「建設技術展2022 関東」無線遠隔技術・海洋土木技術編
「技術のチカラで、未来をカタチに」をサブテーマとした今年の「建設技術展2022 関東」が、2022年11月16日〜17日までの二日間、池袋・サンシャインシティ展示ホールで開催された。
海及び河川事業に着目し、青木あすなろ建設株式会社、三国屋建設株式会社及び株式会社小島組でお話をお聴きした。
<青木あすなろ建設:無線遠隔操縦式>
水陸両用ブルドーザは、推進7mまでの浅水域を作業領域とする無線遠隔操縦式の水陸両用建設機械である。
福島県の只見川落橋工事ではバックホウ装着型、クレーン装着型及び標準型の3台の水陸両用ブルドーザを駆使し、回収工事を実施したとのこと。
写真左 バックホウ及びクレーン装着型 写真右 標準型
※バックホウとは、油圧ショベルの中でも、ショベルをオペレータ側向きに取り付けたもののこと。オペレータ側向きのショベルでオペレータは自分に引き寄せる方向に操作する。地表面より低い場所の掘削に適している。
写真左 青木あすなろ建設のブース 右:絵本
《絵本:のっぽのスイブル155(こもりまこと作)のあらすじ》
「そうだ! ぼくは こんなところでも こうじが できるんだ!」
東日本大震災をきっかけに息をふきかえした
あるブルドーザのものがたり
2011年3月11日の地震による大津波でこわされてしまった、日本の港や橋。建設機械の会社の人たちは「いまこそあいつの出番だ!」と思い、1台の水陸両用ブルドーザ「D155W」(スイブル)の修理を思いたちます。
すでに活躍の場もへり、ボロボロになっていたスイブルでしたが、14か月にもおよぶ大修理をへて、2012年冬、ほぼ新品となってよみがえります。こうして忘れられていた1台のブルドーザは、ふたたび海や川で活躍することとなったのです。
青木あすなろ建設では、この他にも、壁面に吸着して自走するロボットを用い、遠隔操作によるコンクリート構造物非破壊点検システムを、阪神高速道路(株)と阪神高速技術(株)、非破壊検査(株)による共同研究により開発した。
<海の職人集団:三国屋建設株式会社>
三国屋建設株式会社は、サルベージ事業及び海洋土木事業、調査・測定事業及び特殊工事事業を主な業務とする。
1972年(昭和47年)、東日本における物流の拠点ともなる鹿島灘に、社名『三国屋サルベージ株式会社』として設立された。海難船舶の救助・撤去・海洋汚染防止などの海難救助業務を主軸に置き、専門的な技術をもとに、港湾の建設や河川・湖水における水辺の作業を手掛けた。
1996年(平成8年)、この専門的な業務で培われた経験をより活かすため、社名を『三国屋建設株式会社』と変更し、主軸をサルベージから海洋建設業へと移行した。
関東・東北の各地に事業所を置き、100隻を超える社有船舶と30余名の社内潜水士を始めとする機動力と技術力をもとに、全ての社員が『水の職人』となることを目指している。
三国屋のブースでは、組立可搬型台船:SD(スーパーデッキ)が紹介された。標準タイプ(SD-N)・薄型タイプ(SD-H)がある。組立式台船は、陸送できるので閉塞された水域(ダム・河川、湖、沼等)での工事・調査作業などに幅広く利用できる。
運搬は、トラックサイズとして15トン低床トラックに4隻(SD-N)、6隻(SD-H)搭載可能サイズとした。フロートの連結は、ウエッジロックジョイントにより連結され一体化するので、クレーンや杭打機及びバックホウ等の搭載に十分な強度を有している。
写真上 左:三国屋ブース、右:クレーン及び杭打機を搭載させた組立可搬型台船
多目的に使用できる組立式台船と各種オプショナルパーツを備えて、下記写真に示す、多種多様な工事・調査仮説などに対応する。
<水底の泥をすくい、泥を使って土地をつくる株式会社小島組>
港湾からの輸入量は輸出入貨物の99.7 %を取り扱ったいるとのこと。空港からの輸出入量は0.3%。
コンテナ船、LNG船、貨物船及び自動車運搬船(PCC船)が活躍している。
港では、船が港内をスムーズに航行し、貨物の積込みや荷下ろし(荷役作業)をスピーディに行うために、航路・泊地、岸壁を整備、維持管理する必要がある。
海や河川などに堆積した土砂を掘り、除去することを「浚渫しゅんせつ」といい、その作業船を「浚渫船」と言う。グラブバケットで土砂を掘削する「グラブ浚渫船」の他、ポンプで改訂の土砂を吸い込み浚渫する「ドラグサクション浚渫船」「ポンプ浚渫船」などもある。
建設技術展での株式会社小島組のブース
世界最大のグラブ浚渫船「五祥」:高さ最高60 m(20回建てビルに相当)、全長100 m、幅36 m。
200 m3のグラブバケットで掴んだ泥土・浮泥をグラブに直接接続しパイプを通して土運船へ揚土する、海水の汚濁を大幅に減らしながら、省エネ浚渫を実現できる環境対応型の新工法である。
特徴的なシステムは、ならい運転(自動運転)システムである。コンピュータが熟練オペレータの操作を学習して覚え自動運転する「ならい運転システム」をグラブ浚渫船として初めて導入。実際には、ベテランと若手が一組となって乗船し、若手の教育にも効果があるとのこと。
写真 世界最大のグラブ浚渫船「五祥」
安全で効率的な作業を実現する準次世代グラブ浚渫船 Hybrid船:381良成丸。
Hybridシステムとは、グラブを巻き下げ時に発生するエネルギーを蓄え、グラブ巻き上げ時に利用する。燃料消費量を25 %〜30 %低減できるとともにCO2などの排出ガスも削減できる。
自動運転システムを搭載し、運転席に設置したタッチパネルで作業状況に応じた数値などを入力するだけで自動制御により掘削・旋回・積込を行えるように設定されている。2本式スパッド(鉄柱)とアンカー設備の併設により最大85mの大水深海域の作業が可能となる。
移動時には後方のスパッドを引き上げ、海底に打った前方のスパッドをワイヤーで引くと船は前に移動する。シンプルな方式でスピーディな動きが可能となる。
写真 Hybrid船:381良成丸
(IRUNIVERSE tetsukoFY)
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