中国産ガリウム、日本にはもう来ない!? さる中堅商社幹部に見通しを聞く

中国が 8 月 1 日からガリウムやゲルマニウムの関連製品を輸出規制の対象に含めてから 2か月間が経過した。この間日本勢を含め世界から多くの企業が中国政府に輸出認可を申請 したとみられるが、これまでにはっきりわかっているところでは、認可を受けたのは米社 1 社のみ。ただ、そんな中でもガリウム 2 トンを入手したという日本の中堅商社があり、幹部 に話を聞いた。
--ガリウム入手に成功したそうですね。
「2010 年の尖閣諸島問題に伴うレアアースの輸出規制の経験がありましたから、すぐに行 動を開始しました。入手経路は欧州経由です。日本国内の複数のお客さんから受注があった ので、契約をまとめて発注し、入手にこぎつけました。ガリウムの中国の国内価格は1kg=200ドル程度に抑えられていますが、国際価格は足元で高値450ドルまで上がっていますね。国際価格での契約は実際にはもっと引き上げられることを考えると、大口購入でもあり、早く動いたおかげで割安な価格で入手できたと思います」
--日本企業として輸入申請をしたのではなく、欧州経由での入手でしたか?
「ドイツの大手商社が規制発表直後に大量にガリウムを入手していました。ドイツは面白い国で、政府は中国やロシアと距離を置く姿勢を前面に出していますが、民間企業はそうでもなく、企業によってはかなり中露と親密なのです。中国側も心得たもので、ドイツなど欧 州に対しては日米とは分けて考えています」
--もともとは日本や米国の対中半導体輸出規制に反発した輸出規制措置ですよね。
「はい、ですから日本企業として輸入申請しても、認可が下りる確率は低いでしょう。規制は確かに中国国内の輸出業者にとっても痛いのですが、中国政府のメンツを考えても簡単に日本向け輸出を認可するようなことはできませんよね。中国産ガリウムが日本に来ること は、当面ないかもしれない」
--そうかといって欧州経由で買う、というのはなかなか思いつかないですね。
「これは、本当はガリウム、ゲルマニウムという単体の鉱物だけでなく経済安保の問題で、 次に何が規制されるかという話だと思っています。レアアースなんかももちろん危ない。 SICや炭酸リチウムなどもそうですが、中国依存が大きくて日本の半導体への打撃になりそうな鉱物はまだまだありますよね。日本政府としては難しい判断ですが、しかし対応しなくてはならない」
--価格見通しはどうですか? ガリウム価格は 8 月 10 日から高値で 1kg=450ドルで横ばいです。
「横ばいになっているのは、もうみんな(当座の必要分を)調達しちゃったからですよ。その 後は中国の連休もあり、中国政府の本気度を見極めようとしている状態です。中国が本気だ との認識が広がれば騒ぐ人たちが出てきて、価格も動き出すのではないでしょうか」 「ガリウム価格の過去最高値は2000年代のITバブルの頃の1kg=2500ドルくらいですね。 直近では 2 年ほど前に 700 ドル前後まで上げました。今はそこまでは想定していませんが、 過去最高値を付けた IT バブルの頃もインフレでしたし、似た環境にはなってきていると認識しています」
(IR Universe Kure)
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