欧州からの風:2025 February 「欧州プラスチックリサイクル事情」

EUは、プラスチック廃棄物の削減とリサイクルを推進するため、規制によるプラスチック再生材の使用の義務付けを次々に行なっており(例:包装・自動車)、リサイクラーは、プラスチックリサイクル処理能力の大幅な引き上げを迫られている。一方で最近の市場データは、欧州のプラスチックリサイクル能力の停滞を示している。
欧州のプラスチックリサイクル業界団体Plastic Recyclers Europeが発表した報告書によると、最新のデータは、欧州におけるプラスチックリサイクルの成長が停滞していることを示している。2023年度の実績では、EU27カ国およびノルウェー・スイス・英国の総生産能力は1,320万トンで、前年比ではわずか6%の増加にとどまり、2017年以来の最低水準となった。この時点までは、5年間で2倍増加しており、(平均+17%)、これは能力成長の急激な減少を反映している。
「2022年にEUのプラスチックリサイクルセクターが直面した問題は、2023年の最新の数字に反映されています」と、プラスチックリサイクル業者ヨーロッパの会長Ton Emans氏は述べる。「さらに、セクターにおける投資は半減しており、2022年に注入された10億ユーロと比較して、2023年にはわずか5億ユーロという結果に終わりました」
これらのデータを分析すると、処理能力が最も高かったのはポリオレフィン・フィルム、次にPETと硬質ポリオレフィンがそれに続き、この3種が欧州全体の処理能力の4分の3以上を占める。国レベルの処理実績では、ドイツが200万トンから250万トンで、域内では最も高い処理能力を持ち、スペインが約200万トンとドイツに続く。
2023年のデータは、リサイクル業者の事業活動の全体的な減速を示しており、EUのリサイクル事業全般の先行きと、規制で定められる再生材使用目標値達成における懸念が高まっている。こうした状況の背景には、欧州企業における生産およびエネルギーコストの上昇、EU市場における再生プラスチックの需要不足、EU域外からの安価なバージンプラスチックとリサイクルプラスチックの輸入増加などがある。輸入品については、その多くについては監視されておらずEUの業者が対応しているプラスチック再生材要件を満たしていないという。
Plastic Recyclers Europeは、欧州リサイクラーの声を反映し、EUに対し、欧州事業者の競争力とセクターの今後の着実な成長を維持するために、敏速な行動を起こすよう強く要請している。
(参考)
https://www.plasticsrecyclers.eu/publications/
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SCHANZ, Yukari
オーストリア、ウィーン在住フリーライター。現在、ウィーンとパリを拠点に、欧州におけるフランス語、英語圏の文化、経済、産業、政治、環境リサイクル分野での執筆活動および政策調査に携わっている。専門は国際政治、軍事、語学。
趣味は、書道、絵画、旅行、フランスワインの飲酒、カラオケ、犬の飼育。
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