オーストラリア・シドニーで10/27-29の3日間で開催された「IMARC 2026」では、世界各国の鉱山会社や資源関連企業がブースを構え、重要鉱物の新たな供給源確保に向けたプロジェクトや技術をアピールした。中国への供給依存が続くタングステンやレアアースをはじめ、資源の安定調達とサプライチェーンの多角化は、日本を含む各国にとって重要な課題となっている。
MIRUは会場内のスタートアップ・ジュニアマイナーのブースを訪問し、タスマニア州政府、EQ Resources、Barkly Rare Earths、AXEL REEの担当者に立ち話形式でインタビュー。それぞれが進めるタングステンやレアアースの開発プロジェクト、精錬・回収技術、今後の投資計画について話を聞いた。豪州の資源開発の最前線と、世界の重要鉱物サプライチェーンに新たな選択肢をもたらそうとする企業の動きを紹介する。
タスマニア州政府、タングステンなど重要鉱物の開発と産業集積を推進
IMARC 2026のタスマニア州政府ブースでは、同州が進める重要鉱物の探査・開発プロジェクトや、海外企業との連携可能性について話を聞いた。タスマニア州は、豊富な鉱物資源を背景に、タングステンをはじめとする重要鉱物の開発に力を入れている。ブースでは、州内のプロジェクトに関心を示す企業としてGeogmapの名前が挙がったほか、Mount Lindsayプロジェクトを進めるCritica Resourcesなど、関連企業の出展情報も紹介された。担当者は、州内にはまだ初期段階にある探査案件も含め、さまざまな開発機会が存在すると説明。MIRU側からは、鉱山での採掘だけでなく、その後の選鉱、加工、精錬まで含めたサプライチェーンの構築に関心があることを伝えた。資源を掘り出すだけでなく、工業用材料として付加価値を高める工程をどこに設けるかは、日本企業にとっても重要なテーマだ。タスマニア州政府は、州内の資源開発プロジェクトと国内外の企業をつなぐ役割を担っており、今後、日本の素材・精錬関連企業との協業機会にも期待が持たれる。

EQ Resources、米ネバダ州の休眠タングステン鉱山・精錬設備の再稼働に参画、中国依存脱却へAPT供給網を構築
EQ Resourcesは、タングステンの中国依存が続くなか、中国以外の地域でAPT(パラタングステン酸アンモニウム)の精錬能力を確保する重要性を強調した。同社が技術面で参画するのは、米国ネバダ州Imlayに位置するSpringer(スプリンガー)タングステンプロジェクトだ。同プロジェクトでは、長期間稼働を停止していた既存の鉱山・選鉱設備に加え、既存のAPTプラントを活用した生産再開を目指している。西側諸国ではAPTの生産・加工能力が限られ、新たにプラントを建設する場合には5~6年を要する可能性がある一方、既存設備を再利用することで、より短期間での立ち上げが期待できるという。EQ Resourcesは、タングステン鉱山の操業や精錬に関する技術的知見を提供し、鉱石の供給にも関与する計画で、APTプラントの合弁事業への出資も検討されている。同社のマネージングディレクターは、中国国外最大級のタングステン精錬企業の一つであるNuiValの創業にも携わった経歴を持つ。中国国外でのAPT供給網の構築が課題となるなか、Springerプロジェクトは、既存資産を生かして米国内にタングステンの精錬能力を取り戻す取り組みとして注目される。

Barkly Rare Earths、豪州北部で大規模レアアース資源の開発を推進
豪州北部準州(Northern Territory)でレアアース探査・開発を進めるBarkly Rare Earthsは、同社の中核プロジェクトであるBarklyプロジェクトを通じ、電気自動車(EV)や風力発電機などに使われる永久磁石向けレアアースの供給源確立を目指している。同プロジェクトは、テナントクリークの北東約350kmに位置し、約5,030平方キロメートルに及ぶ7つの探鉱ライセンスを100%保有する。これまでの探査により、VanadisおよびBenmara Northの2地区で、TREO(総レアアース酸化物)品位2,100ppm(0.21%)、資源量約4,000万トンの推定鉱物資源量(JORC基準、推定資源量)を確認している。特に、ネオジム(Nd)、プラセオジム(Pr)、ジスプロシウム(Dy)、テルビウム(Tb)など磁石用途に重要なレアアースの割合が高く、MREO(磁石用レアアース酸化物)は710ppm、TREOに占める比率は34%となる。また、同社は試験段階でMREOの74%を抽出した実績を公表しており、ウランやトリウムの含有量が低い点も特徴として挙げている。既存の資源量は探査対象区域のごく一部の調査に基づくもので、今後の追加ボーリングによる資源量拡大にも期待がかかる。豪州北部準州では、地質的な多様性を背景にレアアース探査の可能性が広がっており、Barklyプロジェクトは、重希土類を含む磁石向けレアアースの新たな供給源候補として注目される。

ブラジル発、次世代レアアース回収技術に挑むAXEL REE ガリウムも保有、日本企業との提携に意欲
中国で実用化されてきたイオン吸着型粘土鉱床の回収技術をブラジルで展開しようとしているのが、AXEL REEだ。同社はブラジル・ミナスジェライス州のCaladãoプロジェクトで、レアアースに加えてガリウム資源も保有する。レアアース資源量は約7億860万トン(TREO品位1,443ppm、2026年9月発表)。開発の初期段階ではWoolrich地区を優先し、硫酸マグネシウム溶液を地中に注入してレアアースを溶出・回収する原位置回収(ISR)技術の実証を目指す。中国のイオン吸着型粘土鉱床で用いられてきた手法を応用し、従来型の採掘・選鉱工程を簡素化することで、開発コストや環境負荷の低減を狙う。ただし、ISRは現時点で現地実証に向けた開発段階にあり、商業生産が実現しているわけではない。レアアースとガリウムの双方を対象とする同プロジェクトは、日本の磁石・半導体産業にとっても関心を引く案件といえる。IMARCで取材に応じたPatience Mpofuマネージングディレクターは、日本企業からの投資や技術提携、オフテイク契約を歓迎する姿勢を明確に示し、日本企業との協業に期待を寄せた。
