国際自動車リサイクル会議(IARC2022)③〜バーゼルの展示会場から
スイス・バーゼルで開催された国際自動車リサイクル会議(IARC2022)、展示会場からレポートする。今回の会議は、欧州ではすでに夏の休暇時期に入っていることもあり、従来のICM会議としては展示ブースの数は少なく、16件に留まった。展示企業には、OEMをはじめ、リサイクル業者、ツールメーカー、破砕業者などが見られた。
少数にとどまったものの展示会場の中心を陣取ったのは、BMWによる最新EVモデルiX M60だ。今回は残念ながらIARC会議の通例である路上試乗はなかったが、同社のEVモデルでは最もパワフルな豪華仕様モデルで、来場者の注目を集めた。筆者も実際に運転席に座り、内装や仕様について説明を聞いた。
iX M60は、サーキュラーエコノミー時代にふさわしい「最もグリーン」なEVだ。まず内装・外装のほとんどに再生材が仕様されている。座席はレザー仕様だが、革は100%再生材、革の染料には環境に配慮した100%植物由来の染料(オリーブ)が使用されている。足元のマットレスも100%再生材で、漁業用のプラスチック網から作られているが非常に柔らかく手触り(足触り)は抜群。ギアボックスの一部には高級感を醸し出す木目仕様で、こちらも100%リサイクル材だ。ボディには再生アルミ、バンパー部分には、スクラッチができた際はドライヤーで温めることで傷が消えるという特殊な「セルフヒーリング」素材が使われている。
車体は、現在EUがスコープの拡大を含めた見直し作業をおこなっているエコ・デザイン規制を念頭に入れた設計となっている。例えば、従来の自動車では解体作業が面倒なカッパーケーブルの配置を改良し、取り外しが非常に容易な設計となっている。座席は、ヘッドレストの部分と胴体の部分が一体化しており、これは取り外しや修理を容易にするためだという。また、車体全体の部品やネジなどの数も極力削減して設計されている。
自動車のライフサイクルにおけるグリーン性も考慮されている。バッテリーのサプライヤーはサムスンだが、EUの今後強化されるEUのグリーン基準を満たしているという。
最高速度は250km、バッテリーの持続はフル充電時で(速度やエアコン使用などによって異なる)450kmから560km。
充電プラグはACおよび DCの両仕様で、同時にこれらの2つのプラグから充電も可能だ。超高速充電器使用時では1時間から1時間半でフルチャージが可能。
気になる価格だが約16万ユーロ(2,200万円)からと、唯一「サステナブル」とは言えない部分かもしれない。
(Y.SCHANZ from Basel, Switzerland)
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SCHANZ, Yukari
オーストリア、ウィーン在住フリーライター。現在、ウィーンとパリを拠点に、欧州におけるフランス語、英語圏の文化、経済、産業、政治、環境リサイクル分野での執筆活動および政策調査に携わっている。専門は国際政治、軍事、語学。
趣味は、書道、絵画、旅行、フランスワインの飲酒、カラオケ、犬の飼育。
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