Loading...

中国タンタル在庫に異変 酸化物・炭化物在庫が急増、価格急落の背景に「買い疲れ」か

2026/05/12 12:54
文字サイズ

 タンタル国際価格が4月中旬以降急落する中、中国国内の在庫動向にも大きな変化が表れ始めた。中国タンタル産業では、炭化物・酸化物の在庫が3月に急増。一方で金属タンタル在庫も積み上がり傾向を示しており、供給逼迫一色だった市場心理が変化しつつある可能性が出ている。
 Asian Metalが5月11~12日に発表した中国タンタル業界在庫統計によると、炭化タンタル、酸化タンタル、金属タンタルのいずれも在庫増加となった。4月中旬以降のタンタライト価格急落の背景には、中国側の需給緩和があるとの見方が浮上している。
関連記事
【市況分析】タンタライト相場、280ドルから170ドルへ急落――パニック買いの終焉と地政学的リスク緩和の背景
レアメタル系スクラップ市場近況2026#5 タンタル、タングステンスクラップ急落!

■炭化タンタル在庫、前月比22%増
 中国の炭化タンタル(tantalum carbide)メーカー在庫は3月に2.8トンとなり、前月の2.3トンから21.7%増加した。
 前年同月比では3.5%減と依然低水準だが、2026年1月に在庫が大きく減少した後、2~3月にかけて急速に回復している。
 炭化タンタルは主として超硬工具や切削工具用途で消費される。日本国内の超硬スクラップ市況では、4月の15,000~16,000円/kgから5月には10,000~11,000円/kgへ5000円急落しており、中国側在庫回復との整合性が見えてきた。
 これまでの価格高騰局面では、中国の超硬メーカーが在庫確保を急ぎ、タンタライト価格を押し上げていた可能性が高い。
■酸化タンタル在庫、前月比60%増の急拡大
 より顕著なのが酸化タンタル(tantalum oxide)在庫だ。
 3月在庫は80トンと、前月の50トンから60%増加した。
 前年同月(140トン)比ではなお42.9%少ないものの、2025年を通じて低下傾向だった在庫が、2026年春に入り反転した格好となる。
 酸化タンタルはコンデンサー向けタンタル粉末の原料であり、電子部品市場の実需動向を映しやすい。
 ここへきて在庫が積み上がったことは、
高値局面での原料買いが一巡し、下流需要が価格上昇についていけなくなった
可能性を示唆する。
 実際、4月後半から中国向けタンタライト価格(CIF China)は急速に軟化している。
■金属タンタル在庫も増加、供給懸念後退か
 一方、金属タンタル在庫も増えている。
 3月時点で28トンと、前年同月比40%増、前月比でも3.7%増となった。
 2026年1~3月平均でも30.3トンと、前年同期比22.9%増。
 これは中国精錬業者や加工メーカーが、これまでの供給不足を警戒した積極的な在庫積み増しを行った結果とみられる。
 市場では、
「供給危機に備えた在庫積み増しが一巡した」
との見方も出始めている。
■タンタル急落の背景、「需給崩壊」ではない
 ただし、今回の在庫増だけで相場急落を単純に説明するのは早計だ。
 タンタライト価格は5月時点で170~200ドル/lb近辺まで下落したとはいえ、2025年前半の90ドル台と比べれば依然として倍近い高水準にある。
 むしろ今回の調整は、
「供給危機プレミアム」の一部剥落
と見るほうが実態に近い。
 中国国内では在庫が積み上がり始めた一方、中東情勢やアフリカ産鉱石供給への警戒は依然根強い。軍需・半導体用途向け需要も中長期的には堅調との見方が強い。
 市場は、
「極端な供給不安」から「高値圏での需給再均衡」
へ移行しつつある局面に入った可能性がある。
■焦点は4~6月の中国在庫推移
 今後の最大の焦点は、4~6月に中国在庫がさらに積み上がるのか、それとも再び減少に転じるのかだ。
 もし酸化タンタルや炭化タンタル在庫の増加が続けば、
タンタル相場の過熱感修正
がさらに進む可能性がある。
 一方、足元では安値局面での買い戻し観測も出ており、2026年後半に向け再上昇シナリオを予想する向きもある。
 タンタル市場は、2026年前半の異常な高騰局面から、在庫主導の「次の相場」へ入りつつあるようだ。


(IRuniverse/MIRU S. Aoyama)

本記事は執筆者個人の分析および見解であり、IRuniverseの公式見解を示すものではありません。内容は情報提供を目的としたもので、投資判断の根拠として用いることを意
図したものではありません。

 

関連カテゴリ

関連記事

新着記事

ランキング