今年10月に発表された国際エネルギー機関(IEA)の最新報告書によると、世界の再生可能エネルギー発電容量は全体的に力強い成長を遂げているにもかかわらず、世界の洋上風力産業は深刻な課題に直面している。世界の再生可能エネルギー発電容量は2030年までに2倍以上に増加すると予想されているものの、特に洋上風力セクターの見通しは弱く、成長予測は以前の予測よりも約25%低い。
IEAは再生可能エネルギー2025年次報告書(Renewables 2025)の中で、「洋上風力は主要市場における政策変更、サプライチェーンのボトルネック、そして原材料のコスト上昇により、昨年の報告書よりも約25%低い成長見通しとなっており、とても際立っている」と指摘している。
再生可能エネルギーを牽引する太陽光発電
この報告書は、太陽光発電が再生可能エネルギーの拡大を牽引し、今後5年間の世界の再生可能エネルギー発電容量増加の約80%を占めると指摘している。その優位性は、太陽光発電の低コストと許可取得までの期間の短さに起因しており、風力、水力、バイオエネルギー、地熱といった他の技術は、全体的な成長への貢献は小さいとみられる。
IEAのファティ・ビロル事務局長(Dr. Fatih Birol)は、新たな課題への取り組みの重要性を強調し、「多くの国で電力システムにおける再生可能エネルギーの役割が高まるにつれ、政策立案者はサプライチェーンの安全性と系統統合の課題に細心の注意を払う必要がある。」と述べた。
更には、世界の再生可能エネルギー発電セクターは、サプライチェーンの逼迫、系統統合の課題、財政的圧力、政策転換など、いくつかの逆風に直面している。これらの障害にもかかわらず、IEAは2030年までに世界の再生可能エネルギー発電容量が4,600ギガワット増加すると予測しているが、これは、中国、欧州連合、日本の発電容量を合わせた量に相当するということだ。
中国に依存する風力タービン
報告書は、風力タービン部品の世界的サプライチェーンは依然として中国に集中しており、主要生産セグメントにおいて2030年まで90%以上の市場集中を維持すると予想されている。これは、世界中の洋上風力発電プロジェクトのサプライチェーンの安全性に対する懸念を高めている、とも警告を発している。
洋上風力セクターは苦戦しているものの、再生可能エネルギー全体への信頼は依然として高く、大手開発業者のほとんどが2030年の導入目標を昨年比で維持または引き上げている。これは、現在の課題にもかかわらず、洋上風力を含む再生可能エネルギーの長期的な見通しは依然として明るいことを示唆しているようだ。
IEAとは
国際エネルギー機関(IEA)は、エネルギーを安定的に確保・供給していくための国際機関で国連の機関ではない。エネルギー安全保障の確立を目的に、第一次石油危機直後の1974年にキッシンジャー米国務長官(当時)の提唱を受けて、経済協力開発機構(OECD)の枠内における機関として設立され、現在、本部はフランスのパリに置かれている。
IEA報告書は以下から入手できます。
https://www.iea.org/reports/renewables-2025
(IRuniverse H.Nagai)
世界の港湾管理者(ポートオーソリティ)の団体で38年間勤務し、世界の海運、港湾を含む物流の事例を長年研究する。仕事で訪れた世界の港湾都市は数知れず、ほぼ主だった大陸と国々をカバー。現在はフリーな立場で世界の海運・港湾を新たな視点から学び直している。