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脱炭素の部屋#240

2025/10/14 10:22
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脱炭素の部屋#240

循環経済と脱炭素の関係

 

 最近、さまざまな場面で「循環経済と脱炭素の関係」について説明を求められる機会が増えてきました。環境経営という言葉が一般化し、経済活動の中に環境要素を織り込む動きが急速に広がっている証拠だと思います。特にここ1〜2年は、大企業のみならず中小企業の経営者からも「循環と脱炭素の違いを整理したい」「どちらを優先すべきか」という質問を受けることが増えました。関心の裾野が、専門家の議論から現場の経営判断へと広がりつつあることを実感しています。

 

 私がよく説明に使うのは、「循環経済はほぼ脱炭素に貢献するが、脱炭素だからといって必ずしも循環経済とは言えない」という考え方です。一見似ている二つの概念ですが、両者の間には重要な違いがあります。

 

 循環経済とは、資源を使い捨てるのではなく、できるだけ長く使い続け、価値を最大化する経済の仕組みです。資源消費を抑えることにより、素材生産にかかるエネルギーや排出ガスは確実に減ります。たとえば再生プラスチックを使えば、新規樹脂を製造する場合に比べてエネルギー消費が削減されます。その分、CO₂排出も減る。つまり循環を深めれば深めるほど、結果として脱炭素が進むという関係にあるのです。

 

 他方で、「脱炭素」を目的とした取り組みの中には、必ずしも循環的とは言えないものも少なくありません。代表的なのは、省エネ活動や再生可能エネルギーへの転換です。これらはいずれもCO₂排出削減には寄与しますが、そこに資源の循環を伴うわけではありません。たとえば、化石燃料を太陽光発電に置き換えることは脱炭素にはなりますが、太陽電池パネルやバッテリーの寿命が尽きれば大量の廃棄物が発生します。廃棄物を再度循環させる取り組みはまた新たなチャレンジになる、つまり「脱炭素だが循環的ではない」例の一つだと言えるのです。

 

 同様に、水素エネルギーも期待される分野ですが、水素の製造過程で再エネを使わなければCO₂は減りませんし、使用済み装置の利活用が進まなければ、水素製造だけでは循環経済とは呼べないのです。こうして見てみると、脱炭素には循環的な要素を含むものとそうでないものが混在していることが分かります。

 

 しかし逆に、循環経済であればほぼ確実に脱炭素効果を持つ、という関係は成り立ちます。循環の本質は「資源投入の最小化」と「価値の再利用」ですから、これを進めること自体がエネルギーの節約につながるのです。

 

 一方で、循環経済には現実的な課題もあります。二次原料を使う場合、品質や供給量の面で制約が生じやすく、バージン材に比べて収益性が下がる懸念があります。リニア経済(使い捨てモデル)の時代に比べて、どうしても手間とコストが増えるため、短期的な採算だけで見れば「儲かりにくい」と評価されがちです。

 

 では、この不利をどう克服すればよいのでしょうか。私は「脱炭素を価値として可視化すること」が、その決め手になると考えています。もしも企業が循環経済を推進することで確実にCO₂削減を達成しているなら、その「削減量」自体を経済的な価値として扱える仕組みが必要です。これがまさに、脱炭素と循環経済を結びつける新しい時代の要請です。

 

 その代表例が「Jクレジット制度」です。これは、企業や自治体が実施した温室効果ガス削減・吸収量を「クレジット(排出削減価値)」として認証し、売買できるようにする仕組みです。これまで環境対策は「コスト」として扱われてきましたが、Jクレジットを活用すれば、努力を「収益」に転換できる可能性が開けます。たとえば、リサイクル工程の改善によって製造時のCO₂を減らした企業が、その削減分をクレジットとして販売できるとしたらどうでしょう。循環経済の推進がそのまま企業価値の向上につながるわけです。

 

 こうした制度はまだ発展途上ですが、日本でもすでにさまざまな分野で活用が進んでいます。再エネ導入や森林整備だけでなく、製造・物流・建設などでもクレジット化の動きが広がっています。循環材の利用や廃棄物削減の取り組みを脱炭素価値として認めるルールづくりが進めば、循環経済の収益性は大きく改善されるでしょう。

 

 経営の現場では、今まさに「循環」と「脱炭素」をどう経営戦略に組み込むかが問われています。環境対応を単なる義務やコストとして捉えるのではなく、「未来への投資」「新しい市場づくり」として積極的に取り組む企業こそが次の成長の波を掴むのだと思います。

 

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西田 純(循環経済ビジネスコンサルタント)
国連工業開発機関(UNIDO)に16年勤務の後、コンサルタントとして独立。SDGsやサーキュラーエコノミーをテーマに企業の事例を研究している。武蔵野大学環境大学院非常勤講師。サーキュラーエコノミー・広域マルチバリュー循環研究会幹事、循環経済協会会員


 

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