ステンレス専業一貫メーカー(日本冶金vs日鉄ステンレス)の23年度上期の収益について分析
日本冶金は10月31日に、日鉄ステンレスは11月1日に23年度上期決算をそれぞれ発表した。ともに減収となったが、利益面で違いが出た。
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⇒「日本冶金:24/3期2Q決算を発表。業績見通しを修正。」
<23年度上期決算>
●日鉄ステンレス:減収大幅減益
売上高は前年同期比11.2%減の2,224億円。本業を示す営業利益は同63.8%減の153.7億円。金融収支などを加味した経常利益は同63.3%減の160.1億円。特別損益を加味した当期利益は同64.1%減の109.4億円と大幅減益となった。
●日本冶金:減収ながら増益を確保
売上高は同2.6%減の939億円。営業利益は同2.0%増の129億円。経常利益は同4.4%増の128.5億円。当期利益は同4.2%増の90.3億円と増益を確保した。
両社の業績を比較すると日鉄ステンレスの収益の落ち込みが大きいのがわかる。同社は日本冶金と異なり、汎用ステンレスの割合が大きいため、廉価な輸入品の影響を受けたためと思わる。実際、販売数量は同11.7減の45.9万トンと、コロナ禍の影響を最も受けた水準をも下回った。また、日鉄ステンレスのほうが生産能力が大きい(=固定費がかさむ)ことも裏目に出たか?
販売数量減少に伴う稼働率低下は、装置産業にとっては大きな減益要因となるため、各利益が大幅減益となったものと推測される。
一方の、日本冶金は付加価値の高い高機能材(ハイニッケル鋼)などを生産しており、これらは輸入品の影響を受けないことが幸いし、減収ながら増益を確保できたとみられる。また自社グループ(大江山)でフェロニッケルを自前で生産できていることも強み。詳細については今後開催予定の決算説明会後に再度報告する予定。
今上期の決算で両社の当期利益が同レベルの100億円程度の水準になったのは、偶然のことである。
図表1、半期別業績推移(百万円)
出所:各社の発表資料よりIRU作成
<今後の見通し>
輸入品の流入が続くと日鉄ステンレスにとってはより厳しくなってくる。生産設備の集約や生産体制の見直しなどを行う必要が出てくる。
(IRuniverse 井上 康)
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