8月米国金属加工機械受注は同月比45.7%増5.29億ドル、3月5.16億ドル抜き年初来最大
10/13に発表された25年8月の米国金属加工受注は5.29億ドル(同月比45.7%増、前月比36.2%増)となった。25年としては3月の5.16ドルを上回り最高額となり、2023年3月の5.53億ドル以来の数字となった。
最大ユーザーのジョブショップ向けでも23年3月以来の数字となった。8月までの累積受注額は34.4億ドルとなり、前年同期比18.3%増となった。建機メーカーからの大型受注、農機メーカー(ディア社が人員削減の一方で自動化・省人化で積極投資)、建設関連(データセンターなどの積極投資)で空調関連機器メーカーからの受注などが寄与している模様。
工作機械受注は堅調に推移してきたが、政府資金によるインフラプロジェクトが10/1以降の連邦政府機関の閉鎖どの影響で中止となるケースが出てきており、設備投資鈍化が懸念されている。

米国製造技術工業協会(AMT)は2025年受注予想を前年比2.9%増に上方修正
米国製造技術工業協会(AMT)は最近の月次金属加工機械受注の堅調な伸びを背景に、2025年予想を8月に上方修正、5月時点の7.2%減に対し2.9%増、48.3億ドル(推定)予想とした。
当初は関税政策の影響をプラスと見るよりはマイナスと見るむきもあったが、25年半期では25.27億ドル(同期比14.2%増)と、自動化需要増などが牽引している。また航空宇宙向けなどが上期で過去最高額更新となっている。具体的な数字の開示はないが、3月に過去最高の月次受注額を獲得、上期で1.6~1.7億ドルとこれも半期で過去最高、2025年では3億ドルを突破するイメージで、2023年から2年間で1.5倍強の規模となる模様。なお製鉄などの一次金属メーカー向けなども前年同期比5割増なっている。さらに建機、農機、空調機器メーカーなど建設、土地造成、データセンタ設備投資等で恩恵のある企業などの設備増強も寄与していると見られる。
金額では好調であるが、機械台数で見ると5.2%増に留まっており、高性能工作機械、複合工作機械、大型工作機械などへの需要が高まっている。この背景にはトランプ政策による国内製造回帰の政策に沿い、業界トップ企業などが大型設備投資に踏み切り出した可能性がある。

数量と金額の乖離の推移を見ると、2025年上半期のデータで受注総額は前年同期比で大幅に増加している一方で、受注台数は平均を下回る月が散見される。2025年6月の受注額は平均的な年よりも21.2%高いにもかかわらず、受注台数は17.2%も低かった。同様に、7月の受注額は平均的な7月よりも約20%高かったが、受注台数は13%以上下回っている。
この金額と台数の乖離は、単なる価格インフレによるものではなく、むしろ米国製造業における設備投資戦略の構造的な変化を示唆している。受注単価の上昇は、より高価で、技術的に高度な、そして自動化された機械システムへの投資が活発化していることを物語っている 。AMTのレポートでも、平均受注額が「自動化または複雑さのレベルの一般的な代理指標」として機能すると指摘されている。
この背景には、多くの製造業が直面している深刻な労働力不足という経済的課題が存在する。企業は、既存の労働力レベルで生産性を向上させるための解決策として、自動化技術への投資を加速させている 。メーカーはより少ない台数の機械に、より多くの資本を投下することで、労働集約的なプロセスを自動化し、効率性を高めようとしている。このことから、受注総額だけでなく、受注額と台数の比率にも注目することが、必要となってこよう。
例えば、農機最大メーカーのディア社は米国経済の減速と需要の減少により2024年に生産拠点をメキシコに移転せざるを得なくなったため、アイオワ州やイリノイ州の工場の生産スタッフについて1000人を超える規模で削減を進めていた。しかしメキシコに対する高率関税問題に対し、ここに来て大規模な工作機械発注を実行、ある意味では徹底した自動化、高効率生産を行うことで生産性を格段に高め、米国国内でも収益性を確保できる体制の構築に動き出したと見られる。現状、米国工作機械メーカーだけでなく、日本の工作機械メーカーもこの恩恵を大きく受けていると見られ、日本の工作機械メーカーでも複合加工機、工作機械内計測などの高機能工作機械への発注が増えている。
この傾向は、米国の製造業が、より生産性が高く、労働力への依存度が低い産業基盤への移行を示している。今後も既存産業での高効率・省人化、一方で航空・宇宙、防衛産業、先端半導体、AIデータセンタなどに必要とされる超精密工作機械などの需要拡大が続こう。
2026年は関税負担コスト増で4.3%受注減予測も2027年12.7%増と2ケタ受注増予測
10月に入り、政府資金によるインフラプロジェクトが連邦政府機関の閉鎖どの影響で中止となるケースが出てきており、設備投資鈍化が懸念されている。また半導体の新設計画についても人で不足や建設費高騰などの要因もあり、設備投資実行が遅れ気味となっている。このため、協会では2026年について、関税負担の増加で工作機械の製造過程で製造コストが上昇し工作機械の価格上昇が見込まれ、台数の減少が生じると予測している。具体的には台数で8%程度減少、受注金額では4.3%減と減速予想としているが、金利低下が実行されれば減速幅が縮まり、トランプ政策による補助金支援などが実行されれば上振れてこよう。
2027年については、税制優遇効果の本格化、ハイテク産業や航空宇宙分野、AIデータセンタなどの建設に伴い電力設備投資関連などの投資も拡大し、受注額が12.7%増と改めて2ケタの受注増となる予測とした。


(図表については米国製造技術工業協会(AMT)資料、AMTのUSMTOプレスリリース、米国切削工具協会(USCTI)などの資料からIRユニバースが加工)
(H.Mirai)