中国で建造された船舶は世界でかなり就役しているが、米国政府は彼らが米国の港湾に入港する際には10月から港湾使用料を課す予定だ。コンテナ船社の多くは中国建造船を米国航路から外す動きを示している。
中国の海運における支配力を弱めるべく
米国通商代表部(USTR)は本年4月17日、中国の海事・物流・造船分野に対する1974年通商法301条に基づく措置内容を決定したと発表。中国企業が所有、運航する船舶や、中国海運会社以外でも中国で建造された船舶を運航し米国港湾への入港について、2025年10月14日から追加料金、寄港1回当たり最大で150万ドル(約2.2億円)の入港料を徴収する案を公表した。
これはコンテナ船の大きさによってかなり異なるが、大雑把に言うとコンテナ1個当たり数百ドルから最大600ドルに相当するといわれている。
このUSTRの措置案の発表は、ドナルド・トランプ大統領の「海事産業基盤再建の大統領令」(2025年4月11日発令)を受けた追加的措置だとしている。
世界的に見ても海上コンテナ運賃が下降傾向にある昨今だが、これらの追加料金が米国航路の海上運賃の上昇を招くのは必至だ。
世界の海運会社の対応
このUSTRの動きに世界の海運会社も素早く反応した結果、アジア~北米西海岸航路では、中国建造船のシェアが2025年前半の25~30%水準から、ここ数週間では20~25%の範囲へと低下傾向を示している。アジア~北米東海岸航路でも同様の傾向が確認されるが、その低下幅はより緩やかである。
中国建造船の多くを所有、運航管理しているのは、世界第4位のコンテナ船会社のCOSCOグループと世界第3位のフランスのCMA CGMだが、後者はその運航船舶の3割に当たるものが中国建造船ということだ。今のところ両社とも使用料を顧客に転嫁請求しない方針をすでに表明している。
港湾使用料は3年間かけて段階的に引き上げられ、その結果として中国のCOSCOグループが最も影響を受けるが、CMA CGM、更にはMSC(世界第1位)やマースク(世界第2位)も当然のことながら影響を受けるが容易に想像できる。
各業界紙で報道されている各社のコメントも予想外に楽観的であり、すべての米国港への定期サービス提供をきちんと維持し、今後のUSTR使用料の影響を最小限に抑えられると見込んでおり、MSCに至ってはグローバルな船舶ネットワークを積極的に再構築したことを発表している。
しかしながら、案じられるのは、中国建造船を数多く所有・運航するCOSCOグループが、新たな使用料金により来年最大15億ドル(2,250億円)の経済的打撃を受ける可能性があるとの推定でもある。
最後に
今回取り上げた船舶配置の変更に加え、世界海運は低下するコンテナ運賃、米国による貿易政策の不透明感によって先の見通しの利かないきわめて経営上困難の状況に直面している。
それを代弁するかのように、全米小売業協会(NRF)のサプライチェーン・関税政策担当副会長は、「米国の貿易政策の不透明感により、将来の事業成功に不可欠な長期計画を立てることが不可能になっている。これらの関税とサプライチェーンの混乱はコスト増をもたらし、最終的には米国消費者の負担増につながるだろう。」と語っている。
(IRuniverse H.Nagai)
世界の港湾管理者(ポートオーソリティ)の団体で38年間勤務し、世界の海運、港湾を含む物流の事例を長年研究する。仕事で訪れた世界の港湾都市は数知れず、ほぼ主だった大陸と国々をカバー。現在はフリーな立場で世界の海運・港湾を新たな視点から学び直している。