関西地区で長年、鉄、非鉄、雑品スクラップ事業に携わる気鋭のスクラップディーラーに、昨今のスクラップ発生量減少の背景と、その裏に潜む建設業界の構造問題、さらには中小企業を取り巻く経済のリアルについて話を伺った。現場の「リアルベース」から見えてきたのは、単なる相場変動ではない、日本社会の深刻な変化だった。
町工場の沈黙と、看板の空きが語る「地域経済の現在地」
――最近、スクラップの発生量が減少しているという声を聞きますが、現場の肌感覚としてはいかがですか?
ディーラーK氏(以下、ディーラー)
スポット的にまとまった量が出ることはあっても、日常的な発生量は圧倒的に少ないですね。例えば、例年なら12月は年末に向けてスクラップの持ち込みが増える時期です。しかし昨年は、平野区や東大阪市など、大阪市内の町工場からの発生が全く増えませんでした。これは、本当に工場が動いていない(仕事がない)という明確なサインです。
もう一つ、リアルな指標があります。大阪の高速道路を走っていると、以前は大手ゼネコンや建設会社の巨大な看板がひしめき合っていましたが、今は空き看板だらけです。半分しか使われていない巨大看板を見るたびに、「これが大阪の実体経済なんだな」と痛感します。
スクラップ不足の真因は「サブコンの高齢化と人手不足」
――工場だけでなく、昨年から解体や建設現場からの発生も減っていますね?それゆえにスクラップ業界で単月赤字の会社も出てきているとか?
ディーラー:
ゼネコンの仕事が進んでいないのが大きな原因です。ただ、それは「ゼネコンが仕事をしない」のではなく、「仕事を進められない」のです。
――進められない、とはどういうことですか?
ディーラー:
下請けである「サブコン(電気工事や水道工事などの専門業者)」の高齢化と人手不足が限界に達しているからです。
昔なら、マンションを建てる際に「1組5人の職人チームをいつまでに手配してくれ」と依頼すれば回っていました。しかし今は、その親方衆が高齢化でどんどん引退しています。電気工事、水道工事、エレベーターの据え付けなど、専門性の高い最終工程を担う職人がいないため、工期が全く進まないのです。
「今からやりますわ」「後継ぎますわ」という若い世代はいない。「もう70歳で動けないから辞めるわ、ゼネコンさんごめんな」という世界に突入しているんです。
残っている業者には仕事が集中し、15分刻みで現場を回るようなスーパーハードスケジュールになっています。現場作業員が決定的に不足していることが、スクラップ発生遅延の根っこにあるんじゃないかと思いますね~。
中小企業を圧迫する税制と社会保険料のリアル
――経済対策や税制についての話題も出ましたが、経営者としてどう見ていますか?
ディーラー:
政治の世界では「消費税減税」などが議論されますが、その財源を確保するために、実は地方の固定資産税などを引き上げる動きがあると聞いています。東京などで家賃や税金が高騰し、地方へ流出せざるを得ない企業も出てくるでしょう。
我々中小企業にとって最もリアルで重い負担は「社会保険料」です。社員を雇うと、例えば6人規模の会社でも毎月70万円近い社会保険料が飛んでいく。給料だけでなく、この見えないコストが本当に高い。「重税国家」と言いたくなるほど、企業経営を圧迫しているのが現実です。
業界に落ちる影:不透明なカネの流れと淘汰の波
――業界内での競争や、海外資本の動きについて気になる点はありますか?
ディーラー:
不可解なお金の動きを感じることはあります。例えば、中国系の輸出業者の例ですが、スクラップを中国に輸出販売したお金が日本国内に入金されず、中国の海外口座などで資金の流れが完結してしまっているようなケースです。日本でもありますよ。さほど売り上げは伸びていないのに、急に巨大な中華料理店をオープンさせたと思ったら、裏で国税に入られていた…といった話も耳にします。
また、過去に倒産した同業他社の噂ですが、「B勘(簿外取引・裏金)」が常態化していたのではないかと言われています。本来なら生き残れるはずの規模の会社が、無理な高値買い取り(例えば相場が40円のところを50円や60円で買うなど)をバンバンやって自滅していく。そういったグレーなやり方をしている業者は、最終的には淘汰されていくのだと思います。まだほかにもここでは言えない話はありますが、ここでは言えないのでまた別の機会に!
――ありがとうございました。
(IRUNIVERSE yt)