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第1回サーキュラーエコノミーシンポジウムat六本木 LIVE Reportその3(森とまちコンサル、アルハイテック、錦麒産業、東京製鐵)

 2023年4月26日、IRUNIVERSE社主催の第1回サーキュラーエコノミーシンポジウムは六本木ヒルズの六本木アカデミーヒルズ タワーホールにて開催された。LIVE Report第3弾の今回は、森とまちコンサル、アルハイテック、錦麒産業、東京製鐵各社の講演をダイジェスト的にお送りする。

 

(関連記事)

第1回サーキュラーエコノミーシンポジウムat六本木 LIVE Reportその1(経産省、Veolia、共英製鋼、JAERA)

第1回サーキュラーエコノミーシンポジウムat六本木 LIVE Reportその2(イボキン、digglue、サイクラーズ、TBM)

 

 森とまちコンサルタント株式会社の小西千晶氏「地域・企業連携で目指すサーキュラーエコノミー社会」と題した講演を行った。

元々小西氏は株式会社東芝や積水化学工業株式会社に在籍しており、廃プラスチックの油化事業や環境プラントを手掛けていた。

また廃棄物をエタノールに変えるプロジェクトにも携わった実績を持つ。

 

 元々携わっていたプラスチックを軸にしたサーキュラーエコノミーでは、微生物が発酵させたガスをエタノールにして回収するというシステムを設計していた。

これは可燃性廃棄物ならば何でも良く、そこから発生するガスを微生物が分解可能なまでに濾過する。

またエタノール化の速度も非常に早く、適量であればガスを通して1〜2分程で発生が見込まれる程の分解性能を持つ。

 

 

 とはいえ昨今プラスチックはマテリアルリサイクル優位となってしまった為、技術を浸透させるのに苦戦を強いられたとの事である。

それでも1日20トンの廃棄物を処理出来る実証プラントを建設している事から、このプロジェクト自体大いに先があるものと考えられる。

 

 その後小西氏は独立を果たし、より地域に寄り添った課題を解決するべく奔走。

そこで行き着いたのがきのこの廃菌床処理である。

 

 

 

 きのこは出荷される際に、製品となる本体部分とそこから切り離され捨てられる菌床部分に分かれる。この廃菌床はきのこ本体よりも重くかさばっており、例えばえのき1トンを収穫すれば1.5トンの廃菌床ができる。

これを燃料化し蒸気として殺菌用に転用する技術を開発。更にバイオマスボイラーの燃料としても加工可能な形に仕上げたのだ。

似たような取り組みとして稲の籾殻を原料としたバイオマスボイラー燃料の開発や、生育肥料の開発も行っている。

 

 そして同氏が岩手県の久慈市で取り組んでいるのが、木の皮を使ったしいたけ栽培システムである。

どういう事かというと、山林を軸とした事業で必ず廃材として発生する上に用途が見つからない「未利用資源」として木の皮が発生していた。

これをバイオマスボイラーの燃料として投入可能なレベルまで加工をし、ボイラーの熱で温水を作り出す。

 

 

 その温水をしいたけ栽培に活用し、そこで採れたしいたけを地元のスーパーマーケット等に出荷するというシステムを構築。

これは未利用資源の活用に留まらず、しいたけ栽培を軸として50名程の新規雇用を生む結果となった。

使われていないものに価値を見出し、既存のもののコストを抑えて応用性を見出す事もサーキュラーエコノミーに必要であると小西氏は語る。

 

 質疑応答ではウッドチップではなく木の皮を選んだ理由が問われ、ウッドチップではコストが高すぎたからとの回答であった。

しかし木の皮は大量に水分を含む事もあって、安定した燃焼の実現は困難であるとされていた。これを技術で克服する形となったのである。

また自治体などに対してサーキュラーエコノミーをどうアプローチすべきかという問いに対しては、「やりたい事や手段が分かっていない」状態で止まっている所が非常に多いと語る。

行政側と消費者側、それぞれの内容や要望を「通訳」してきちんと形にするコーディネート能力も問われるものであると回答していた。

 

 

 アルハイテック株式会社の代表取締役社長 水木伸明氏「アルミ水素で脱炭素社会‼ 〜サーキュラーエコノミーによる実践〜」というテーマで講演を行った。

 元々水木氏は物流に身を置いており、その際にアルミが付属した袋タイプのゴミ等の埋め立て問題が取り沙汰されていた中で関心を持ったのだという。

 

(関連記事)アルハイテック株式会社:無駄なくアルミを循環利用し水素社会を目指す取り組み

 

 

 昨今新しいエネルギーの1形態として水素が取り上げられている。

しかし輸送には莫大な冷却エネルギーを消費しながら輸送せねばならず、その製造工程でも多量のエネルギーを利用する事がネックとなっていた。

そこで同社の技術はCO2排出、コスト、エネルギーとしての利用価値、資源循環への貢献という四点をそれぞれ両立する技術を探索。

そこで目をつけたのがアルミニウムが付着したゴミ、あるいはアルミニウムそのものの廃材である。

 

 

 切削されたアルミ切粉や端材、あるいはカップ麺の蓋や酒パックなどあらゆる所にアルミは使用されており、この大半は現在では燃えるゴミ扱いである。

これをどうにか資源化出来ないかという事で、同社は分離された使用済みアルミを投入し、水素と水酸化アルミニウムを発生させる再利用可能な溶液を完成させた。

この水酸化アルミニウムは製造工程がクリーンなものであるため企業から問い合わせが多く来ている他、生成された水素を温泉を温める熱源として利用する「温泉パッケージ」システムを5月24日にお披露目するという。

同社は北陸地方の都市でもアルミニウムを再利用しエネルギーを供給する実証実験を行っており、無電柱化のソリューションと併せて大いに注目を集めたとの事である。

 

 

 このシステムはアルミニウムをリサイクルする手順においても役立つ要素である。

というのも既存のアルミニウムリサイクルの経路では溶解時に二次地金にバージンのアルミニウムを混ぜ込んで品質を上げる必要がある他、残渣物として「アルミドロス」が15%ほど発生する。

このアルミドロスはリサイクルする方法が研究されているが、今回のシステムはアルミドロスそのものを発生させる事が無くその処理に苦心している事業者の手助けとなるのである。

 

 水酸化アルミニウム自体にもカーテンやカーシート、壁紙といった高いニーズが存在しその価格も上昇している。

極論ではあるが、安めのアルミ切粉を投入する事で水酸化アルミニウムと水素が得られるシステムといっても過言ではないポテンシャルを秘めている。

そのため将来的に石油王に代わるエネルギーの長者として、同システムを存分に活かすアルミニウム取り扱い事業者がその位置に来るのではないかと水木氏は語る。

アルミ合金の国際会議に出席した同氏は「金属を使ってエネルギーを生み出す人はあなたが初めてです」とまで言われる程に興味を持って迎え入れられたという。

質疑応答の時間が取れなかったものの、会場からはどよめきとも驚きとも取れる「アルミニウムで水素が取れる」という事に対する興味や関心の囁きが聞こえていた。

 

錦麒産業株式会社の代表、斉社長は「中国、マレーシアの鉄、非鉄スクラップ事情」というテーマで講演を行った。

西日本随一の鉄スクラップサプライヤーである同社は、当然のことながら中国や東南アジア圏さらには米国、バングラデシュのスクラップ取引事情にも通じている。

 

(関連記事)

エントロピーの原則で拡大を続ける錦麒&柴田産業Gr 再び斉代表に聞く

 

 非鉄金属スクラップは国外にどの様に流出しているか、という問いに対して東南アジア圏(主にマレーシア)がその受入口になっているという。

その理由として日本国内向けでは評価が低いもの、そもそも受け入れてくれないものがメイン。アルミスクラップや特殊鋼スクラップも同様の理由で海外に輸出しているとのこと。

 

 この事から分かる通り、東南アジアは「デメリットなく」様々な金属スクラップが取引されている。いわばスクラップマーケットのハブ的な役割を担っているのだ。

また、同社は定期的にアメリカからも各種の鉄、非鉄スクラップを「輸入」しているが、とりわけアメリカ産のモーターコアにはアルミニウムが多く含まれており、家電系のモーター等も多く輸入しているとの事。ただ、昨年は船賃が高騰したことで輸入は減ったが、昨年秋から船賃は下がってきたため、ようやく輸入もしやすい環境になってきたとのこと。

 

 また、中国向けの鉄スクラップについて、現状中国は日本からさほど多く鉄スクラップを輸入していない。その理由として、鉄スクラップのメインであるH2、H3は中国は受け入れておらず、H1や新断などの上級品種のみだが、斉社長によると、今年はこれがやや緩和され、中国の購入量も増えてくるだろう、と話していた。

 

 錦麒産業株式会社は月間5万~6万トンのスクラップ輸出を行っている。

主な取引先として台湾や韓国の他、バングラデシュといった国にも輸出を行っている。

柴田産業ではE-Scrapを中心に扱い、最近買収した岩手県の吉村商事についても言及

 

 柴田産業では各自治体と小型家電の委託契約をしており、月間1000トンのEscrapを処理しているとのこと。小型家電から発生するものは100%国内リサイクルしているという。黒モーターについてはスーパーシュレッダーを昨年導入し、破砕処理。こちらもほとんどを国内循環させている。

ソーラーパネルについても柴田産業と提携先の新菱ケミカルとともに破砕処理を行っているとのこと。また電線でも銅電線とACSR(アルミ電線)の処理も行っているとのこと。

また、柴田産業のユニークな取り扱い事業としては、一部の県警が取り扱う拳銃弾の処理がある。水流選別機で真鍮をより分けている間、常に担当の警察官が二人一組で監視に当たり続けているのだという。

 

 こういったスクラップリサイクル事業において、質疑応答では特に中国などの事業者進出を警戒する声が聞かれた。

しかし意外なことに、中国系の事業者はそこまで多くは残留できないと斉氏は語る。

非鉄金属のリサイクルにおいて現状DX化は投資に対してリターンが合わず、極力機械で自動化出来たとしても人の手が介在する必要が存在する。

そのため企業として安定供給をする必要があり、加えて投資をしたからといって即時に利益が出る訳では無い。

その結果体力勝負となってしまい、10〜15年をかけて成果をあげて信頼を勝ち取れる程に安定供給が可能な大手事業者に収束していくものという事であった。

 

 

 4月26日最後の講演は東京製鐵株式会社の鋼板開発部長 伊藤 岳氏による「鉄スクラップから緑の世界が見える」。

同社は電炉鉄鋼メーカーのパイオニアであり、日本最大の電炉メーカーとしてサーキュラーエコノミーに積極的に取り組んでいこうとしている。

ある種のリサイクルの完成形として建てられたのが同社の鋼材が使われた東京タワーであり、その素材は朝鮮戦争時に放棄された廃戦車群というスクラップであるという。

現在年間300万トンの鉄鋼を生産する同社は、100%スクラップをベースとした製品を生産している。2050年には1000万トンの生産を目標に掲げている。

今後ますます鉄鋼の需要が高まる中で、電気炉のシェアを拡大する事は炭素量の削減に大きく寄与する。

また低品位のスクラップ系素材から高品位の鋼板を製造するべく研究を重ねている。

 

 

 世界に目を向けてみれば、最大級の鉄鋼製造先であるアメリカは自国や近隣地域の産業を保護する為に様々な政策を打っている。

"Make America Great Again."をスローガンに、ロシアや中国といった相手と対等に戦う為に電炉の投入割合を増やしたり関税を掛けたりとあの手この手を尽くしている。

欧州では直接市場規模で殴り合って勝てるものではない為、EU全域で"Green Economy"を合言葉に各種規制を設定している。

特にルール作りに対して積極的であり、EU加盟国の一つであるデンマークでは「電気代の節約具合が個人の指標となる」レベルで生活に組み込まれ浸透しているものである。

 

 

 一方電炉の投入割合が70%と突出しているトルコはスクラップの輸入国としても有名である。

そんな同国はスクラップの輸入量が減少しつつあるという。

主な原因として挙げられるのはエネルギーコストの上昇や輸送費の高騰などであり、自国にスクラップがそう多くなく輸入に頼り切ることの危うさを示している。

 

 中国は年間10億トン程の鉄鋼を生産し、6700万トン輸出するという莫大な規模を誇る。しかしそんな同国も国際社会の流れに逆らう事は出来ないのか、緑色政策という電炉化への後押しを採択している。

また低品質であった製品の質をあげていくため、生産量を視野に入れずグレードアップする大統合という方針も打ち出している。

もちろん聡い商売人は中国国内ではなく、東南アジアなど高炉の生産に規制が入らない地域を狙って高炉を建設し、加工品を中国に流しているという。

 

 翻って日本は内需が落ち込んでおり、また輸出面でも中国との価格競争を避けるため、高炉メーカーは輸出を控えている状況(その結果、減産)。

また、カーボンニュートラルへの対応から高炉も電炉生産へとシフトしつつある。となれば原料スクラップの国内需要は増えることになる。

 

 東京製鐵株式会社では老廃スクラップをメインに製鉄を行っている。

高級なスクラップは争奪戦になることが多く、安定量を確保するのもコストの低減も難しいときている。

そこで低品位スクラップに含まれる含有元素を逆に利用する事で、高品位な製品を提供するシステムを築いたというのだ。

また使用済み自動車をシュレッダー(細かく分解)せずに処理できる全部利用も同社は進めている。この全部利用は国内のELV(使用済み自動車)リサイクラーからも高く評価されている(と、パネルディスカッションでエコアールの石井社長が強調されていた)。

 

 

 

 また同社が製品を生産する際に取っているユニークな数量調整システムがある。電力消費量に連動し生産量を変えるというものだ。

これは再生可能エネルギーの発電量が上下し安定しない傾向にあるならば、多く発電できる時に大量に鉄鋼を生産し発電量が見込めない場合は生産量を抑えるという弾性的な設定を行っている。

他企業との連携も積極的に行っており、リース用建築に使われる金属サンドイッチパネルのリサイクルや低炭素型電炉鋼の利用(大成建設との連携)といった方策も打ち出している。

更にトヨタの水素エンジンレーシングカーにも同社の部品が使われているとの事だ。

こういった多くのパートナー企業と共に、更にグリーンパートナーも探していくことで環境目標を成し遂げていくと語っていた。

 

 

 質疑応答では講演中に日本の様子を指して出た「課題」というキーワードの意味についての質問があった。

日本が解決してきた「課題」とは、阪神淡路大震災や新潟県中越地震、あるいは東日本大震災などの災害もそうだが様々な日本固有の社会的課題も含めて多くの超えなければならないものを超えてきた成果を指すという。

この問題解決の経験値を今後の事業の発展にも大いに生かさなければならないと伊藤氏は語っていた。

 

 

(IRUNIVERSE Ichimura)

 

 

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