2025年のバナジウム市況は方向感に乏しい展開だった。五酸化バナジウムがやや上昇したのに対し、鉄鋼向けのフェロバナジウムは下落した。鉄鋼価格の低迷が響いた。期待が高い電池向けは主用途にはなっておらず、価格を直接押し上げるには至らなかった。
■製鉄所の調達意欲が低迷、南ア不安も価格押し上げに至らず
2025年のフェロバナジウム価格の推移(V78%min US$/kg EU)($/kg)

フェロバナジウムの12月19日仲値は$23.75/kgだった。年初($25.5)からは6.9%下落した。フェロバナジウムはバナジウムと鉄の合金で、製鋼の副原料として鋼の強度、靭性、耐熱性などの向上のために使われる。2025年は世界的に中国産鉄鋼の下落に影響されて鉄鋼価格が低迷し、製鉄所の調達意欲の減退からフェロバナジウム価格も下落した。
2025年の五酸化バナジウム価格の推移(V205 fob China)($/lb Vo205)

五酸化バナジウムは12月19日に仲値$4.995/lbと、2024年10月以来の高値を付けた。年初($4.0)からは上昇率したものの、上昇率は4.0%と小幅にとどまった。底を探すムードが広がる中、下値拾い的な買いが入った。
バナジウムは多くが南アフリカ共和国で生産される。その南アは、秋になり電力問題が深刻化し、スイス資源大手グレンコアが9月に同国でのバナジウム事業でリストラを開始したと明かすまでになった。ただ、南アのインフラの不安定さは長年の問題であるだけに、タングステンやアンチモンなどのように供給不足からバナジウム価格が急騰することはなく、やや不安がよぎるにとどまった。
関連記事:電力問題に揺れる南ア 供給公社トラブル、26年9%値上げ観測も グレンコアは事業縮小
■電池は話題豊富も需要規模小さく
鉄鋼需要が低迷する中で、期待されているのが電池用途だ。バナジウムレドックスフロー電池(VRFB)やバナジウムフロー蓄電池(VFB)といった次世代型の蓄電池の材料として注目されている。
日本企業の挑戦も目立つ。住友電工は2月、米国での展示会で新たなVRFBを発表。4月には鹿児島県でのVRFB実用に踏み切った。
関連記事:週刊バッテリートピックス「住友電工が九州にRF電池」「米国が太陽電池に3500%課税」など
半導体シリコンウエハー(基板)の再生加工を手がけるRSテクノロジーズは海外でのVRFB事業を加速する。
関連記事:RSテクノロジーズ、海外VRFB事業を急拡大 スペインに電解液輸出、上海に孫会社設立
VFBの方は、出光興産がオーストラリアで導入に踏み切った。
関連記事:出光 ボガブライ石炭鉱山に太陽光発電と豪州最大容量のバナジウムフロー蓄電池を導入
ただ、電池需要はなおバナジウムの用途としては規模が小さく、価格に影響するには至っていない。実用も緒が付いたばかりで、採算や普及を含めて見極めていく必要がある。
■26年のブレイクスルーに期待
2025年は最終需要である鉄鋼の需要の先行きに悲観的なムードが広がる中、年間を通して企業はコスト割れとの戦いを強いられた。減産や操業中止に追い込まれるニュースも多かった。価格を見ても、フェロバナジウム、五酸化バナジウムともに2022年の急騰・急落後はじりじりと下落基調を続けている。2026年に本格反発するには、何らかのブレイクスルーが必要そうだ。
過去10年間のフェロバナジウムと五酸化バナジウムの推移

(IR Universe Kure)