米東部メリーランド州のボルティモア港で3月26日に起きた橋崩落事故の影響への懸念が強まっている。同港は米国第2の石炭の輸出拠点で、特にインドなどアジアの発電用石炭が占める割合が多いという。また港の周辺には欧州自動車メーカーの工場があるほか、鉄鋼やアルミニウムなどのハブ港でもある。
■硫黄分多い石炭、インドの発電向け多く
過去3か月間の一般炭価格の推移(発電用)(豪州産)($/ton)
事故の後、3月26日の一般炭価格は$128.95/tonと前日から0.97%値上がりした。ロイター通信の3月27日報道によると、同港に輸出ターミナルを持つ石炭採掘大手コンソル・エナジーは、ターミナルへの船舶の出入りに遅れが生じていると明らかにした。
同港は石炭の輸出基地だが、扱っている石炭の品質は硫黄含有量が多いため欧州発電向けには適さず、インドなどアジア向けが多いという。米ブルームバーグ通信が3月27日に分析会社エナジー・アスペクトの調査ノートを用いて報じたところでは、インドの年間石炭需要は10億トンを超え、直近の会計年度には約2億3800万トンの燃料を輸入し、そのうち約6%が米国から出荷されている。ボルティモアからはインドの米国産石炭の輸入のうち約1200万トンを占めているとも伝わった。
■トヨタ困惑、VWの工場も
自動車産業のサプライチェーンへの影響も懸念される。ブルームバーグによれば、トヨタ自動車の米国支社は3月27日、「ボルティモアは同社の北米事業にとって最重要な港湾ではないものの車両の輸出に影響が見込まれる」と明かしたという。メルセデス・ベンツ・グループやフォルクスワーゲン(VW)、BMWといった欧州の自動車メーカーが港とその周辺に施設を構えているとも伝わる。関係者は「代替輸送は進むだろうが、他の港も忙しく、十分に補えるかはわからない」としていると伝わった。
ボルティモア港では3月26日未明、航行中のシンガポール船籍の大型貨物船がパタプスコ川の河口に掛かる橋の橋脚にぶつかり、橋桁の部分が10秒ほどで崩壊。建設作業員8人が川に転落し、2人が救助されたが6人が死亡推定となった。
(IR Universe Kure)