ロシアメディアのイズベスチヤ(電子英語版)は3月31日、「ロシアと米国の政府がロシアのレアアース資源の共同開発で協議を開始した」とのロシア高官の話を伝えた。4月にサウジアラビアのリヤドで新たな会合が行われる見通しという。
■米企業は既に関心か
ロシア直接投資基金のキリル・ドミトリエフ最高経営責任者(CEO)がイズベスチヤに語った。報道によれば、同氏は、「すでに一部の米国企業がプロジェクトに関心を示している」とも明かした。ロシア側も「レアアースは協力のための重要な分野であり、さまざまなレアアースやプロジェクトについての議論が始まっている」(ドミトリエフ氏)状況という。
ドミトリエフ氏はハーバード大学出身で、米コンサルティング大手マッキンゼー・アンド・カンパニーや米金融大手ゴールドマン・サックスで働いた経歴を持つ、プーチン大統領の側近の中でも際立った米国通だ。「ロシアの対外投資および経済協力のための特別代表」も務める。
■技術ないロシア、原料ない米国 ウィンウィンのはずではあるが
レアアースは世界の鉱床のうち最大規模のものが中国とロシアの国境地域にあり、ロシアは埋蔵量では世界3位のレアアース埋蔵国だ(2022年JOGMECデータ)。しかし、鉱石生産量では8位に落ち込む。これは採掘・加工技術が乏しいためで、ロシア側としては米国の技術を取り込めるなら願ってもいないはずだ。
一方、米国は世界2位のレアアース生産国ではあるが、やはり原材料の調達面では輸入に頼り、加工も多くを中国に依存している。ロシアと組むことをきっかけに加工技術も再編し、中国依存を減らせれば、こちらも願ったりだろう。特に米国は半導体産業などを中心にレアアース需要は拡大が続くと見込まれ、ウクライナやグリーンランドをはじめ様々な国のレアアース資源に食指を動かしている。
レアアースの埋蔵量・地域と生産国
(出所:JOGMEC)
もちろん、両国の会談の行方はウクライナ戦争の停戦の動きと連動する。イズベスチヤは「もし会合が決裂した場合、米側が対ロ制裁を強化するなどの真逆の方向もあり得る」と伝えた。また、ウクライナや欧州からの横やりも想定され、米ロの経済的一致だけでは進まない可能性も大きい。
トランプ米大統領とロシアのプーチン大統領は3月中旬に電話会談したが、その後の動きは停滞気味だ。「トランプ流ディール」がどこまで通じるか。ウクライナ戦争の行方を占う材料に、また1つ「ロシアのレアアース」が加わった。
(IR Universe Kure)