鉱物資源、リサイクルや使用縮小の動き活発化 アップルも再生コバルト拡大へ
希土類(レアアース)やレアメタルのリサイクルや使用縮小への動きが活発化している。電気自動車(EV)用電池や、スマートフォン(スマホ)といった電子機器の生産に不可欠とされてきたが、レアメタルを含む重要鉱物の確保に政治的思惑が錯綜するなか、使用を減らす動きも盛り上がっている。
■アップルが再生コバルト使用促進、東レは新技術開発
スマホの世界的大手である米アップルは4月13日、同社ホームページ上で、「2025年までに自社製品のすべての電池にリサイクル率100%の再生コバルトを使用する」との計画を発表した。既に2022年には同社製品で使われているコバルトの4分の1が再生品になり、前年比で13%増加した。同社はコバルトのほかにも、アルミニウムの3分の2以上、レアアースの4分の3近く、タングステンの95%以上で再生品を使用しており、リサイクル品への置き換えを進めている。
米大手では、EVのテスラが3月、将来的なレアアースフリーの蓄電池を用いたEV車の開発方針を示したことが記憶に新しい。米大企業のレアアースへの過度な依存を避ける動きが鮮明化している。
類似の動きは日本国内でもみられる。東レは4月12日にホームページ上で、「レアアースレスを実現する高耐久性ジルコニアポールの量産技術を開発した」と発表した。同技術の開発は世界初という。この技術を用いて作成したジルコニアポールを、リチウムイオンバッテリー(LIB)用電極材料などの粉砕・解砕に用いることができ、顧客のコスト削減などに結び付くとした。
■重要鉱物確保競争が背景に
政治レベルでも流れは強まりつつある。札幌市で15~16日に開催の先進7か国(G7)の気候・エネルギー・環境大臣会合は、レアアースやレアメタルについて「効率的で国際的なリサイクルシステムの構築に向けた議論を進め、持続可能な代替品への移行に向けた研究開発を支援する」との提言を共同声明に盛り込んだ。
背景には、西側諸国と中国との間で緊張感が増す重要鉱物の確保競争がある。4月上旬には、中国がレアアース磁石の製造技術の禁輸を検討していると伝わった一方、G7が鉱物資源の安定供給で合意した。
レアアースやレアメタルを巡っては、採掘に伴う児童労働などの人権問題への懸念も根強い。希少ながら生活必需品や脱炭素(カーボンニュートラル)社会の構築に向け欠かせない鉱物資源をとりまく状況は、いよいよ複雑さを増しそうだ。
(IR universe Kure)
関連記事
- 2024/07/27 2024年度第1回レアメタル研究会「EVは、本当に環境にやさしいのか?」が開催された
- 2024/07/26 埼玉県 ヤード条例――来年1月1日施行
- 2024/07/26 「電気運搬船」建造に向けて事業本格化、蓄電池製造のパワーエックス
- 2024/07/26 新電力へのスイッチング件数(24年6月)
- 2024/07/26 国内産業用ロボット生産Report#45 2024年もプレイバック型需要大幅減少続く
- 2024/07/26 工具生販在Report#58超硬チップ 昨年底に2024年緩やかな回復続く
- 2024/07/26 二次電池PSI-Report#168鉛蓄電池 販売平均単価上昇中 販売額最高記録更新続く
- 2024/07/25 NEDO、重希土フリー磁石の高耐熱・高磁力化技術の開発に着手
- 2024/07/25 MRAI第2回国際会議 バンコクで開幕!圧倒的多数のインド系企業が集結
- 2024/07/25 CO2排出しない純燃料電池船に船舶検査証書、東京海洋大学