ホルムズ海峡の閉鎖により孤立した湾岸諸国への新たな物流ルートが出現し、新たな複合一貫輸送ルートや地域連携によって貿易のスムーズな流れの食い止めに努めている模様だ。
国連貿易開発会議(UNCTAD)が発表した英国海事コンサルタント会社クラークソンのデータによると、ホルムズ海峡を通過する船舶数は、2月の110隻以上から戦争開始以来、ごく僅かだ。海峡の閉鎖により、トラックや鉄道による陸上輸送へのシフトを余儀なくされている。
複合一貫輸送への流れ
コンテナ貨物データ追跡会社Vizionによると、湾岸地域への海上輸送ルートが不安定になるにつれ、海運会社は中東への貨物輸送を維持するため、コンテナを陸上輸送ルートに切り替えており、地域貿易の流れが「複合一貫輸送により再構築」されているようだ。
アラブ首長国連邦(UAE)のケース
2025年にコンテナ取扱量で中東最大の港となったジェベル・アリ(Jebel Ali)港では、輸入コンテナ予約量が2月の週平均3,500個以上から5月初旬には約1,500個にまで減少した。輸出コンテナ予約量は戦争勃発前の2月には約1,600個だったが、4月下旬から5月上旬にかけてはその10分の1にまで落ち込んだ。
ホルムズ海峡東側に位置するUAEのホール・ファッカン(Khor Fakkan)港、オマーンのサラーラ(Salalah)港、および紅海沿岸のヨルダンのアカバ(Aqaba) 港では、輸出入コンテナ予約量が急増している。
UAEの化学メーカーのボルーグ(Borouge)、国営鉄道であるエティハド鉄道、ガルフテイナー海運が5月7日にホール・ファッカン港(Khor Fakkan)での提携を発表したことは、UAE全土における多様な輸出拠点の強化を目指す取り組みの一つとして注目される。
ボルーグは、アブダビに拠点を置く石油化学企業であり、ポリオレフィンの製造会社である。同社は、アブダビ国営石油会社(ADNOC)とオーストリアのボレアリスによる合弁企業として1998年に設立され、従業員数は3,100人を超える。
サウジアラビアのケース
サウジアラビア国営鉄道も3月26日、貨物列車による新たな国際物流回廊を開設し、湾岸東部の港湾とヨルダン国境近くの陸路港アル・ハディサ(Al-Haditha)を結んだ。
紅海沿岸に位置するサウジアラビア最大かつ最も活気のある港、ジェッダ(Jeddah)港も恩恵を受けている。4月の輸入コンテナ予約数は週平均4,600個を超え、2月の1,945個から大幅に増加した。ヨルダンのアカバ港、エジプトのアレクサンドリア港、トルコのメルシン港など、他の港でも戦争勃発以来、コンテナ予約数が急増している。
注目を集めるネオム港
更に、国を挙げて開発中の紅海沿岸にあるサウジアラビア北西部ネオム(Neom)港も、同国紅海沿岸における新たな代替港として売り込まれている。
ネオム港は約10年前に発表された未来都市構想の中心地で、ムハンマド皇太子が構想を主導したが、コストが想定を超えたため規模が縮小された。同港はその公式ホームページに「欧州-エジプト-ネオム-ペルシャ湾岸を結ぶ迅速輸送の経路」と投稿し、ペルシャ湾岸6カ国の市場への物流を加速するための海上・トラック輸送をつなぎ合わせた経路と説明。
ただ輸送データでは、ネオムが担う役割は限定的にとどまっていることが示されている。調査会社ケプラー(オーストリア)のデータによると、ネオム港の発着はトラックが船内に乗り込むロールオン・ロールオフ船(RoRo船)が大半を占め、4月時点ではコンテナ船の輸送実績は皆無だった。
目下、ネオムから南方に約950㎞離れているサウジアラビアの紅海沿岸の主力港であるジェッダ(Jeddah)がかなり混雑していることで、ネオムが魅力的になっているとのことだ。
下図はネオム港ホームページからの抜粋で、湾岸諸国と欧州を結ぶ意図が読み取れる。

オマーンのケース
また、ホルムズ海峡の外側に港を持つオマーンへ、UAE国境を越えて輸送されるコンテナも増加している。前出のVizionのデータによると、4月26日までの1週間で、オマーン南部のサラーラ港における輸入コンテナの平均予約数は1,844個に達し、2月初旬の週平均の4倍となった。
最後に
売上高では世界第2位の3PL(サードパーティ・ロジスティクス)企業、キューネ・アンド・ナーゲル(Kuehne + Nagel)のデジタル情報部門を支えるSeaexplorer社で、そこの最新情報によると、現在ペルシャ湾内に足止めされているコンテナ船は99隻(約34万TEUの積載能力)いるとのことだ。数日前、イランは日本船のホルムズ海峡円滑通過を支持と伝えれれているが、今後の展開を注視したい。