東京国際包装展 鋼製ドラム缶はリサイクルの優等生@ドラム缶工業会初出展
公益社団法人日本包装技術協会(JPI)が主催するTOKYO PACK 2022が、2022年10月12日(水)~10月14日(金)の3日間、 東京ビッグサイトで開催されている。包装の最新情報が一堂に集まる国際包装展は、1966年の第1回から隔年で開催し、今回29回目を迎える。400社を超える企業・団体が出展することで包装資材・容器・機械・関連機器・システムソリューションが一堂に会する。
TOKYO PACK 2022のホームページ
TOKYO PACK 2022 - 東京国際包装展 (tokyo-pack.jp)
写真 会場の模様 ドラム缶工業会(左)ACS(手前)奥にTOPPANのブースが見える。
テーマは、新時代パッケージ ここに集う! - 未来のために機能進化と使命 –
人々の豊かな暮らしを支え、社会生活の向上のための「エッセンシャル・マテリアル」である包装が果たす社会的使命は、環境面・機能面・情報面など様々な視点からも増々高まりをみせている。
会議中第6ホール会場で開催される主なイベント
・集中展示企画「新時代に挑むパッケージ」
・2022 グッドパッケージング展
・2022 木下賞受賞作品展
・パッケージデザインパビリオン
・CLOMA パビリオン
・知的財産 無料相談コーナー
東3ホールでは、出展者による最新包装技術セミナー及び東京都中小企業振興公社パビリオン(東京ビジネスフロンティア)
東1・2ホール間では、・ワールドスター賞受賞作品展
会議棟6Fフロアでは、基調講演、新時代TOKYO PACKセミナー等が開催されている。
本展示会では、スチール関連を取材した
<ドラム缶工業会 日本最古のドラム缶>
ドラム缶工業会のブースには、日本最古(72年前)のドラム缶が展示されているとのことで、一番に訪問した。
写真は日本最古のドラム缶[容量:200リットル、天地板1.6 mm、胴体1.6 mmの山本工作所製造(1950年(昭和25年8月)]とドラム缶工業会 専務理事の坂元信之氏である。快く写真撮影に応じていただいた。ドラム缶の形状はほぼ現在と変化していない。
今回、ドラム缶工業会は、環境意識の高まり、カーボンニュートラルなどに対して鋼製ドラム缶の使用を改めて提案するため、製品の特長及びその有用性について理解を得るため、初めて出展した。初日は、第6ホールセミナールームで、ドラム缶を使ったスティールパンオーケストラによる演奏が16:10〜実施された。詳細本文後ろ。
スティールパンとは:カリブ海の南に浮かぶ島国トリニダード・トバゴ。豊かな石油と天然ガスの資源に恵まれたこの国には、昔、石油を入れるためのドラム缶が街中にあふれていた。石油の算出のため集められた労働者たちは、ドラム缶を叩いて音楽を楽しむようになった。そんなある日、ドラム缶を修理していた一人の青年が、凹み具合によって音階が生まれることを発見した。これがスティールパンの始まりと言われている。
9月10日に創立70周年を迎えた工業会であるが、ドラム缶の歴史や断面、推奨する14色や軽量化をはじめとするテーマについて出展した。ドラム缶はリユースの優等生であり、現役で使用されているドラム缶の約半分がリユース製品であり、新缶は複数回リユースされるとともに、半分は輸出されているとのこと。使用後はスクラップ回収され、電炉での製鉄原料としてリサイクルされる。
<ドラム缶の歴史>
明治32年(1899年)米国で原型が考案される。明治36年(1903年)米国の女性ジャーナリスト、ネリー・ブライ(本名:コークラン・シーマン夫人)によりアイアン・クラッド社で実用化された。発明のきっかけはヨーロッパ旅行中に見たグリセリンの金属容器だったそうだ。大正13年(1924年)名古屋港に入港した米国船から空ドラム缶を買い取ったのが、日本へのドラム缶の到来とされている。その後、米国からの輸入ドラム缶が流通するようになる。
昭和4年(1929年)日本石油が自社用にドラム缶製造所を設立。昭和7年(1932年)日本ドラム罐製作所(現在の日鉄ドラム)が、東京・亀戸に設立され、国産ドラム缶の流通が始まった。
昭和13年(1938年)東部および西部にドラム罐工業組合が設立され、翌年ドラム罐工業組合連合会として全国組織に統合された。
詳細はドラム缶工業会のHPを御覧ください。
→ ドラム缶の歴史 l ドラム缶の特長 l ドラム缶工業会 (jsda.gr.jp)
ドラム缶工業会は、1952年に29社32工場で設立され、本年2022年9月10日に創立70周年を迎えた。1903年(明治36年)ドラム缶がアメリカで石油用容器として発明されておよそ120年、日本でドラム缶が生産されてからは90年(1929年:昭和4年)を超えている。ドラム缶工業会は発足初期には物資不足の中で資材の安定調達、工業標準化による仕様の統一、企業の体質強化等に役割を果たし、昭和40 年代の高度経済成長時代には急拡大するドラム缶需要への安定供給、生産のオート メーション化、また石油危機への対応、公害規制への対応に努めた。 その後、会員企業の一部撤退や再編を経ながらドラム缶業界の強靭化が進み、 現在、8社17工場で日本全国の需要を満たしています。変化するユーザーのニーズに 対応し、JISおよびISOが整備・更新され、国際交流活動が進み、ドラム缶は名実とも に国際産業容器として世界中のサプライチェーンに貢献している。
ドラム缶工業会70周年
<ドラム缶について>
ひと口にドラム缶といっても、いろいろなタイプのものがある。
日本ではJIS規格により大きさや寸法がきめられているが、「タイトヘッドドラム」と「オープンヘッドドラム」2つのタイプがある。
「タイトヘッドドラム」 「オープンヘッドドラム:ボルト式」
「タイトヘッドドラム」は注入口と換気口のついた液体向けのタイプ、「オープンヘッドドラム」は天ぶたが取り外せるタイプである。通称で前者をクローズド缶、後者をオープン缶と呼ぶ。
さらに、塗装が材料により、①一般ドラム(鋼製ドラム缶でクローズド缶の内面塗装無し)、②内面塗装ドラム[耐薬品性を高めるため、内面に合成樹脂塗料(エポキシ系、フェノール系)を焼き付け塗装したドラム缶]、③複合ドラム缶(ポリエチレン製内袋付ドラム:缶の中にポリエチレン製容器が入っているドラム缶)、④亜鉛メッキドラム、⑤ステンレスドラム。
ドラム缶は内外面塗装の前段階で、塗装密着性を良好にする目的で化成皮膜を形成させる。現状ドラム缶の化成処理は、りん酸亜鉛処理及びリン酸鉄処理がある。
ドラム缶工業会では、右写真にあるように、環境にやさしい『標準14色』を推奨している。時代のニーズに合うように改訂を重ね、すべて重金属を含まない塗料となっている。
<ドラム缶と危険物>
危険物の取扱には安全上の理由から国を超えた統一的なルールがある。そこで、国連(UN)が『危険物輸送に関する勧告(通称 オレンジブック)』を策定していて、主に4つの試験要件が決定されている。
① 落下試験 水を充填したドラム缶を例えば2.7 mの高さから1回目はチャイムを衝撃点とする対角落下、次に溶接部(弱い部分)を下にして落下させ、漏えい又は安全性を損なう恐れの損傷がないことを確認する試験。
② 水圧試験 ドラム缶に例えば300kPaの水圧を5分間加えて漏洩が無いことを確認する試験。
③ 気密試験 内部空気圧を加えたまま、口金及び溶接部にスプレーを塗布して泡の発生の有無を確認。又は、水槽に浸して漏えいが無いことを確認する試験。
④ 積み重ね試験 例えば1トンの荷重を24時間加え、漏えいや、積み重ねの安全性を損なうおそれのある変形がないことを確認する試験。
会場で展示されているスティールパンとスティールパンオーケストラ『パン ノート マジック(PAN NOTE MAGIC)』の皆さん
2022年10月12日(水)の16:10から、第6ホールセミナールームで演奏会が開催された。
スティールパン(別名:スティールドラム,まさにドラム缶)は説明によると、周の面積の大きな窪みで低音を、中心に向って窪みが小さくなり、高音部となる。音階は隣あってはいないようで、飛び飛びになっているよう(写真のスティ―ルパンはテナーパン)。
演奏終了時のポーズ:皆でマレットを掲げ、とても仲の良い皆さんである。
写真中央が、ドラム缶一つのテナーパン。左が、ドラム缶二つのダブルテナーパン。
その後ろのドラム缶3つのトリプルチェロは、中低音を担当し、オーケストラのチェロの役割を担う。これらは、ドラム缶を切断しているが、写真右(二つのドラム缶しか映っていないが、)4つのドラム缶で構成されるフォーベースという。
パンノートマジックの皆様とドラム缶工業会の今回の出逢いは、ドラム缶繋がりとのこと。
ドラム缶の総合メーカーのダイカン株式会社がトリニダード・トバゴへ輸出しているスティール缶からスティールパンは造られている。
演奏中もステップを踏みながら楽しそう演奏され、ドラム担当リーダーが後ろから皆の演奏を見守っていた。ディズニー映画のリトルマーメイドからアンダー・ザ・シー、魔女の宅急便からやさしさに包まれたなら(松任谷由美)、君の瞳に恋してるが演奏され、最後は、トバゴジャムで演奏を締めくくる、素敵な30分間であった。こんなセミナーであれば、また参加したい。
(IRUNIVERSE tetsukoFY)
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