イラン戦争の影響で、石油や液化天然ガス(LNG)輸送の要衝であるホルムズ海峡は事実上封鎖された状態が続いており、世界的なエネルギー危機が深刻化する懸念が高まっている。日本は比較的潤沢な石油備蓄を抱えるものの、原油の95%超を中東に依存していることから代替調達が急務となっている。
アゼルバイジャン産原油、日本到着
カスピ海沿岸のアゼルバイジャン産の原油を積んだ超大型原油タンカーBright Horizon号(パナマ船籍)が5月12日昼過ぎに石油元売りのENEOS(エネオス)の根岸製油所(横浜市)に到着した。原油はアゼルバイジャンからパイプライン経由でジョージアに送られた後、4月初めに出港し、黒海から地中海に出てスエズ運河を通過、紅海を通り日本に運ばれ、他の原油と混ぜられ精油所で処理されるという。
今回アゼルバイジャンから輸入されたのは64万8000バレルほどで、船舶追跡プラットフォームのマリン・トラフィック(Marine Traffic)の航跡データによると、横浜に寄港する前は鹿児島県喜入にあるエネオス喜入基地で其のうちの約半分以上の約36万バレルの原油の荷下ろしを5月7日,8日に行った模様で、残りの約29万バレル(約4.5万キロリットル)が横浜に到着した模様で、それは国内で1日に消費される量のおよそ1割にあたる模様だ。エネオス喜入基地は世界最大級の原油の中継備蓄基地だ。
調達多角化で「瀬取り」も行われている
洋上において船から船へ船荷を積み替えることを英語でShip-to-ship transferと言うが、日本語では「瀬取り」という。
ブルームバーグ外電によると、中東のオマーンから出荷された原油がインド西海岸ムンバイ沖で超大型タンカー(VLCC)に積み替えられ、その後日本へ向かっていることが分かっている。イラン戦争の影響で中東産原油の供給が滞る中、異例の手法で調達する動きが続いている。
中東原油を巡ってはホルムズ海峡を経由しない代替ルートとしてアラブ首長国連邦(UAE)のフジャイラ港やサウジアラビアの紅海沿岸のヤンブー港が注目を集めているが、中東情勢が緊迫化する中でいずれの海域も安全とは言い切れない状況だ。そのため危険海域への航行に慎重な買い手の間では、「瀬取り」の活用が広がる可能性がある。
代替調達が今後は盛んに
イラン情勢が不安定になってから、政府は原油の調達先の多角化を進めてきており、エネルギーの安定調達に向けた外交を急いでいる。
日本の石油元売りが2023年以来初めてメキシコ産原油を購入
原油の代替調達先としては米国に限らず、今回はメキシコも高市総理が同国大統領に直談判した結果、石油元売りのコスモ石油の名前が挙がっている。
筆者が確認したところによると、超大型タンカー(VLCC)の「Eagle Kuantan」(シンガポール船籍)は現在、米国テキサス州のネダーランド港にメキシコに向けて停泊中、同じくシンガポール籍「Eagle Kangar」は目下、メキシコ東岸の石油積出港のパジャリトス港(Pajaritos)に向かっている模様だ。
両タンカーでイスムス原油計100万バレルを積み込む予定のようだ。原油はメキシコ石油公社(ペメックス)の取引部門PMIが供給する予定のようだ。
コスモ石油は今後3カ月間について、3製油所での生産を維持するため、メキシコや米国など中東以外からの供給を確保したと明らかにした。
4月には高市早苗首相がメキシコのシェインバウム大統領と会談し、イラン戦争が続く中でペメックスから日本への原油供給の可能性について協議していた。
今後は
日本の原油供給はその9割超を中東に依存しており、主にサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、クウェート、カタールから輸入している。現在、これらの国はホルムズ海峡の事実上の封鎖による影響を受けている。日本国内における石油製品の不足は、食品製造から医療機器メーカーまで幅広い分野に波及している。
明日北京で行われる予定の米中首脳会談でのイランに関する話し合いの結果によって、今後のイラン戦争、特にホルムズ海峡への対処が決まるものと思われる。