日本のサーキュラーエコノミーを牽引するか?東京製鐵のCEへの挑戦
IRUNIVERSE/MIRU主催の第3回サーキュラーエコノミー(CE)シンポジウム(学士会館)はメジャーどころ勢ぞろいで満席御礼の大盛況となった。すべての講演が秀逸だったが、なかでも筆者が聞き入ったのが東京製鐵㈱建材部建材課長の本松久幸氏の講演だ。日本の鉄鋼生産がどの様にCEへ対応してゆくのか、その課題の解決策の一部が見えて来た。
→4月4日(木)第3回サーキュラーエコノミーシンポジウム in TOKYO のご案内
日本の電炉比率は、中国を除いた世界平均50.1%と比較しても極端に低い。
日本の製造業のリサイクル文化は、バージンが高級でリサイクル材は低級との意識が極端に強く、このことが日本のリサイクル業界の発展を阻んできた主たる要因と考えてきた。
しかし昨日の東京製鐵の本松課長さんの講演を聴いて、鉄鋼業界を今後牽引してゆくであろう、電炉業界のリーダーとしての同社の技術開発力への挑戦が描く、同社の長期展望の説明に納得した次第である。
世界各国の電炉比率
World Steel Association 「STEEL STATISTICAL YEARBOOK」を基に東京製鐵作成
1.日本の鉄鋼生産がこれまで高炉が電炉業界も支配してきた結果、国内の電炉業界の製品は、高炉との棲み分け限定されてきた。その結果電炉で消費しきれない老廃スクラップが海外に輸出され、今や日本は世界第2位の鉄スクラップ輸出国となっている。
2.老廃スクラップに特化すると良質鉄鋼製品、特に薄板分野の生産が出来ないとの過去の常識を覆す電炉技術を東京製鉄は着実に挑戦し、H型鋼、高強度鋼、電炉ハイテン、高規格電炉材など高炉の得意製品分野に長年挑戦した結果、成果が徐々に現れている。
3.老廃鉄スクラップは自動車や家電などから発生する鉄スクラップ中の不純物を活用し更にコントロールすることで、バージン鉄鋼への必須添加物を削減できるメリットも見えてきた。
4.鉄スクラップには、市場に出ない自家の加工スクラップが1,200万トン発生しており、市場では老廃スクラップが2,800万トン国内で発生している。
5.最新の東京製鐵の生産量は313万トンであるが、2030年までに倍増600万トン、2050年には3倍の1,000万トンまで生産を増加させる計画もある。これにより、現在輸出されている700~900万トンの老廃スクラップを国内で還流させ製品化へ挑戦する。
日本の電炉メーカーの力強いサーキュラーエコノミーの将来計画に期待したい。
(IRUNIVERSE Katagiri)
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