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岡本工作機械製作所(6125) 23/3Q3決算メモ 半導体関連装置拡大で収益大幅増額期待

23/3期14.5%増収17.6%営利増予想は膨大な受注残で増額期待、24/3期も収益上伸期待

 

株価4755円(2/10)  時価総額224億円    発行済株4718千株 

PER23/3期DO予(4.8X)PBR(0.95X)配当(22/3DO予)190円  配当利回り4.0%

 

要約

・23/3Q3は17.9%増収41.7%営利増と収益続伸、受注20.3%減も累計で会社通期想定突破

・23/3期14.5%増収17.6%営利増予想変更せず、受注残消化進み増額期待高まる

・新中計の25/3期に売上高500億円は前倒し達成期待で利益も上振れへ

 

23/3Q317.9%増収41.7%営利増と収益続伸、受注20.3%減も累計で会社通期想定突破

 

 2/10に23/3Q3決算を発表、売上108.46億円(同期比17.9%増)、営利14.62億円(41.7%増)と収益伸長が続いた。なお受注は136.80億円(20.3%減)と大幅減も受注残高は592.31億円(43.2%増)とQ1の578.21億円を超え、最高額に積み上がっている。

 

 事業別では工作機械事業の売上71.11億円(13.3%増)、営利6.81億円(2.4倍)と増収効果、稼働率アップ、半導体関連で大型平面研削盤、中国向けでもEVバッテリー金型向けに大型平面研削盤が伸び、MIX良化も加わり収益性が急回復した。一方受注は67.39億円(24.8%減)と米国向けで鋳物が反動減、欧州も地政学リスク等で減少傾向、中国向けも一服、但し受注残高は201.32億円(20.0%増)と依然生産が追いつかない状況に。

 

 半導体関連事業は売上高37.35億円(27.6%増)、営利10.61億円(6.3%増)と、LCD用ガラスマスク加工装置などの売上げも有りMIX悪化で利益率の低下も高水準を維持、受注は69.41億円(15.3%減)ながらQ2比で54.23億円増となり、ファイナルポリシャー(FP)受注が復活、Q3累計で161億円は会社通期計画を30億円上回った。受注残は390.98億円(20.1%増)と最高額を更新し受注残高が積み上がっている。

 

23/314.5%増収17.6%営利増予想変更せず、受注残消化進み増額期待高まる

 

 23/3期会社予想に変更無く、売上高430億円(14.5%増)、営利48億円(17.6%増)、経常利益47億円(12.0%増)、税引利益32億円(10.6%増)予想。Q3累計での通期予想に対する進捗率は、売上77.3%、営利85.9%となっている。逆算しQ4は12.4%減収、56.8%営利減予想となる。通常、毎年Q4での売上比率が2事業とも相対的に高いこと、過去最大の受注残高を抱えている事などで、大幅増額修正が見込まれる。

 

 受注は半導体関連装置について、前期の120億円の大型受注を今期は見込まず、通常の130億円程度(60%減)とのニュアンスも、既にQ3段階で160.59億円と通期計画に対し30億円上振れ、Q4でQ2並みに減少しても176億円(前期比46%減)、結果としては200億円(38%減)程度に落ち着こう。工作機械事業の受注は上期過去最高の受注額でQ3は7割を占める研削盤などの工作機械は反動減となった模様も、同事業に含まれる歯車は好調持続で能力増強中でもあり、工作機械事業全体ではQ4に業界並みの10%減の受注確保は可能とみられ、通期で330億円(3%減)程度が期待される。全体受注では530億円(21%減)程度が確保され、さらに受注残高が積み上がる形となろう。

 

 売上面では半導体関連事業について今下期以降、国内グリーンフィールド向け売上拡大が本格化、24/3上期にかけて売上計上されるとのことで、受注残高消化も一部進むとみられ、Q3進捗率86%から、半導体関連装置は計画を上回る収益が見込まれる。工作機械事業は毎期Q4に売上計上が大きくなる傾向が強く、Q3売上進捗率73%も、受注残高201億円と膨らんでおり、売上増額とMIX良化で増額修正が見込める。

 

 全体を通じ、利益面では総利益率がMIX悪化で多少落ちる(0.9ポイント)前提も、半導体関連の売上構成比アップで上昇、会社計画を大きく上回る収益が見込まれる。

 

新中計の25/3期に売上高500億円は前倒し達成期待で利益も上振れへ

 

 同社は新中期経営計画で25/3期に売上高500億円、営業利益60億円を掲げている。新区分として3分野の売上構成比は工作機械が売上高200億円、半導体関連装置150億円、精密機器他150億円予想。

 

 事業別に工作機械では中国事業の拡大を目指す。中国では小型汎用研削盤をノックダウン生産しているが、研削需要の高まりで、工場を1.5倍の6000㎡に拡張、月産能力も1.5倍にする。また中国では研削盤のNC化率が低く、今後、大型機中心に急速にNC化が高まる見通しで、平面研削盤最大手の同社への需要拡大が期待される。またEV向けでは大出力化でモーターコア製造用の大型連送精密金型の需要が高まり、機上測定などの機能を持った高効率製品なども売上を伸ばし、収益性がアップしている。さらにリチウムイオン電池用金型では電池製造工程で幅広の材料塗布装置が必要で、長尺で超微細な平面が必要で超精密大型平面研削盤が必要となる。現状、大型平面研削盤は1億円以上する高級機種で、収益的にも高い利益率を得られる。なお研削盤はセラミックスなど、半導体製造装置や電子部品製造で多用されるセラミック部材加工にも使われる。特にエッチングテーブルなどの加工では立て型ロータリー研削盤需要が増加、さらにパワーデバイス製造向けにも需要が拡大、新モデルは納期1年超となっている。2/7には京セラが鹿児島国分工場で22年に増設したばかりだが、追加で半導体製造用ファインセラミック部品の新棟建設(投資額30億円)などの動きが出ている。実際に2022年の日本の工作機械受注で機種別で一番伸びたのが研削盤であり、全体の14.2%増に対し20.9%増、特に同社がシェアトップの平面研削盤は33.9%増と最も高い伸びを記録している。このため工作機械事業について工作機械のサイクル的な動きに対し異なった動きも期待される。

 

 精密機器他に分類される予定の歯車事業は子会社の岡本工機が担当し、23/3上期の売上が38.48億円(10.6%増)となっている。仕向先はロボットが50%強、EV向けが10%程度、その他40%弱。ロボット向けはファナック向けが中心で、ファナックのロボット生産拡大、多関節化で台数以上の伸びが期待される。現在、日本のロボット生産額は2022年に8792億円(前年比7.8%増)、受注は9558億円(同1.6%増)と何れも過去最高額を記録しているが、この中でファナックは業界を大きく上回る伸びを示している。また従来、岡本工機は既存ガソリン車向けには供給していなかったが、今後、EV向けに新規拡大が見込める。これはガソリンエンジンでは歯車の騒音がエンジン音で消されていたものが、EVでは歯車の静音性が必要となり研削だけでなく研磨された歯車が多用され、新規需要となっている(同社の研削盤ニーズも高まる)。静音性の高い歯車は高い研削技術が必要で、同社は自社製歯切加工機を外販せず、研削歯車を伸ばす方針。現在、フル生産が続いており、府中第2工場が2月完成、生産能力が30%アップする見通し。また中国常用州でも一貫生産、ここではロボット向け減速機(従来、ハーモニックやナブテスコなどの減速機用歯車構成は低い)などへの参入も始めている。

 

 半導体関連装置は300mmウエハのグリーンフィールド向け売上が23/3Q4から本格拡大、24/3期も収益拡大が続く見通し。加えてグラインダ事業の伸びも期待される。同部門はシリコンウエハ向けでディスコが圧倒的な強さを持ち、東京精密が2番手、同社は3番手に位置し、3社寡占ながらシェアは10%以下とみられる。今後、注目されるのは、難作材となる非シリコンのパワー半導体分野。パワー半導体の市場規模はシリコンの1/10、SiCデバイスはさらに1/10の水準も伸び率は非常に高い。しかもパワーデバイスは容量アップのため薄化ニーズが高く、グラインダ需要の伸び率はさらに高まろう。同社、東京精密は機械の剛性が高く難作材のグラインダ、エッジグラインダに強く、ディスコはこの分野では後発に止まっている模様で、同社もグラインダ中心に大きく売上拡大が見込める。加えてパワー半導体分野では基板の大型化も進展、シリコンIGBT等では300mmウエハの投入も本格化している。同分野では従来ファイナルポリシャーは利用されていない模様も、今後、300mmウエハ化拡大で、シリコンパワー系でもファイナルポリシャー需要に期待が持てると見られる。このためグリーンフィールド投資が一巡しても、微細化ニーズ、デバイスの3次元化に伴う更なる平坦化ニーズの高まりなどで、ウエハ加工向けだけでなく、後工程での新規需要も加わる見通しで、半導体関連装置も会社計画を上回る収益が見込まれる。なおJST(科学技術新興機構)と開発中のSi貫通電極ウエハ自動薄化装置開発は開発期間が延長されることが決定、2024年7月に全体課題完了を目指す事となったが、実用化となれば、ウエハ加工向けだけでなく3次元デバイス向け前工程でも売上が上がることになるため、中長期でも同分野の拡大が期待される。

 

 現状、受注残高はQ3段階で半導体関連装置だけで391億円、工作機械事業201億円、全体で592億円、23/3期末でも590億程度が見込まれ、中計売上想定の500億円を上回っている。受注環境もデバイスの減退とは関係なく、FPはSUMCOや信越化学のグリーンフィールド投資本格化で売上本格拡大が見込まれる。さらにパワー半導体では高出力化要求で薄化需要の高まりでグラインダの伸びが見込まれ、SiC化合物半導体も内外含め大型設備投資が目白押しで、FP以外の伸びも期待される。

 

 全体として同社新中計予想について24/3期に前倒し達成が見込まれる。

 

 

 

(H.Mirai)

 

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