鉛バッテリースクラップ近況2023#4 新たな流通ルート萌芽でひっ迫感あり
5月中旬の国内鉛バッテリースクラップ市況は全国的にみてややひっ迫感あり、一部では強いひっ迫感、しかし一部で荷余り、というアンバランスな状況を呈している。荷余りというのは西日本の一次鉛精錬メーカーであり、やはり2か月に及んだ定期炉修の影響からリサイクル原料である巣鉛在庫はあふれかえっており、荷止めも行っている現状。巣鉛価格は4月のキロ当たり103円前後からそのまま変わらず現在に至る。
しかし他は、特に二次精錬メーカーでは原料在庫のひっ迫感が強い。特に関西地区は厳しい、と聞く。言わずもがなだが、中華系、ベトナム系といった新ルートの買いが活発化しているためだ。彼らの自動車用鉛バッテリースクラップの買値はキロ当たり58〜60円、バイク用バッテリーでも50〜55円、産業用でも30〜40円をつけている。彼らの買値に日系精錬メーカーの買値も引っ張られている状況。関西では京都、関東では千葉で新たに意欲的な集荷活動を行っている業者が出てきている様子。三重県の岡田商事が行っているブリオン生産はまだテスト段階。岩手県の三華は許認可をとったことは発表していても、動きが見えない。近隣メーカーも情報はつかんでいないようだ。
LME鉛価格が下がろうとも鉛バッテリースクラップ価格は下がらず
LME鉛相場と鉛バッテリースクラップ相場の推移
鉛建値と為替相場の推移
上図のように、LME鉛相場が下がってもスクラップ価格は下がっておらず、むしろ上昇。そもそも、アジアの鉛バッテリースクラップ価格と比して日本市場はまだ安い、ことで海外との値差からすればまだ上げ余地はある、とみる。
「控えめにいっても年内に70円は超えるだろう」(鉛バッテリースクラップ扱い筋)
鉛バッテリー自体の需要は決して落ちてはいない。それは日本がまだEV比率が低いことも一因かもしれないが。
しかし国内鉛精錬メーカーは一次、二次含めてフル操業できているところが少ない。設備増強がうまくいってない、人手不足、現状維持、といろいろあるが、結果的に増産できているスメルターはいない。日本国内であればどこよりも安く原料(バッテリースクラップ)が仕入れられ、ブリオンは国際相場で売れるゆえ、確実に利益をあげられるロケーションである。
ゆえに、海外系(特に中国勢)が日本での精錬操業を求めているのも無理ないところ。韓国の鉛精錬メーカーも再び日本での精錬に関心を示しているとも聞く。
「国内の日系精錬メーカーが増産できていない現状、むしろ、中国系でも新たな精錬所が国内にできることで、鉛バッテリースクラップをきちっと処理できるのならば、日本としてそれは歓迎しべきかもしれない」とはさる鉛精錬メーカー関係者の話。
その理由として、新たな精錬所というバッファー機能がなければ、おそらく、国内で処理できない鉛バッテリースクラップが出てくる。すると、国内で処理できないのであれば、再びバッテリースクラップの輸出をOKとしても良いのではないか?という議論になってくる。これは絶対に避けなければならない、と識者は話す。
(IRUNIVERSE/MIRUcom YT)
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