アルミ合金&スクラップ市場近況2023#14 為替の円高振れもあり製品、原料ともに弱含みで推移
アルミ合金と国内アルミスクラップ市況は足元、弱含みで推移している。背景には、7月に入って急速に進んだ円高がある。円高によって下落している輸入ADC価格はさらに下押している。一方、半導体などサプライチェーンの混乱が収束しつつある自動車の生産回復で合金市況には追い風も吹くが、在庫消化に手間取り、主力のADC12 は水準を切り下げたまま上向く気配が見えない。スクラップも新くずなど上物を中心に発生が少なく「品薄」を指摘する声があるが、実需の支えを欠き全般に調整色がにじむ。ただ、上値の重かったLME相場は中国での電力制限でアルミの供給が落ちていることでやや動意づいた。
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月末にかけて、米中の金融・経済政策を巡って下旬に動意づく展開も予想され、国内市況の反応が注目される。
18日現在の市況は、国産ADC12が1キロ当たり330~340円で推移しているが弱含み。6月下旬比で10円値を消した。スクラップも主要品目を見てみると、7月中旬になって2S新切りが3円下落して同250~255円(市中実勢、スクラップディーラー買値ベース以下同)に、アルミサッシ63(ビス無)が同じく3円下げて同260~265円に、アルミUBC(缶飲料)プレス品が5円下げて同205円などとなっている。
7月後半については、為替の円高振れもあり、さらに輸入塊価格は下落。原料スクラップも上物でキロ当たり5円、スソ物で3円下げを打ち出している合金メーカーもある。
(中国産ADC12($/ton)と為替円ドル相場の推移)
足元、中国産ADC12はC&FJapanで2170~2200ドル。これに為替138円で計算すると、キロ当たり314円~319円(港着値)となる。従って先々は国産ADCもこの水準まで落ちる可能性は大。「アルミの場合は円高の影響が強く出やすい」(大手アルミ合金メーカー)
(国産ADC12相場の推移 ¥/kg)
(アルミ2S新切り 市中実勢置き場)
「確かに5月のダイカストなどの生産・出荷は伸びたが、昨年は(3月末から5月末まで)上海のロックダウンがあった。その水準との比較。いまの荷動きに相場を押し上げるほどの力強さはない。在庫調整も期待したほど進展していない」(扱い商社筋)。
市場関係者は合金市況の足元の状況をそう話す。
(合金メーカーの5月分の生産・出荷表)
スクラップ市況も状況は同じだ。「アルミスクラップの欧州向けの引き合いも増えており、価格上昇の余地も広がってきている」(大手問屋筋)と先行きに期待する声があるが、足元は「中国経済の低迷」(同)が響き、相場の地合いは弱いという。アルミUBC(缶飲料)プレス品は好調な輸出を映して6月に一時高値を切り上げ強含む気配もあったが、「夏場に備えた作り込みを終え缶飲料の生産が落ちる」時期に入ったため、需要減から値を下げた形だ。
(UBC相場 ¥/kg 市中実勢置き場)
当面の相場展開を占うポイントは、米の利上の行方と、7月末に開くと見られる中国共産党の中央政治局会議で新たな景気対策がでるのか、この2点である。市場はすでに米の利上げが25∼26日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.25%引き上げで打ち止めになるとのシナリオで動き始めており、これに中国の景気対策が重なれば、景気後退を嫌気して上値の重いLME相場の流れを変える余地が出てくる。実需不足で低迷する国内のアルミ合金・スクラップ市況にも波及効果を持つ。下旬の米中の動きに注目である。
(LMEアルミ相場の推移 $/ton)
17日に発表された中国の4-6月の国内総生産(GDP、速報値)の発表で、中国経済の減速感は鮮明になっており、市場が催促してきた新たな景気対策発動の現実味も増した。月末の米中の動きに注目である。
(IRuniverse G・Mochizuki)
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