新着情報

2024/04/24   生産動態統計(24...
2024/04/24   三菱商事とデンカ ...
2024/04/24   POSCOグループ...
2024/04/24   LME、ロシア産金...
2024/04/24   6月19日‐20日...
2024/04/24   欧州からの風:20...
2024/04/24   2024年2月鉄ス...
2024/04/24   中国国家安全部 レ...
2024/04/24   「中国バナジウム・...
2024/04/24   中国の3月の亜鉛鉱...
2024/04/24   中国の3月の銅スク...
2024/04/24   中国の3月の銅鉱砂...
2024/04/24   中国の3月のニッケ...
2024/04/24   タングステン輸出入...
2024/04/24   中国の3月のアルミ...
2024/04/24   中国の3月アルミス...
2024/04/24   中国の3月ステンレ...
2024/04/24   中国 タングステン...
2024/04/24   MARKET TA...
2024/04/23   アルコニックス:特...

サクラ咲く新たなEVの可能性と展示 日産自動車株式会社のVRお披露目会

2022年5月20日、オンラインVRソーシャル・ネットワーキング・サービスのVRChatにて、日産自動車株式会社主催の「NISSAN 新型電気自動車『日産サクラ』VRお披露目会」が開催された。

これは同日14時から同じくリアルイベントとして発表会が開催されたもののVRSNS版として実施された物である。

本記事では日産サクラの大まかな概要と、日産自動車の取り組みの熱意について見ていく事とする。

 

 

 

電気自動車に求められるニーズの開拓

 昨今自動車業界で話題となっているのが電気自動車というテクノロジーだ。

これは内燃機関に代わって大容量のバッテリーを搭載し、その電力を用いてモーターを駆動させる方式の自動車である。

その構造の特性上、これまでの内燃機関やハイブリッド車とは全く違う車体設計を特徴としている。


 電気自動車は確かに環境への配慮、そしてここ最近声高に叫ばれているSDGs(持続可能な開発目標)へ適合する製品であるとされている。

そしてそれ以上に数々の先進的なテクノロジーが投入されている事が、これまでの車両と大きく異なっている。

例えば車両の安全性を向上させる各種センサーと、それに連動した様々な情報をいち早く拾い上げる技術の搭載は電気自動車において早くから行われている。

また各社が開発を進めている新しい技術が優先的に投入されるのも、電気自動車の特徴となっている。


 だが電気自動車にもネックが存在する。

最大の問題点がその価格の高さであり、通常のガソリン車ないしハイブリッド車と比べると手を出しにくい設定となっている。

もちろんパーツメーカー等の三輪駆動車両ベースの四輪駆動改造車両というものは緩やかにリリースされているが、それであっても一人乗りかつ高速走行不可など様々な制限がつきまとう。

この手の改造車両については商流に乗りにくい事もあり、電気自動車を求めるユーザーから現行の軽自動車程に安価でありながら取り回しの良い車両のニーズが発生する事は、自然な流れと言えるだろう。


この軽自動車に相当する車両に対するニーズを開拓するべく発表されたのが、日産の新型軽電気自動車「日産サクラ」である。

 

 

 

 

メタバースにかける日産の本気

 日産自動車株式会社は神奈川県横浜市に本社を置く自動車メーカーである。

主要株主にフランスの自動車メーカーであるルノーを持ち、子会社に三菱自動車工業株式会社を抱え、この3社でルノー・日産・三菱アライアンスというパートナーシップを提携している多国籍自動車メーカーと言える。

そんな同社が今回発表した日産サクラは、あらゆる面で電気自動車のニーズを開拓するものとなっている。


 走行距離は一充電走行距離(WLTCモードの場合)で180kmとなっており、同社の日産アリアと比べるとだいぶ距離が抑えられている。

その代わり車重も半分ほどである。また発進から加減速まで、アクセルペダルの操作だけで速度調節を可能とするe-Pedal Stepも搭載している。

デザインも全体に渡って高級感を演出する様に凝っており、かつ後部座席にドリンクホルダーを換装したりシフト部の構造を変える事で車体前方の空間を広げるなど快適性の向上にも気を配っている。

 

 

 

 この車両において特筆すべき点は2つ有り、一つはこれまでの軽自動車にも搭載されていたシステムであるプロパイロットの他に、駐車をアシストする「プロパイロット パーキング」機能を軽自動車として初めて搭載した事である。

これは駐車スペースをセンサーで検知した際に、ドライバーがボタンを押す事でアクセル、ブレーキ、ステアリング、シフトにパーキングブレーキの全てを自動制御化。

検知した位置への駐車が完了した後、自動で電動パーキングブレーキが作動しシフトはパーキングモードへとチェンジする。

まさに映画やゲームでおなじみの、オートパイロットによる離陸・着陸や着艦といったシステムを現実化させた様なものである。


 もう一つが価格面の安さである。

メーカーの公式発表では、日産サクラの価格は233万円台からと記載されている。しかし令和3年度から施行されている「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」を利用する事により、実質的な購入価格は178万円程にまで抑える事が可能となる。

これは市販の自動車メーカー製電気自動車としても、新品の自動車としても破格の低価格となっている。

単純な価格面だけで比較すると、日産自動車が売り出している自社の軽自動車である「ルークス」や「デイズ」の市場に食い込む程と言えばその凄まじさが分かるだろう。

 

 

 しかし日産自動車の本気はこれだけではない。今回VRChatで開催されたVRお披露目会の時にもアナウンスされた通り、今後はVRChat上でこの日産サクラに「試乗運転」出来るのだ。

これまでVRChat内でイベントを重ねてきた日産自動車株式会社は、今回のイベント開催にあたり会場を新規に作成し公開している。

会場となる「NISSAN SAKURA Driving Island」では日産サクラの自動で走行する仕様と、手動で運転出来る仕様の2つのモデルを運転する事が出来る。

四季折々の顔を見せる島を一周しながら、寄り道をしつつ日産サクラの乗り心地をバーチャルに体験する事が出来るというコンテンツを提供する。

島の途中にはオシャレなカフェや茶店も存在し、ひと息つきながら回る事が可能となっている。



 

 


 

 

 

 驚くべきは、このイベントを満喫する場合市販の「Meta Quest2」というVRヘッドマウントディスプレイを購入するだけで、パソコン版と遜色のないドライビング体験が出来るという事である。

VRChatはパソコンもしくはそこにヘッドマウントディスプレイを接続してプレイするパソコン版と、Quest2単体でプレイするQuest版の2種類が存在する。

後者の方はヘッドマウントディスプレイのみという事で、堪能できるコンテンツもパソコン版から大きく制限が掛かる仕様となっている。


 そして、その中に「VR空間上でのドライビングコンテンツ」というものも含まれていた。

車両を運転するコンテンツには広い場所(ワールド)が必要となる他、そこに設置するビルや樹木といったオブジェクトの多さからコンテンツのサイズが肥大化、複雑化する傾向にある。

そのため、Quest単体で動作出来る制限を超える事が多く、また快適に動作させる基準をクリアする事も困難であり、結果としてパソコン版にのみ対応している事が往々にしてあったのである。


 この元々難しいとされていたドライビングコンテンツをQuest版に対応させただけでなく、四季折々の綺麗な風景を楽しみながら運転したり写真を撮ったりする事が出来るのがNISSAN SAKURA Driving Islandの特色となっている。

これがどういう事かと言えば、Quest2を買うだけで「日産自動車が公式でリリースした新しい電気自動車である日産サクラを、間近で見たりしながら写真を撮ったり走ったりして、実際に走る際の体験が出来る他多くのユーザーと交流しながらドライブ出来る」という、日産自動車が提供する走りの体験の一片を堪能する事が可能となったという事である。

 

 

 もちろんVRChatのコンテンツはそれだけではないし、ましてQuest2のコンテンツもそれだけではない。

しかし多くのコンテンツを楽しむ切っ掛けとして、VR上で多数のユーザーに出会ったりしながら綺麗な風景を見て、茶菓子を楽しんだりカフェでラテをすすったりサクラに充電したりといった事が出来るのだ。

繰り返すが、このコンテンツを楽しむためにハイスペックなパソコンや高価な周辺機器は必要ではない。Quest2単体でこれだけの質の高いコンテンツに無料で参加出来るのである。

ワールド(会場)を制作するにあたり多数のユーザーの力を借りてリリースすることになったとは担当者の弁であるが、「誰もが楽しめるワールドを作るために、Quest2単体で動作するように対応させる事が最優先課題としてありました」という発言から、今回の意気込みの程が伺える。

 

 

 常に新しい事にチャレンジする精神を忘れず、それでいて新鮮な体験をユーザーに提供する事も両立させていく日産自動車株式会社。今多くの企業が取り組んでいる「メタバース」そして「電気自動車」の在り方に、明確なビジョンを与える大きな一手を打った事は間違いないと言えるだろう。

 

 

 

(IRuniverse Ryuji Ichimura)

 

 

関連記事

関連記事をもっと見る