中国国内においては、6月中のタングステン取引は現状どこも横ばい、もしくは漸増といった段階が続いている。フェロタングステン 70%minはやや増加気味であるものの、どこも取引が活発化している様相は見せていない状況だ。
一方でタングステン研削屑スクラップ 70%min Co 5%minについては供給元が限られているからかRMB2,050-2,070/人民元 (287-290米ドル/mtu)とやや需要が高まっていることが窺える。
価格に関して見ていくと、APT 88.5%minは181,500〜182,500⼈⺠元/トン(25,385〜25,525⽶ドル/トン)、タングステン酸化物99.95%minは206,500 〜 209,500 ⼈⺠元/トン (28,882 〜 29,301米ドル/トン) とどちらも先月と比較し上昇を見せている。
タングステン カーバイド粉末 99.8%min 2.5-7.0μmの価格は270-273⼈⺠元/kg (37.76-38.18⽶ドル/kg) と推移。
需要と供給がバランスよく推移しているおかげか、価格自体は漸増もしくは横ばい気味であっても乱高下に至っていないのは市場調整が上手く機能していると言えるだろう。
なお前回のレポート(タングステン市場近況2023#4 ようやく好況へ転じる可能性)より1米ドル辺りの人民元のレートが変動しており、現状はドル高人民元安の傾向となっている。
しかしこの値動きは中国市場の購入市場限定であり、今回の国際市場は苦しい状況に直面している。
6月中盤のヨーロッパではフェロタングステン75%minの価格は37 〜 38米ドル/kg と前回のレポート時よりわずかながら値下がり気味だ。
アフリカのタングステン精鉱50%minの価格は255〜260米ドル/mtu FOBとなり、こちらも若干ながら値下がり傾向を見せた。
中国国内からの輸出においては特に苦しい情勢であり、APT 88.5%minでは310〜320⽶ドル/mtuとなり先週後半からは5米ドル/mtuの下落。
酸化タングステンも同様の下落値を見せているなかで、唯一希望となっているのはタングステンバー W-5 99.9%minの輸出価格だ。
41.4〜42.4米ドル/kgという価格帯であり、先週後半から0.2米ドル/kgの上昇となっている。

タングステンAPT(EU FreeMarket)(US$/MTU) 3ヶ月の価格推移

酸化タングステン(WO3 99.95%min FOB China)(US$/MTU) 3ヶ月の価格推移

タングステンカーバイド(99.7%min 2.5-7.0μm FOB China)($/kg) 3ヶ月の価格推移

フェロタングステン($/kg) 3ヶ月の価格推移

タングステン鉱石(WO3 50% )(US$/MTU) 3ヶ月の価格推移

中国タングステン鉱石(WO3 65%min )(RMB/mt) 3ヶ月の価格推移
今後の市場動向を考えると中国国内でのタングステン価格は今後も膠着状態が継続し続けると見通されている状況だ。
国際市場ではそこまで厳しい値下がりは無く、比較的横ばいの状態が続くであろうと見られている。
とはいえ全体的に価格の硬直が続き、極端な需給変動が見られないタングステン市場の様相。いつまで堅調なペースを維持できるのか、需要の開拓も含めて市場の活性化が求められている。
(IRuniverse Ryuji Ichimura)