値圏にある。EV販売の失速や世界的な景況感の悪化などを背景に需要の戻りが鈍く、構造的な供給過剰が続く。CATLの生産再開の報は、供給上乗せの懸念につながる恐れがある。
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(IR Universe Kure)
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