国内のステンレス鋼材市場は、指標となるLMEニッケル価格が下落基調にあるものの、流通実勢価格は高値圏で底堅く推移している。また、市場の関心を集めていた中国・台湾製に対するアンチダンピング(AD)課税についても、実質的な影響は限定的であることが明らかになってきた。
1. 流通実勢とメーカー価格の行方:LME下落も「横ばい」予想が大勢
現在の国内ステンレス鋼材の流通実勢価格(ステンレスコイルセンターの板材販売価格)は、概ね以下の水準で推移している。
SUS304系(ニッケル系): キロ当たり 580円前後
SUS400系(クロム系): キロ当たり 380~390円
今後の市況を左右するメーカーの価格改定について、市場の視線は7月17日に発表予定の日本製鉄(7月契約分SPOT価格)に集中している。
注目すべきは原料相場の動向である。アロイリンクの指標となるLMEニッケル価格は、明確な下落トレンドを描いている。
5月平均: 18,805ドル
6月平均: 17,663ドル
7月(13日時点): 16,213ドル
5月の高値からすでに2,500ドル以上下落しているものの、業界内では「7月のメーカー発表価格は前月比横ばい」との見方が大勢を占めている。これは、アロイ分のマイナス要因があったとしても、メーカー側がベース価格の引き上げ等で相殺し、価格水準を維持する公算が大きいためと目されている。

2. 中国・台湾向けAD課税:限定的な対象と低税率で「影響は軽微」
一方、すでに発動されている中国および台湾からの輸入ステンレス鋼材に対するアンチダンピング(AD)関税については、国内需給や市中価格へ与える影響は「極めて軽微」にとどまっている。その主な要因は以下の2点にある。
課税対象の限定(熱延は対象外):
今回のAD措置は「冷延製品」のみに限定されており、熱延製品は対象から外れている。これにより、輸入材の流入ルートが完全に絶たれたわけではない。
実質的な税率の低さ:
台湾の主力メーカーであるYUSCO(燁聯鋼鐵)製品に対するAD税率はわずか「3%」に留まっている。50%近い高関税が警戒されていた当初の想定と比較すると、輸入障壁としてのハードルは非常に低い。
【総括】
足元の国内ステンレス市場は、LMEニッケル相場の軟化という下押し要因と、メーカーの価格維持姿勢が交錯する局面にある。さらに、輸入材に対するAD措置が事実上「骨抜き」に近い状態となっていることから、海外材による安値圧力は今後も継続するものと見られる。
当面の国内流通市況は、キロ580円どころでの「高値もみ合い」が続く見通しであり、秋口に向けた実需の動向が次の相場展開のトリガーとなる。