年々減少するマレーシア向け銅系スクラップ 今後の見通し
2022年、日本からの銅スクラップ輸出は前年比22%減の31万3974トンだった。輸出量全体の4分の3近くが中国向けだった。これは、前年の6割弱から大きく割合を拡大させている。また、輸出量2位のマレーシア向けの輸出量は、全体の12.7%を占めた。ただ、こちらは、2年前の32.1%、前年の23.7%と年々割合を縮小させている。
「銅スクラップ輸出入Report #72輸出編 22年年間3万2千トン 3年前の輸出量に戻る」
2018年以降、中国の雑品輸入禁止に始まり新たな銅系スクラップの輸入基準により、いわゆる雑品系の、未解体系の銅含有スクラップの向け先はマレーシアに向かい、炉前原料は中国向け、とすみ分けが出来ていった。いまもそれは変わらず、中国はより一層高品位の銅スクラップを欲し、検収はさらに厳しくなっている。ゆえに中国向けは輸出単価が高い。
「雑ナゲットの中国向けはかなりシップバックが増えている」(貿易関係筋)という。
一方、マレーシア向けも、徐々に輸入規制を強めてきたが、決定的だったのは昨年1月に発表した以下で、被覆銅線、E-Scrapは100%NG、ということになり、いきおい被覆銅線は日本国内でナゲット化し、中国送りというルートが発展していった。このことが中国向け銅スクラップ輸出増をけん引したといえる。
(関連記事)マレーシア向け雑線続報 通関チェックだけではない危惧される困難な先行き
マレーシア 新たな金属スクラップの輸入基準を1月10日より施行 被覆線、EWはNG 中古家電監視
マレーシア政府は日本の輸出スクラップには要注意、とするスタンスを強めているなか、昨年10月、マレーシア向けでE-Scrapを廃プラとして虚偽申告していたことで逮捕者まで出る事件が起きた。これでさらにマレーシアは日本からの輸出スクラップを完全に警戒監視対象とする。
「UPDATE EWASTE輸出の虚偽申告で逮捕者出る 大阪」
以上のような経緯で日本→マレーシア向けは厳しくなり、ある意味ではマレーシア向けは「面白くなくなった、うまみがなくなった」(中国系輸出筋)という素直な反応も聞くようになったほどで、それが先の輸出減という結果に現れている。このマレーシア向け輸出数量はさらに減っていくことが予想される。
「マレーシアで解体を行っていた業者が日本で解体する方向に変わっている。日本国内での中国系ディーラーの進出はますます増えることになる」とも聞く。つまりはマレーシアにもっていくよりも、もはや日本国内で炉前原料まで仕上げたほうが良い、という合理的な選択。それはそれで正しいのだが、さらなるチャイニーズインベージョンにより日系ディーラーはさらに圧迫されるのではないかという懸念もあるのだが。。
そして輸出通関の現場でも、経産省、環境省管轄の日本環境衛生センターはマレーシア向けのスクラップについては事前申請を受け付けないことを関係業者には伝えている。これがどう影響してくるのか?貿易関係筋は
「環境衛生センターのお墨付きが得られなくなることで、マレーシアに出したものが現地で受け付けられずシップバック連発、という事態が考えられ、このことで日本側の税関はそれ見たことか、とマレーシア向けの各種スクラップ輸出はすべて厳格に取り締まることになるかもしれない。いずれにしてもマレーシア向けはかなり出しづらくなることは間違いない」。
英語記事はこちら
(IRUNIVERSE YT)
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