今度は「IRA・War」? 中国もEV部品を国産化か、EUは中国製への調査を開始
■分断する世界 中国・EU・米国
共同通信などが外交筋の話として9月17日に一斉に報じたところによると、中国政府が中国のEVメーカーに対し、半導体などの電子部品に国産品を使用するよう指示していたことが同日、分かった。中国工業情報省の閣僚経験者が2022年11月に中国の自動車メーカーを集めた会合で、EV半導体などで国産品を使用する数値目標を立てるよう指示したとされる。未達の場合は罰金を科す可能性もあるという。
一方、EUのフォンデアライエン欧州委員長は9月13日、仏ストラスブールの欧州議会で施政方針を演説し、中国製の安価なEVの流入を問題視し、同国の補助金支援が競争を阻害していないか調査すると表明した。中国産EVに自動車市場を脅かされるとの懸念が大きなドイツなどの意向が強いとみられる。中国側は、商務省が保護主義に当たるとの談話を発表するなど反発している。
関連記事:EU 中国の電気自動車に反補助金調査開始へ | MIRU (iru-miru.com)
米国はすでに、2022年8月に成立させたIRAで補助金対象を米国製EV部品に限定し、実質的な中国自動車部品メーカーの排除に動いてきた。
■気になる中国バッテリー企業の命運
中国の規制の結果、気になるのは世界最大の車載向けバッテリーメーカーとなった寧徳時代新能源科技(CATL)の動向だ。共同通信によると、中国工業情報化省の閣僚経験者は前述の会合で、CATLに対し対外投資の際は100%出資企業を設立するよう求めたという。
CATLは既にドイツやハンガリー、インドネシアで工場を建設中で、インドネシア工場は現地企業2社と合弁の予定。また、ハンガリー工場を巡ってはハンガリー政府から補助金を受け取っており、ドイツ工場も含めて部品供給先として独メルセデス・ベンツと協力関係にある。また、米フォード・モーターが米ミシガン州に建設を計画する電池工場にも協力する予定だ。ただ、こちらのプロジェクトには米下院による調査が入っている。
既に世界展開するCATLにとって、各国の規制戦争の激化は足かせになりかねない。実は、1民間企業であるCATLの快進撃を中国当局が良く思っているかどうかは、心もとない。中国の電池専門サイトである電池聯盟は2023年春、「車載電池産業には『共同富裕』はない」と、車載向けバッテリー産業がCATLやBYDなどの大手に独占されている状況を指摘した。
巨大化し快進撃を続けた結果、中国当局に疎まれて矮小化を余儀なくされた民間ネット販売のアリババ集団のような例もある。CATLやBYDはもちろん、中国はEVメーカーも海外に工場を設けたり株式上場したりしている例は多い。分断の流れと各政府の動向を注視する必要がありそうだ。
(IR Universe Kure)
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