アジアン廃プラマーケットレポート2023年10月-2 遅々として進まないリサイクル材料利用
中国のFukutomi Co Ltd 代表であり、中国の再生プラスチック協会の理事長でもあるSteve Wong博士は2023年10月2日の廃プラマーケットレポートで、中国のプライム価格は高止まりが続いているものの、中国国内での需要は依然として低迷し続けている、と述べた。
※プライムバージン価格は、中国の主要なバージンポリマーサイトのVATを含む人民元建て価格
為替レートは1米ドル=7.3053中国元。
10月13日金曜日、ニューヨーク市場で原油価格は1バレル当たり87.69ドルで取引を終えた。
イスラエル紛争から生じる供給リスクが、石油資源が豊富な中東地域に波及する可能性がある事を想定しアジア圏より5%の高値をつける形となっている。
EIA(米国エネルギー情報局)は第4四半期の原油価格は90ドルにとどまるが、世界的な経済・政治的不安定により、2024年には96ドルに上昇すると予測しています。
OPEC+による生産量の調整があったとしても価格上昇は避けられないと見られている。
中国ではゴールデンウイークの長期休暇後にプライム樹脂の価格が下落し、汎用プラスチックからエンジニアリングプラスチックまで影響が出ている。
短期的には回復の兆しがない中国経済状況の悪化、原料価格の下落、原油価格の不安定、世界的な地政学的な不確実性などにより、市場心理はさらに弱気になる一方である。
一部の石油化学会社はメンテナンスのため操業を停止し、新たな生産の稼働を遅らせ、在庫を減らすために割引を行った。それでも製品のスポット価格は引き続き下落しており、インドを含む東南アジアでは需要の低迷と価格下落により、市場は引き続き低迷すると予想されている。
中国の国慶節以降は、どのポリマーも好調な業績からは遠い状況が続いている。
ペットボトル、HDPE ボトル、Aグレードの天然PEフィルムのスクラップ材料を除き、スクラップ材料は2週間前に比べて一般的に安くなっている。
混合硬質プラスチックMRP、低品位スーパーマーケットフィルム、植木鉢やトレイ、農業からの廃棄フィルム、使用済み混合フィルム、PP大袋、混合生産ランナーとダンゴなどの消費後廃棄物は、処理コストが販売価格を上回るため、リサイクル業者へ販売する事が困難である。
そんな中ほとんどのリサイクル業者は、競争力を維持するために分別や洗浄のコストを避けるために、処理が簡単な材料を好む。
生産を維持するための収益性の高い材料が不足しているため、一部のリサイクル業者は事業を縮小し、より小規模で安価な製造拠点に移転し、経費を節約している。
多くのリサイクル事業者は、2024年に経済的および政治的状況が改善するか、今後数年間でリサイクル材料の使用が世界的に義務付けられなければ市場が好転しないのではないかと考えています。
リサイクル材料は、需要の低迷と弱気な市場心理によるプライム樹脂の市場価格を反映しているものの、一部のリサイクル材料はポストコンシュマーリサイクル制度の対象となり、持続可能性プログラムに参加している生産者によって需要が保証されている。
そのため、不利な市場価格の影響を受けないという有利な点が存在する。
さらに、一部の地域ではリサイクル材料の使用が義務化されている。
その影響により米国、中東、ヨーロッパの包装業界ではPETおよびHDPEの購入増加につながっている。
リサイクル材料の人気は高まっていますが、下流の顧客は主要なバージン材料よりも高い価格を支払うことに消極的である状況は改善していない。
日本は循環経済と持続可能性戦略を支持していますが、価格を優先的に考慮し価格が安いときにバージン材料を選択する可能性は高い。
PE、PP、PS、ABSの市場では、より多くのリサイクルペレットが入手可能ですが、バージン材料が安いため、多くの取引では赤字になっている。
とはいえリサイクル材料の使用を世界的に義務化させることは、業界と環境をサポートすることにつながると考えている。
低密度ポリエチレン樹脂(US$/ton 3ヶ月分の値動き)
塩化ビニル樹脂(US$/ton 3ヶ月分の値動き)
ポリスチレン(US$/ton 3ヶ月分の値動き)
ポリプロピレン(US$/ton 3ヶ月分の値動き)
(IRuniverse Ryuji Ichimura)
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