ニューカレドニアに非常事態宣言 世界4位のニッケル生産国、独立派デモに中国の影か
フランス政府は現地時間の5月15日夜、南太平洋のフランス領ニューカレドニアに非常事態を宣言し、安定に向けた仏軍の派遣を発表した。同島は世界4位のニッケル生産国。仏政府は同島での中国系動画投稿サイトTikTok(ティックトック)の使用禁止も発表しており、暴動のきっかけとなった独立支持派の背後には中国の影もちらつく。
(出所:JOGMEC)
■過去3回の投票で独立否決
林芳正官房長官は5月16日の記者会見で、「現時点までに邦人の生命、身体に被害が及んでいるとの情報には接していない」と明らかにした。その上で「情報収集を続け、在留邦人の安全確保に万全を期す」と強調した。
暴動のきっかけは地方選挙権をめぐる仏議会の動きに対し、分離独立派が5月13日から起こした抗議デモ。仏側が同島に10年以上居住するフランス人に参政権を認めるよう憲法を改正しようとし、先住民のカヤク族らが反発した。5月16日時点までに憲兵を含む4人が死亡した。
ニューカレドニアは19世紀にフランスに併合された。1980年代から先住民の独立要求があり、2021年までに独立を問う住民投票が3回実施されたが、いずれも独立は否決された経緯がある。しかし独立支持の動きは根強く続いていた。
さらに独立支持派にはかねて、「ニューカレドニアを中国包囲網打破の拠点とし、豪州を孤立させる計算がある中国が接近している」との情報があり、仏国防省などが警戒を強めていた。今回のTikTok禁止も、中国やアゼルバイジャンの勢力の影響を阻止する狙いがあるようだ。
■日本のニッケル鉱石輸入元トップ
(出所:JOGMEC)
中国の狙いには、もちろん資源掌握も含まれるとみられる。ニューカレドニアは前述したように世界の生産量の約7%を占めるニッケル生産国だが、輸出先のトップは中国。ニッケルは中国が進める電気自動車(EV)の電池材料の1つであることは言うまでもない。
一方で、日本との関係も深く、日本のニッケル鉱石輸入元のトップが同島だ。かつては日本製鉄や住友金属鉱山などの日本企業が進出してもいた。ただ、近年はニッケル価格の下落も相まって、グレンコアやエラメットなどが営むニューカレドニアでのニッケル事業は不振が言われていた。
関連記事: 天国に一番近い島 ニューカレドニアのニッケル産業を巡る混乱 | MIRU (iru-miru.com)
(IR Universe Kure)
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