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日本電線工業会:定例総会記者会見を開催

 2023年6月6日、東京都港区のホテル インターコンチネンタルホテル 東京ベイにて一般社団法人 日本電線工業会の第69回定時総会が行われた。
本記事では定例総会記者会見の内容の概略を記載すると共に、懇親パーティーで得られた内容を併記する。


 今回の定例総会では副会長として新たに森平 英也氏(古河電気工業株式会社)が就任。
また多くの役員が再選される中で、幾人かの人員に関し人事異動が発令されその内容が発表された。
今回6月6日付で退任となるのは、技術部長の横山 繁嘉寿氏(株式会社フジクラ)、調査部長の長澤 克氏(古河電気工業株式会社)、総務部長の齋藤 英一氏(住友電気工業株式会社)の3名だ。
新たに6月7日付けで、技術部長には郡司 勉氏(古河電気工業株式会社)、調査部長には大井 淳氏(住友電気工業株式会社)、総務部長には若月 英樹氏(株式会社フジクラ)がそれぞれ就任する事となる。


 引き続き、日本電線工業会 会長の伊藤 雅彦氏より2023年度事業計画書に沿った内容での挨拶となった。同氏は今回で2年目の会長職となる。
以下は語られた内容の抜粋である。

 


 


 昨年度はWithコロナが定着し、行動制約のない経済活動が再開されていった。
その一方でロシアのウクライナ侵攻に端を発するエネルギー価格を含めた物価の高騰や半導体不足によるサプライチェーン問題の長期化、異常気象による作物の不足、複数の国家や地域での高金利政策に伴う円安の進行など外部環境の変化に見舞われた一年でいった。


 昨年上半期はテレワークを始めとした新しい日常や巣ごもり需要といった領域がやや落ち着いた影響で、電気機械部門の需要は若干減少。
それでも銅電線の出荷本数は前年度の上期をわずかながら上回った結果となった。
一方下半期は半導体不足の改善から生産台数の改善を期待した自動車業界や、大型案件の着工数が順調に推移する事で増量が見込まれた建設部門の動きが注目された。
しかし半導体不足の改善は状況が停滞し、資材の高騰や人員不足などにより期待した結果とはならず先述の業界は下振れを起こす。
その結果として、2022年度の銅電線需要は前年度比-1.7%の61万9600トンとなった。


 今年度の経済はロシア・ウクライナ戦争の継続や米中摩擦の動向、中東やアジア圏の地政学的リスクなどからグローバル市場は見通しが極めて難しい状況だ。
日本では新型コロナウイルス感染症が5類へと指定された事で、アフターコロナを見据えた本格的な経済回復が期待される。
再生可能エネルギーの普及や電力系統の整備、自動車では電動化車両の普及という電線需要が見込まれ、情報通信インフラではDXやIoT、5Gなどの技術に関連する投資の増加が見込まれる。
2025年大阪関西万博や今後誘致が進むIR事業も見据えれば、将来的により良い経済循環状況となる事を期待したいところである。


 今年度は銅電線出荷量は2022年度対比で+4.1%の64万5000トン、アルミ電線は+2.9%の23,000トン、国内の光ファイバーケーブル需要は+4.1%の646万キロメートルコアと予測。


 日本電線工業会では2022年度の重点活動テーマとして環境問題への対応や中堅・中小企業の経営基盤強化の支援、グローバル化への対応、商慣習の改善という4つの柱を掲げ取り組んだ。
環境問題に対してはカーボン・ニュートラルの構造計画を実行し、メタル電線や光ファイバーケーブル合算での2021年度のCO2排出量は2013年度対比で30.1%削減に成功。
2030年度の削減木である37.4%減に対して非常に良いペースで排出量を抑えられている。
また環境に配慮した電線サイズ設計「ECSO(エクソ)」についても需要家やユーザー向けの普及活動を様々に行っている。


 中堅・中小企業への経営強化に対しては中堅企業部会を開催。また会社訪問を行い35社と意見交換を行う。
商慣習の改善は会員の活動状況の確認や電線取引適正化安定調査を実施。
顧問弁護士によるフォローアップの講習会を取引適正化に特化した内容で、会員や流通販社向けに実施。
適正取引の推進と生産性付加価値向上に向けた自主行動計画も改定、パートナーシップ構築宣言を発表。


 今回は環境問題への対応、中堅・中小企業への経営基盤強化の支援、商慣習の改善の他に海外情報及び技術情報の把握という事で1点内容を変更して事業を行う。
経済産業省を中心とした緊密な連携や、他の産業団体と関係構築を行っていく。
会員に対しては有効な支援・施策・情報をタイムリーに提供していく。


 電線産業を代表する立場として、コンプライアンス推進を始めとした社会的責任を果たし社会からの要請を的確に理解する事が大切であると考えている。
会員との意見交換や関係各所からの情報収集を積極的に行い、電線産業発展を促し広く社会へ貢献していく。


 11月18日は電線の日として設定し6年目になる。
電線産業の重要性を改めて社会へ広める為に、電線愛好家の石山 蓮華氏が公認「電線アンバサダー」へ就任。
広報により電線業界全体の認知度工場とモチベーションアップを図っていきたいという言葉で、記者会見での挨拶は締めくくられた。

 




 

 

 続く懇親パーティーでは 経済産業省の製造産業局長である山下 隆一氏もゲストとして招かれて挨拶を行った。
以下は同氏の挨拶の抜粋となる。


 コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻により、経済の枠組みは大きく変質する事となった。
特に世界中でエネルギー危機を迎えた結果、資本が手元にあるにも関わらず「エネルギーが足らない」状況が頻発し、同時に食糧問題も発生している。
世界中を巡るサプライチェーンも危機的状況であり、この状況に対し「世界は脆弱なサプライチェーンの上に乗っている」という事を再認識させられた。
また経済面では経済的威圧がこれまで以上に見られ、特に保護主義の台頭は目を見張るものがある。


 またこれまでのような自由貿易はどうなっていくのかという不安がある。
自由貿易を守り、リスクを低減し会社を守っていく必要がある。
そのためには「新しい秩序の枠組みを作る」という努力が必要となるという。


 まず1つはエネルギーを軸とした枠組みである。
国によってエネルギーの需給状況は違うが、枠組み内の同士国はお互いの状況を理解し、足りないものを補完しあってエネルギーの安定供給を行える関係を持つ事が重要である。
もう1つは最新技術を軸とした枠組みである。
昨今話題となる半導体や量子、バイオ、グリーン等色々な重要技術に対し枠組みを守っていく事が重要だ。


 さらにもう1つは重要物資の枠組み。
地政学的リスクを考えた上で、レアメタルを含めた金属のサプライチェーンを守っていく事が必要である。
そして最後の1つは保護主義への対抗策を練っていく枠組みだ。
先日のG7で合意をした内容を軸に、今後具体化していく必要がある。
その実現には政府と民間が手を取り合って進めていかなくてはならない。

 社会に目を向ければ、経済の潮目は変わってきていると実感する。
設備投資は今年度103.5兆円。経済界は2027年に115兆円の国内投資を目標とする。また賃金は5月10日付けで3.67%上昇と発表され、物価はCPIでは4.1%上昇となっている。
これはこの国が長らく悩んできた「賃金、物価、投資の3方向で上昇が見込めない」という要素が全て変化していることを示す。
この流れを正の循環へ持っていかなければならない。

 GXはGI基金として2兆円用意されていた資金が2.7兆円へ増額。
政府は10年間で150兆円の投資を呼びかけており、政府からも20兆円投資を行うGX推進法を通したので、ファイナンスとしての裏付けも出来た。
水素やアンモニアの支援が先行しているが、今後多くの支援策が登場してくる。
半導体等のDX技術に対応する支援としても2兆円を超える支援を用意しており、電池に対しても5000億円の支援を行うとの事である。


 現在工業用地や工業用水、人員が足りないという声が地方から上がっており、経験した事が内程に製造業周りは非常に活気づいた状況となっている。
日本が地政学的にも「重要拠点」として見られる程の価値を取り戻しつつあるという事である。
政府が前に出て支援を行っていく体制を構築するので、民間企業もそれに歩調を合わせてついてきて欲しいと語っていた。

 


 会場内には先述した電線アンバサダーの石山 蓮華氏も来場。
多くの企業関係者が集うパーティーとなり、会場内で幾つかの企業の代表者に話を伺う事が出来た。
一様に語られたのが、建設業界や半導体業界が盛り上がっていく事が電線業界復活の鍵となるビジョンである。
国内における電線消費量のうち大きな割合を占める建設業界での消費、並びに電気自動車を始めとした機材は電線の大きな供給先となっている。
そして電線はただ金属線があるだけではなく電線そのものの素材は元よりそれを覆う被覆線、そこに投入される樹脂などの化学製品など種々の要素が絡み合って電線業界に関与している。
そのため電線の需要と供給が影響する産業の領域はかなり複雑な物となっているのが実情だ。
来場者の顔ぶれが多岐に渡るのもこういった理由からであろう。


 「顧問弁護士によるフォローアップの講習会」という内容が会見内で言及されていたが、来訪されていた弁護士の方からそれに関わるお話を伺う事が出来た。
というのも、かつて公正取引委員会により日本電線工業会は「平成23年のVVFケーブルに係る独占禁止法違反事件」で排除措置命令を受けている。
『電線業界の取引適正化のために』というガイドラインを策定し、これまでの商習慣で問題となった点を洗い出し、公正取引委員会と連携を行う旨を掲げている。
今後もコンプライアンス面で配慮をしていくと共に、社会的責任を果たしていくとの事である。

 これから勃興を期待される業界がどれだけ勢いを増していく事が出来るのか、産業を支える必需品でありインフラとして機能する電線を一手に引き受ける日本電線工業会の今後の舵取りに注目が集まっている。


(IRuniverse Ryuji Ichimura)

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