レアアース市場近況2023#7 中国改善も勢い鈍い
6月中旬~7月初旬のレアアース市場全体は勢いの鈍さが目立った。中国のレアアース市場はやや回復したものの、先行きの需要不安がなお強く、上値の重い鉱種が多かった。
■中国のレアアース相場、6月は上昇に転じる
中国のレアアース業界団体である中国稀土協会が7月5日に発表した6月のレアアース価格指数の平均値は209.3と、5月の201.3から4%上昇し、5月の前月比下落から上昇に転じた。ただ、高値は6月13日の211.8でここをピークに再び下落基調となり、6月30日には201.9と、この月の安値で終えた。
6月の中国レアアース指数の推移(中国稀土協会)
中国景気の現状はやはり楽観できないとの声が多い。レアアース業界のベテラン関係者はIR Universeの取材に対し、「中国から来日した取引先の情報では、自動車や不動産などいずれも低調で、景気回復には時間がかかりそうだ」と話した。中国国家統計局が6月30日に発表した中国の6月の製造業購買担当者指数(PMI)は49.0と、3か月連続で好不況の境目となる50を下回った。
■テルビウム、ランタンがさえない
中国のレアアース市況の先行き不安は、世界の個別の鉱種の価格にも波及している。
金属ネオジムの価格推移(99% FOB China)($/Kg)
磁石向けの代表格である金属ネオジムは4月下旬に仲値で1㎏=80.5ドルに下落したがその後は段階的に水準を切り上げ、6月8日には87ドルまで上げた。ただ、6月末に79.5ドルに急落し、節目の80ドルを割った後はこの水準での推移が続く。6月の仲値の平均価格は85.30ドルで5月の81.83ドルからは上げたものの前年同月(178.00ドル)の半値以下の水準が続く。
金属テルビウムの価格推移(99% FOB China)($/Kg)
金属テルビウムはじり安。5月下旬に一時1kg=1497ドルまで戻したが勢いは続かず、6月に入り小幅に水準を切り下げる展開となった。6月下旬からは1445ドル程度で推移している。6月の平均価格は1453.00ドルで、前年同月(2740.60ドル)と比べるとやはり半値近い。
金属ジスプロシウムの価格推移(99% FOB China)(S/Kg)
金属ジスプロシウムは底堅さを見せた。5月末の仲値1kg=380ドルを底に持ちこたえ、7月5日時点では388ドルに上げている。6月の平均価格は385ドルで、5月の平均価格(386ドル)をやや下回った。
金属ランタンの価格推移(99% FOB China)(S/Kg)
金属ランタンは5月25日~6月28日の1ヶ月超にわたり仲値3.85ドルで推移した後、6月29日に3.80ドルに下げた。その後も同水準で推移している。2022年8月~2023年2月までは4.15ドルで推移しただけに、この約4か月間で8%ほど下げたことになる。
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6月21-23日
REIA年次総会開催、ポンペオ元米国務長官など登壇
ベルギー拠点のレアアース業界団体であるグローバルレアアース産業協会(The Global Rare Earth Industry Association :以下REIA)は、6月21~23日にバルセロナで年次総会を開催した。22日午前の基調講演にはマイク・ポンペオ元米国務長官が登壇し、「各国政府は資源の供給網(サプライチェーン)の回復力を確保し、環境のバランスをとるとともに生産能力の向上に向けた投資を進める必要がある」と述べた。
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6月21日
豪政府、重要鉱物の産業育成に5億ドル拠出へ 2030年までの長期計画発表
オーストラリアの産業科学資源省は6月20日、ホームページ上で、2023年~2030年までの鉱物資源政策を発表した。リチウムなどのレアメタルやレアアース(希土類)を巡り、加工を含めた産業育成に向けて総額5億ドルを支援する。
関連記事:豪政府、重要鉱物の産業育成に5億ドル拠出へ 2030年までの長期計画発表 | MIRU (iru-miru.com)
6月20日
中国 第1四半期のレアアース上場企業の業績が軒並み低下 需要不足が要因
2023年1-3月期の中国のレアアース上場企業の業績は軒並み悪化した。国有大手の北方レアアースの純利益は前年同期比40.83%減の9.22億元だった。ほかにも中国レアアースは88.42%減、盛和資源が89.14%減、広晟有色は93.05%減といずれも大幅減益だった。
関連記事:中国 第1四半期のレアアース上場企業の業績が軒並み低下 需要不足が要因 | MIRU (iru-miru.com)
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(IR Universe Kure)
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