日本チタン協会は5月28日、如水会館(竹橋)にて2026年度通常総会を開催し、事業報告と講演会を行った。2025年度における日本のチタン産業は、航空機向けの堅調な需要と、一般産業向けの停滞という、明らかな二極化の様相を呈した一年となった。日本チタン協会のまとめに基づき、その動向を詳述する。
全体概況
航空機向け需要は、サプライチェーン内での一時的な在庫調整が見られたものの、民間航空機の豊富な受注残を背景に、総じて高いレベルを維持した。一方で、一般産業向けは中国の過剰生産(チタン展伸材)やトランプ関税に伴う世界経済の不透明感の影響を受け、低迷を余儀なくされた。さらに、中東情勢の緊迫化による地政学リスクの高まりを受け、今後の景気減速リスクや先行きに対する不透明感が強まっている。
1. スポンジチタン動向:比較的高水準を維持
スポンジチタンの2025年4〜12月における出荷実績は38,495トン(年率換算で約51,300トン)となった。米ボーイング社の品質問題に起因するサプライチェーン内の在庫調整や、一般産業向けにおける中国の過剰生産の影響により出荷ペースは鈍化したものの、過去数年の水準と比較すると依然として高い出荷レベルを維持している。大阪チタニウムテクノロジーズの川福社長によると「受注残は数年、数十年分あるが、25年はやや低下したにすぎず、これからは再び増加に転じる」とのこと。しかしスポンジチタンの価格については、チタン鉱石の下落に伴い、やや低下するとみられている(今年分)。これは酸化チタンの需要減、に伴うもの。いわばハイグレードのスポンジチタンも酸化チタンに足を引っ張られる格好となっている。

表1:スポンジチタン出荷量推移(単位:トン)
年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | 2025年4〜12月 | (2025年度年率換算) |
|---|---|---|---|---|---|---|
出荷量 | 48,333 | 56,978 | 57,784 | 52,142 | 38,495 | 約51,300 |
2. チタン展伸材動向:低水準での推移と競争激化
チタン展伸材の2025年度出荷実績は9,803トンとなり、前年度(9,894トン)比でほぼ横ばいとなった。しかし、これで3年連続の前年度実績割れとなり、2年連続で大台となる1万トンを割り込む深刻な低水準が続いている。
この背景には、主要な需要分野であるPHE(熱交換器)向けが2024年度の3,172トンから2025年度は3,267トンへと微増したものの、電解用途が2024年度の1,733トンから2025年度は1,742トンとほぼ横ばいにとどまり、明確な復調の兆しが見られなかったことが挙げられる。さらに、安価な中国材の台頭が顕著であり、一般産業用純チタン市場における国際的な価格競争の激化が大きな課題として浮き彫りになった。
この中国材の影響について神戸製鋼の門脇執行役員は「2~3年までは中国も日本の展伸材を使っていたが、いまではエンジニアリング会社も中国企業、使うチタン展伸材も中国国内製となっており、日本の展伸材の入る余地はない。それがアジア市場全体に影響を及ぼしている」と話されていた。
表2:チタン展伸材出荷量推移(単位:トン)
年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | 2025年度 |
|---|---|---|---|---|---|
出荷量 | 12,187 | 14,788 | 12,961 | 9,894 | 9,803 |

総括
日本のチタン産業は、航空機分野という強力な牽引役を持つものの、一般産業分野における需要の伸び悩みと中国製品との激しい競争という構造的な課題に直面している。今後は地政学的なマクロ経済リスクを注視しつつ、競争力の維持・強化が求められる局面を迎えている。
~ チタン協会懇親会での川福副会長の結びの挨拶~
この日(28日)の講演会後(*講演は東京大学の御手洗先生によるチタンリサイクルの話(別途掲載)、懇親会が行われ、中締めとしてチタン協会副会長の川福氏がいつものようにユーモラスに、しかし率直に語っておられたので、以下に要点を掲載する。
「スクラップが国内に循環されるということに対して、私は決してネガティブには思っていません。なぜならば、経済産業省が「日本国内で航空機のサプライチェーンを作ろう」と色々と謳っておりますけれども、実は『動脈(製造側)』の方ばかりが謳われていて、『静脈(リサイクル・スクラップ等)』側というのは何一つ語られていないなと感じていたからです。
その中で、御手洗先生が静脈の部分についてズバッと厳しいご意見をご講演されたなと思っておりまして、やはり「我々静脈側なしで動脈はない」と強く思っております。ここにご参加の皆さん、ぜひ日本のサプライチェーンの静脈側として頑張っていきたいと思います。よろしくお願いします。
最後に、冒頭のお話にもありましたけれども、一言で言いますと、現在チタンに関する良いお話が何もないというふうに思っています(笑)。何か明るい話題があったら教えてほしいと思うぐらいです。
しかし、去年の11月にも申し上げましたけれども、私自身は日本のチタンの「ものづくり力」「品質・コスト競争力」というのは、やはり世界でナンバーワンだと思っています。ここは景気が良いとか悪いとか関係なく、やはりナンバーワンはいつもナンバーワンだなと思います。
ですので、この「ものづくり力ナンバーワン」をしっかりと維持したままで、来たるべき時のために我々は実力を蓄えておき、景気が回復した時に一気にその力を爆発させたいですね。世界のチタン業界で我々が多く貢献できるように、しっかりとコスト競争力を高め、さらに磨きをかけていきたいと思っております。
皆さんと一緒に、今は耐え忍びながら、「明けない夜はない」という思いで頑張っていきたいと思っております。
それでは、中締めということですので、乾杯で締めたいと思います。乾杯!
(IRUNIVERSE YT)