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富士加飾(デザイン)が提案する真の循環型CFRPリサイクル

 富士加飾株式会社(本社:兵庫県小野市万勝寺町 杉野守彦社長)は知る人ぞ知るCFRPリサイクルの技術者集団である。代表の杉野氏は神戸製鋼勤務時代にもCFRPの開発、研究を一貫して手掛けており(1995年~)、いわば仕事人生のほとんどをCFRPにかけてきたといってよい。リサイクルしづらい、が定番となっていたCFRPだが、世の中のSDGsとカーボンニュートラルおよびサーキュラーエコノミーの要請から、真に循環利用できるCFRPのリサイクルが求められている。その富士加飾の本社兼研究所を訪れた。

 

 杉野社長のユニフォームの左胸には誇らしげにKOBATRONと縫い付けられている。どういう意味だろうか?と尋ねると

 

ウキノウ・アドンスト・ストロング・マテリアル

 

 という完全な造語だという。しかしその歴史は古い。杉野代表が神戸製鋼時代に作り上げた素材である。富士加飾のHPでは以下のように説明されている。2020年9月時点のブログより。

 

 神戸製鋼所の高分子材料事業撤退で、コバトロンは三菱エンジニアリングプラスチックス㈱に製造設備ごと事業移管されたが、その後ノートパソコンの爆発的な市場拡大で、コストが安く、成形が容易なPC-ABSに需要が移り、コバトロンの市場性は失われた。また、製造設備は協力工場の同和カルファイン㈱(現在のカルファイン㈱)に設置されたままになっていた。

 

 この製造設備は神戸製鋼所高分子材料部の当時の若手技術者が中古機を入手し、自らスクリュー、バレル、サイドフィーダーを長炭素繊維用に改造し、世界に1台の高性能2軸押出し機を完成したもので、これが鉄鋼メーカーでありながら樹脂メーカーが追随できない長炭素繊維強化樹脂を完成させた。

 

 当時、プロジェクトマネージャーであった杉野も若手に加わり現地に泊まり込んで製品開発を行った。

 

 リサイクル炭素繊維の開発にあたっては、開発品質をこの世界に1台しかない高性能2軸押出し機を念頭に置いて、炭素繊維のサイジングレベルをコントロールした結果、短期間で目標を達成することができた。

 

 この2軸押出し機の10倍の能力を持つ量産機の新設にあたり、炭素繊維の耐磨耗仕様の実績を持つ日本製鋼所㈱に発注した。担当の熱心な若手技術者のお陰で、スムースに量産設備が完成した。長炭素繊維用重量フィーダーは、すでに前述の実験設備で実証済であり、すべての量産設備は来年の事業開始を待つばかりとなっている(*注 現在はすでに事業を開始している)

 

 新しい2軸押出し機に充分な能力でリサイクル炭素繊維を供給する乾留設備は、もともと専門外である(といっても弊社独自の反応理論の乾留焼成炉は、理論の説明からスタートしたが)㈱AiKiリオテックに発注した。

 

 弊社の実験炉を運転し、物理化学の拡散理論であるFickの第1法則と説明し、細かい説明をしなかったが、AiKiの若手技術者は、「わかりました」の一言で、この世ではじめての新しい乾留設備を完成させた。1回目のオペレーションでOK! 完璧であった。

 

 30年前に生まれたコバトロンは、現在の若手技術者の新しいバージョンアップ設備で見事に生き返ります。

 

 コバトロンは、6ナイロン‐30%リサイクル炭素繊維(PA6-30rCF)からスタートしますが、PA6-40rCF、PA6-50rCFのメニューを加え、さらに9Tナイロン、LCP,PESと樹脂系を増やしリサイクル炭素繊維(rCF)があらゆる分野で使用できるように、試作設備と量産設備を駆使して、来年からの需要に応えるとともに新しい用途開発のお手伝いもできるよう関係者一同準備を進めております。

 

 そして現在では神戸製鋼所より「コバトロン」ブランドの移管を受けた三菱エンジニアリングプラスシックスからコバトロン商標の使用許可を得て、商標登録も済んでおり、それが杉野社長の左胸に縫い付けられている訳である。

 

 前説が長くなったが、まずは実際の富士加飾のCFRPリサイクルのフローを見てみよう。

 

 以下図がわかりやすい。杉野社長が力説するのは、処理した材料が循環利用できることが最大のポイントだという。

 

 

図

 

 

 使用済みCFRPや、工程端材から、炭素繊維を回収する際、海外や国内の熱分解手法では、毛羽立ちによる後加工の困難さ、粉末の発生とその分離などの問題があり不純物の混入等から、繊維強度も新品繊維の60~70%程度で、補強材として信頼性が低い。

 

 今回環境省において実証認定を受けた熱風巡環式リサイクル法は、自社開発の精密熱分解炉により、リサイクル品のマトリックス樹脂の種類、サイズ等に応じて熱分解パターンを選択でき、自動運転により再現性も高く短時間に新品に近い炭素繊維を回収できる。

 

 得られた繊維表面は少量の熱分解炭素が繊維を結束するため、新品と同様の加工状態を作り出すことができ、コンパウンドやその他の2次加工に最適の材料となる画期的方法である。

 

 自社で、設計開発した炉は、処理温度が500℃以下と低く、セラミックファイバー炉と完全自動制御のLPGバーナーの組み合わせで精密熱処理を連続的に行うため1日に数回の処理が可能であり初期投資も従来法よりはるかに小さく固定費を低減できる。

 

 樹脂成型用コンパウンドに加え、世界の最先端企業が目指す、50~100mm繊維長、含有率:40~60%の長繊維コンポジットの自社開発による量産化を2年後目途に開発し、欧米主導であった先端複合材の日本発信を目指している。

 

 

写真

(精密熱分解炉)

 

 

写真

(リサイクルフローを説明する杉野社長)

 

 

写真

(船舶用のCFRPブレード:ナカシマプロペラ様ご提供)

 

 

写真

(環境省平成30年度 省CO2型リサイクル等設備技術実証事業を受託し、成功裏に終了し認定を受けた設備)

 

 

写真

(リサイクル原料からCFRPの原料へ)

 

 

 根っからの技術者であり、CFRPという素材を熟知している杉野社長は自社のリサイクルシステムが技術的、コスト的比較においても世界一だという自信をもっている。数多いCFRP製品のなかでも最も厄介なのが風力発電装置で使われているブレード(風車の羽)だ。

 

 

図

(三菱ケミカル炭素繊維サイトより)

 

 

 風力発電のブレードは構造が明らかにされておらず、解体処理で切断の上クラッシュしている。しかもGFRPとCFRPが入り組んで使われておりリサイクルには、レベルの高い(構造を熟知した)解体技術の確立が必要とされている。杉野社長はこの難題にも積極的に取り組んでいきたいと意欲を見せており、この難物を適切にリサイクル処理できるのは富士加飾の技術だけだ、とやはり強い自信をのぞかせていた。

 

 航空機関係では欧州の航空機メーカーとCFRPリサイクルについてなんらかの前進がある、とも示唆していた。

 

 

CFRPリサイクラーから原料サプライヤーへ

 富士加飾はCFRPリサイクラーからCFRP二次加工製品を供給できる「メーカー」へとステップアップするために、すでに本社近くの3000坪の土地を取得(一部取得予定)している。ここでCFRP製品だけを生産する。すでに何社かの出資を受けており、今年の11月に着工、来年夏ごろに新工場は稼働を開始するとのこと。

 

 

写真

(取得済みの1200坪の土地:近く3000坪に拡張予定)

 

 

 CFRPが世に出て30年。この間に循環型のリサイクル市場は形成されてこなかった。ほとんどが焼却、埋め立て含めて「処理」にとどまっていたのだが、この21世紀ではCFRP生産者もCFRPユーザーもリサイクルを無視できなくなっている。その地平線を超えるべく富士加飾はさらに技術を磨いている。

 

 

(IRUNIVERSE Yuji Tanamachi)

 

 

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