経産省出資の豪ライナス・レアアース、マレーシア事業を再編へ 11月から一部閉鎖
オーストラリアのレアアース(希土類)生産大手ライナス・レアアースは10月20日、マレーシア事業を再編すると発表した。11月中旬から12月にかけて、混合希土類炭酸塩(MREC)処理を除く同国でのすべての操業を停止する。一方で加工事業を増強し、永久磁石の原料となるネオジム・プラセオジム(NdPr)の生産能力を拡大する。
同日発表した2023年7-9月期の業績報告書の中で明かした。発表によると、ライナスは閉鎖によってマレーシアでのMREC事業の操業も最小限になり、同国の従業員は西オーストラリアのカルグーリーで建設中の新工場に配置される。一方でマレーシアではNdPrの生産量を約10,500トンに増やし、2024年1月からのマレーシアでの営業ライセンス更新に対応する。NdPrは電気自動車(EV)や防衛製品などに使われる永久磁石の原料。
ライナスは西オーストラリアで採掘したレアアースをマレーシアの工場で精製する事業を長年、手掛けてきた。ただ、同社の工場は周辺環境への影響などを巡りマレーシア側とたびたび対立。マレーシア事業の先行き懸念から、カルグーリー工場の建設を急いでいた。
マレーシアを巡っては2023年9月、アンワル首相がレアアースの輸出禁止に向けた政策を策定すると話したと伝わってもいる。ライナスはマレーシアで展開する外資系レアアース企業としては事業規模が大きく、影響が懸念されてもいた。
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同日発表のライナスの2023年7-9月期決算は売上高が前年同期比22%減の1280万豪ドルだった。世界経済の減速による需要減と採掘コストの拡大が響いた。ライナスには、日本の経済産業省が2023年3月に出資し、重希土類の供給契約を結んでいる。
(IR Universe Kure)
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