異常気象による大雨で、インドやエチオピアで数百人が巻き込まれるなど、世界各地で地滑り被害が相次いでいる。鉱業への影響も例外ではなく、ベトナムやミャンマーの鉱山で死傷事故が発生。採掘活動と地すべりは切っても切れない関係にあるとはいえ、年々ひどくなる異常気象に翻弄される事態が目立っている。
■ベトナム、国営ビナコミン傘下の炭鉱で死亡事故
ベトナム国営通信のVNEXPRESSは7月29日、国営のベトナム石炭・鉱物産業グループ(ビナコミン)が子会社を通じて所有する北部クアンニン省のスオイライ鉱山で同日、5人が死亡する地すべり事故が起きたと伝えた。死亡した労働者は全員がベトナム人だった。事故当時のベトナム北部は大雨で、ほかにも洪水や浸水による死傷者が出ていた。ベトナムでは5月にも同じ地域での地すべりによる炭鉱での事故が発生したばかりだった。
地すべりは、ミャンマーで6月に大規模な事故が発生したことが記憶に新しい。ミャンマー北部カチン州のレアアース(希土類)鉱山で6月下旬に起きた事故では、中国人を含む15人が死亡した。事故はレアアースの国際市場でもセンチメントを暗くし、レアアース価格全体の下押し圧力となっている。
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■森林伐採が大雨の要因に
地すべりは採掘活動に被害をもたらすとはいえ、採掘活動が地すべりを誘発している面も否定できず、ある種の因果応報的な面もある。7月30日に発生し、140人超の被害が伝わるインド南部ケララ州ワヤナド地区の地滑りは、大部分がプランテーション地域で起きたとの報告がある。元は森林だった場所を切り開いた地域で、森林伐採の影響でアラビア海の気温が上昇し、大雨に結び付いたとの見方がある。
インドやベトナムでは、こうした「気温上昇に敏感な」地域での採掘活動や、発電所建設などを控えるよう、気象学者が警鐘を鳴らしているとも伝わった。
(IR Universe Kure)