世界最大のプラスチック展示会「K-Show2022」の衝撃
3年毎にドイツデュッセルドルフで開催される世界最大のプラスチック展示会「K-show 2022(Kショー)」。従来はメーカーの最新素材や複合材料を紹介するはずであったが今回は全く違う様相であった。
「Kショー」といえばプラスチックメーカーが新製品を発表し合い、また炭素繊維複合材などの高機能素材、成形法を競い合う3年に一度の祭典である。事実コロナ前の最後の開催はそういう展示会であった。
今回コロナが沈静化したので久々のリアル展示会であったが、従来とは全く異なるイベントとなった。
バージンの新商品を紹介するコーナーは鳴りを潜め、『リサイクル』『サーキュラーエコノミー』『サステイナビリティ』『植物天然由来』『SDGs』『DX』のオンパレードであった。
従来バージンメーカーが堂々と自社リサイクル品を紹介することはほとんどなかった。高く売れる新品と一緒に価格は落ち、品質も同等にすることができない材料を紹介すれば、新品の販売に影響するからである。
しかし今年に関しては潮流というか、ブームというか、リサイクル品でなければあたかも紹介資格すら与えられない雰囲気で、さらに天然素材、持続可能、二酸化炭素が少ないというキーワードも加わった。
主催者からそのようなテーマに沿ったものを出してほしいとの依頼はあったようだが、世の中がそういう流れに変わった事は間違いない。
筆者はリサイクル材料に10年ほどかかわっているが、昔自動車会社に紹介したところ「自動車に使う材料は安全第一でリサイクル品など使えない」と真顔で言われたことがあるが、最近は「良いリサイクル材料やリサイクル方法はないですか?」と同じ担当者に言われたのにはびっくりした。
リサイクル品を使うにあたって大切なことはリサイクル法もさることながらリサイクル材料のトレーサビリティである。すなわち素性がわかっているものかどうかというポイントが重要である。
今回のKショーにおいてもトレーサビリティをQRコードや特殊な型すかし、材料そのものにマイクロチップを入れるものがでてきている。すかしの方は特殊な装置でないと読み取ることができず。透かしを入れる特許も読み取り装置も欧米企業の機械を使わないと読み取ることができなし。
明らかにREACHと同じく、このトレーサビリティを欧米勢は商売にしていこうとの姿勢がうかがえる。
規格を作って欧米勢が有利になるような仕組みを作るのが彼らはとても上手い。
次の新たなトレンドはフランスで行われるJEC展示会であるが、さてどのような展開になるのだろうか?
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<プロフィール>
増田信次
・サステイナブルマテリアルクリエイター
・SDGsビジネスマスター
・先端技術協会常務理事
・全日本科学技術協会客員研究員
・リサイクル炭素繊維、バイオコンポジット専門家
●連絡先
masuda@econologybrain.com
https://instagram.com/econologybrain
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