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岡本工作機械製作所(6125) 24/3H1決算説明会メモ  ポジティブ継続

23/3期14.5%増収17.6%営利増予想は受注残消化で増額期待、24/3期も収益拡大期待

株価5510円(11/20)  時価総額260億円    発行済株4718千株 

PER24/3期DO予(5.9X)PBR(0.95X)配当(24/3DO予)200円  配当利回り3.6%

 

要約

・24/3上期10.2%増収9.2%営利増、半導体装置大幅減で受注36.9%減も受注残491億円

・23/3期9.8%増収7.2%営利増予想変更せず、中計25/3期予想1年前倒し達成も増額期待

・25/3期グリーンフィールド投資拡大、工作機械はEV向け拡大、歯車回復し収益拡大続く

・「ビジョン2030」を公表、30/3期半導体関連倍増で売上高700億円、営利115億円目標

 

24/3上期10.2%増収9.2%営利増、半導体装置大幅減で受注36.9%減も受注残491億円

 

 11/9に23/3上期決算が開示され、11/14に説明会が開催され、セグメント別半期売上などの開示がなされた。

 

 24/3H1は売上高246.73億円(期初計画比3.27億円未達、10.2%増)、営利29.08億円(同0.08億円増額、9.2%増)とほぼ会社計画並みで着地した。

 

 事業別では工作機械事業の売上143.48億円(4.0%増減)について、内訳は工作機械が100.24億円(10.5%増)、歯車31.90億円(17.1%減)、鋳物11.34億円(43.9%減)となった。工作機械が増加したのは受注残の消化が進み幅広い業種に大型研削盤が拡大したため。一方で歯車はファナックなどのロボット不振影響で減少、鋳物は工作機械受注低迷で半減した。仕向先別では国内が74.85億円(1.1%減)と平面研削盤は好調も岡本工機の歯車が5割程度を占めるロボット向けでファナック向けの不振などで落ち込み、鋳物の不振も有り微減に。輸出は68.63億円(6.9%減)で、北米が19.51億円(32.1%減)と金利引き上げ影響等で大きく減少、欧州は汎用研削盤の伸びで増収、アジアも36.82億円(7.5%増)と中国向けがEV関連でロータリー平面研削盤や小型成形研削盤が拡大した。工作機械事業の受注は139.51億円(22.6%減)、内訳の開示はなかったが、工作機械受注は業界並みの減少率とのことで、業界が17.7%減となっており、同様程度落ち込んだとみられる。歯車、鋳物はより大きく受注が落ち込んだ模様。

地域別では国内が大型平面研削盤の受注が落ち着き、歯車が大幅減で減少した。海外はアジアが中国のEV関連が好調で増加、一方、北米が落ち込み、欧州も補助金政策終了などで減少した。なお受注残高は183.0億円(同10.8%減)と依然として高水準で、一部検収遅れ等もある模様。工作機械事業の営利は4.46億円(54.8%減)と、減収影響に加え、一部検収遅れ、資材高、MIX悪化などで大幅減益に。

 

 半導体関連事業は売上高103.25億円(38.7%増)、営利30.78億円(38.7%増)ながら、受注は31.92億円(65.0%減)と大口ファイナルポリシャー(FP)受注がなく、大幅減も受注残は307.51億円(14.3%減)に。売上面では日本45.77億円(同期比36.99億円増、5.2倍)とグリーンフィールド向けFP売上がいよいよ本格計上され出した模様。アジア向けは50.62億円(18.2%減)とFP向けが高水準も一服、但しパワー半導体向けのグラインダ等が拡大、小さいながら欧州向も6.42億円(2.3倍)なども寄与した。利益面では高収益のFPの売上寄与で一部納期先延ばしもあった模様も、営業利益率は同期比変化なく29.8%を維持した。受注についてはウエハメーカーの300mmウエハ生産が停滞、中国でのFPの受注減、国内もグリーンフィールド向けFP受注の端境期となり大幅減に。但し受注残は依然高水準。

 

23/3期9.8%増収7.2%営利増予想変更せず、中計25/3期予想1年前倒し達成も増額期待

 

 24/3期会社予想に変更はなく、売上高500億円(9.8%増)、営利60億円(7.2%増)、経常利益59.5億円(7.2%増)、税引利益42億円(4.2%増)を据え置いた。これは中期経営計画の25/3期目標値の1年前倒し達成予想となる。

 

 今回、部門別の予想が開示されていないが、期初事業別売上予想をもととすると、上期進捗率は工作機械事業が42%、半導体関連装置事業が66%となっている。豊富な受注残を背景に、通常、下期売上が多くなることが多く、しかも高収益の半導体関連装置の増額が見込まれ若干利益の上乗せが期待される。

 

 受注も予想開示はないが、説明会では工作機械事業が20%程度の減少イメージとのことから年度で260億円(期初会社概算予想比56億円減、20%減)、半導体関連装置事業は上期プラスαで70億円程度(期初会社概算予想比91億円減、61%減)、全体では330億円(35%減)程度を想定している模様。現状、工作機械事業の中の工作機械は工業会受注予想で2023年が前年比9.1%減の1兆6000億円としているが、4~9月は前年同期比17.7%減となっている。同社は工作機械事業として受注が同期比22.6%減(鋳物が大きく売上半減で受注も同様と推定、歯車もファナックのロボット受注が28.4%減であり減少率が大きいとみられる)であるが、工作機械だけを取り出すと中国向け等で研削盤受注堅調など工業会平均より減少率が小さいと見られ、特に受注に占めるEV関連(中心は中国)比率が20%程度まで拡大(23/3期は15%)しており、受注は20%減までは減少しないとみられる。このため同社工作機械事業全体として受注高は前期を下回るが、全体で270億円(17%減)程度が見込まれる。なお受注残高が上期末で183億円ありEVバッテリーパック製造向けやEVモーター用精密金型向けに超精密大型平面研削盤など、今後部材不足などが緩和されれば納入が順調に進むとみられ工作機械事業の売上は上期対比で下期は季節性も有り増収を確保、利益は下期に回復しよう。

 

 半導体関連装置事業受注は、従来、信越化学とSUMCOの日系2社の設備動向に先行する形で受注が増えていたが、現在は海外向けが5割以上を占める。Q2現在受注残高が307億円あるが、上期では国内向け売上が45.77億円(同期比5.2倍、Q1が18.14億円、Q2が27.63億円)計上され、いよいよ国内グリーンフィールド向け納入が本格化、24/3下期にはさらに拡大が見込まれ少なくとも下期も上期以上の売上計上が期待される。このため会社想定を大きく上回り、24/3期で200億円を超えてこよう。一方受注は昨今の300mmウエハの顧客在庫の急拡大でウエハメーカーの生産調整が長引く見通し。この影響も有り、同部門の9割を占めるとみられるFP受注もグリーンフィールド投資の新規受注は見通し難。但し300mmFP以外ではパワー半導体等のグラインダ需要などが拡大、また上期からずれ込んだと見られる発注が30億円程度ある模様で、下期にこの分が加わると判断、半導体関連受注は会社想定を上回り100億円程度(前期比44%減)は確保しよう。

 

 利益面では会社計画に対し、半導体事業の比率向上によるMIX良化、工作機械の下期からの収益性回復などが見込まれ、売上高は会社想定並みも、利益は会社予想を若干上回ろう。

 

25/3期グリーンフィールド投資拡大、工作機械はEV向け拡大、歯車回復し収益拡大続く

 

 25/3期は半導体関連装置について、300mmグリーンフィールド投資は足元のウエハ需要低迷、2024年も生産調整の中でも設備投資が計画通り実行される見通し。2023年~2026年にかけ毎年月産40万枚程度の投資が実行されるとみられる。このため豊富な受注残を抱えるFPは25/3期にかけて納入が進もう。受注面は2024年もメモリ不振影響で在庫調整が長引く見通しで、中国が引続き設備増強を続ける見通しも、FP受注は国内メーカーについてブラウン投資中心となり、FP受注は24/3下期水準程度が継続、25/3期では24/3期比4割~5割増程度の回復に止まろう。但しパワーデバイス向けや通信デバイス(LT/LN:タンタル酸リチウム/ニオブ酸リチウム)向けにグラインダ受注が大きく伸長する見通しで、全体では5割程度の拡大が見込める。利益面では24/3期並みの利益率が維持されよう。

 

 

 工作機械事業は低迷するロボット向け歯車が在庫調整の進展、EV向け投資などでの需要拡大で急回復が見込まれる。また工作機械は業界受注と同様な動きで24/3Q4をボトムに回復が見込まれる。特に同社は自動車エンジン関連の受注が元々低く、EV関連ではバッテリー、モーターコア向け金型加工等で受注が拡大工作機械受注での比率が増してこよう。さらに半導体製造装置向け受注も下期には本格回復が見込まれる。このため、工作機械事業全体として15%程度の受注増、売上も受注高に見合う売上が期待される。利益面では工作機械の稼働率向上、歯車の売上回復などから収益性の回復が見込まれる。

 

 全体として25/3期は半導体関連事業のグリーンフィールド向け売上拡大、工作機械事業の収益性回復から、収益の拡大が続こう。

 

「ビジョン2030」を公表、30/3期半導体関連倍増で売上高700億円、営利115億円目標

 

 同社は中計ビジョンで25/3期売上高500億円、営業利益60億円目標の1年前倒し達成が見込まれる事となったため、今回、新たな中長期戦略として「ビジョン2030」を打ち出した。中計ビジョンでは研削で価値創造するソリューションカンパニーを目指すとして“創”lutionnと銘打ってビジョンを掲げていたが、今回は世界に類のない「総合砥粒加工機メーカー」として、平面研削盤・半導体ウエハ研磨装置でグローバルNO1を目指すことを長期ビジョンとして掲げた。また具体的財務目標として、30/3期に売上高700億円、営業利益115億円(営業利益率16%、全社費用配分前では130億円推定、営利率18.6%推定)を掲げた。

 

 

 事業別では工作機械事業を売上高400億円、営業利益は47億円推定、半導体関連装置事業を売上高300億円、営業利益83億円とし、工作機械事業は収益力強化し、高収益事業の半導体事業について成長ドライバーとして売上倍増を目指すとした。

 

 

 半導体ロードマップ・戦略として23/3期142億円の売上を30/3期300億円に倍増させる中身として、パワー半導体向けで+150億円~200億円、通信デバイス向けで+10億円~40億円と見込み、現在のシリコンウエハ向けはシェア維持~拡大するとした。基本的にはシリコン向けFPが変わらず、その他で伸びる想定となっている。現在、FP向け以外ではパワーデバイスなどの拡大が続く中で、SiC等の化合物半導体ウエハへの投資が活発化、ハイパワー化でウエハ薄化が求められ、グラインダなど、難作材加工の製品群の拡大が期待される。現状、売上比率は10%程度とのことであるが、年率30%成長を見込んでいる。特に難作材分野では東京精密、同社が機械の剛性面でディスコに勝っているとみられ、グラインダの本格拡大が期待される。一方、シリコンウエハFPについて、会社側は逆算して横ばい予想としているが、半導体の2D・3D化による大容量化が進み、デザインルールの微細化、シュリンクによるウエハ需要の停滞要素が薄れ、積層化によるウエハ使用枚数の拡大、貼り合せによるウエハ増加、加えてウエハ薄化ニーズの高まりで、FPによる極限の平坦化が求められると見られる。具体的にはロジックではトランジスタ数の増加と機能向上でチップ面積が拡大、分割チップの組み合わせで高機能化する場合もシリコン面積の拡大が神子メル。さらにDRAMではHBMなど3次元積層化、NANDではXtacking(エクスタッキング)でメモリ張合わせにより2倍のウエハ面積が必要となるなど、何れもウエハ面積増加と平坦度の更なる要求が高まろう。なお7月にSUMCOが2029年に新規供給を始める佐賀新工場に対し経済産業省が750億円の助成を行うことを表明、次のグリーンフィールド投資を後押しする動きもあり、FPについても早晩、大型投資の決定から再度需要が高まろう。FPは参入障壁が高いとみられ、結果として年率5~10%程度の成長が見込まれる。会社側では長計のスタートが23/3期の142億円となっており、ここから平均10%成長としているが、24/3期が200億円程度となる模様で、これをスタートとすると300億円達成はかなり前倒し達成が見込まれる。

 

 

 同社はこのような半導体関連装置の拡大に対し、特に日本での半導体生産拠点となる九州地区において、相次ぐ拠点展開を行った。具体的には23年4月に熊本県の機械装置メーカーのプレシード(各種自動化装置、省人化装置の開発、設計製作)に10%資本参加を実施、10月には佐賀県伊万里市に「九州テクニカルセンター」を開設した。さらに11月には宮崎県の大和工機(半導体製造装置や真空装置などの組立を行う企業)を完全子会社化した。九州では熊本でTSMC第1、第2工場、ソニーCMOSセンサー工場などに加え、SUMCOの佐賀新工場、パワー半導体では三菱電機が熊本県、ロームが宮崎に新工場を建設するなど、九州での事業拡大に対応、半導体関連装置の能力増強、ソリューションビジネス拡大を加速させる。なおこの計画では織込んでいないと見られるが、従来のウエハ研磨に加え、デバイス研磨で潜在的な成長が見込まれる。具体的に同社は信頼性の非常に高い3次元回路を低コストで実現するために、チップ間の配線をなくすTSVウエハ加工においてSi貫通電極ウエハの超平坦・金属汚染フリー・薄膜化加工のための研削技術実用化(2024年7月までJSTが延長支援)を進めている。また後工程での異種材料同時研削可能な装置開発も平行して行い、デバイス前工程、後工程での製造装置分野でも売上拡大が期待される。26/3期に量産受注獲得となれば、同社半導体関連装置の売上拡大がさらに加速しよう。

 

 

 工作機械事業ではEV関連でリチウムイオン電池製造装置向けの長尺超精密平面加工向けやモーターコア製造用連装金型向けの超精密平面加工向けに大型超精密門形平面研削盤がさらに拡大見通し。23/3期工作機械だけの受注229.43億円の中でEV関連は15%を占め、24/3上期では20%に達した模様で、従来は1%程度で急激な拡大を示している。なお2次電池向けやEVモーターコア金型向けなどは納期が1年以上要するものも多く、同分野の売上拡大は25/3期以降に大きく寄与しよう。また24/3期は生産調整で大幅減となる見通しも今後高い成長が期待出来るのが岡本工機の歯車事業。広島県府中市の府中第2工場が7月より生産を開始、月産15万個の生産能力が加わり、25/3期には歯車生産能力が約3割増となる。このため歯車だけで26/3期には売上100億円が視野に入ってこよう。また岡本工機の歯車は従来、EV向けには提供していない模様で、EV化では歯車の静音化要求が高まり、岡本工機の精密歯車へのニーズも本格化する見通し。EV向けが加われば更なる売上拡大もある。このように研削盤を中心に工作機械は業界平均を上回る伸びが見込まれ、加えて歯車ビジネスが拡大し、工作機械事業全体も30/3期400億円達成は十分可能とみられる。

 

 全体として25/3期以降も収益拡大から連続最高益更新が見込まれる。現在、株価は24/3期社予想EPS893.89円に対しPER6.2倍であり、東証スタンダード機械平均PER12.8倍に対し割安であるばかりか、PBRも0.95倍と最高益更新企業として割安感があり、年初来高値となっている東京精密の20.0倍、ディスコの46倍に対し、流動性に欠けるとは言え割安に放置されているとみられ、引続きポジティブ継続とする。なおJSTの研削技術実用化の成果が発表となった場合、また12/13から行われるセミコンジャパンで出展予定のハイブリッドウエハ総合砥粒加工装置などが評価されれば、大きく居所が変わってこよう。

 

 

 

(H.Mirai)

 

 

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