2024年6月のチタン原料市場は下落している。需要と供給がともにさえず、取引が閑散とする中で価格が値下がりする展開となっている。中国では環境当局の鉱山査察が続き、6月8-10日の端午節連休もあって取引を見合わせる動きが続いた。世界的にもこの時期は例年のオフシーズンで、静かな市況となっている。

 

チタン精鉱

 

過去3か月間のチタン鉱石価格の推移(TI02 50% Fe203.14%)(US/ton)

 

　チタン鉱石は6月6日に仲値$388.5/tonと2021年8月以来およそ2年10か月ぶりの安値を付けた。3月末の$401を直近高値に段階的に値下がり。5月半ばからは$390.5で2週間以上維持したが、耐えきれなくなった。

 　中国環境当局の鉱山査察が5月初旬から続き、一部鉱山の生産中止などで供給ひっ迫感が強まった。しかし中国をはじめ世界の製造業の回復遅れが続く中で調達側の加工品需要も弱く、取引自体が減少。6月に入ると、Ferroalloynet曰く「中国の一部の地域は深刻な膠着状態に陥った」という。

　インドやオーストラリアからの供給も少量で、ナイジェリアなどの非主流生産国からの供給はさらに少ない。しかし需要も乏しく、取引が成立したとしても1件ごとの小口取引が主流となっている模様だ。

 

過去3か月間のルチル価格の推移(95% Ti02 bulk Fob豪州)(us/ton)

 

　ルチルは2023年4月から値動きなし。

 

二酸化チタン

 

過去3か月間の二酸化チタン価格の推移(ルチルTi02 93%min Fob China)($/ton)

 

　チタン原材料全体の9割近くを占める塗料向けの二酸化チタンも下落している。6月6日に仲値$2230/tonと2月初旬以来の安値を付けた。3月末に心理的節目の$2400台に乗せたがそこをピークに下落に転じ、5月半ばには節目の$2300を割り込んだ。中国の上海有色網(SMM)は6月5日のレポートで「伝統的なオフシーズンに入りつつあり、需要が乏しい」と指摘。「酸化チタン企業は足元で一定の在庫を持っており、(調達価格に対しては)様子見の姿勢を取っている」とも伝えた。

 

チタンスラグ

　変化に乏しい展開。FerroAlloyNetによると、中国のチタンスラグ企業は古い顧客からの長期注文をさばいている程度の操業で、取引価格は安定している。供給は比較的十分で、特に新規注文において企業間の価格競争が起きつつあるというが、まだ顕著ではないようだ。

 

チタンスポンジ

 

過去3か月間の一般産業向けスポンジチタン価格の推移( China)($/kg)

 

　金属チタンはほぼ横ばい。中国の一般産業向けは6月6日に$7.313/kgと3月初旬以来の安値を付けた。FerroAlloyNetによると、金属チタンは生産者側の工場稼働の増加などで供給も十分だが、調達側は既に在庫を抱え、積極的に取引をしようとする雰囲気が薄い。価格はメーカー側の意思によって支えられている面もありそうだ。

 

過去3年間の航空機向けスポンジチタン価格の推移($/kg)

 

　航空機向けスポンジチタンは2023年1月から横ばい。

 

四塩化チタン

 

過去3か月間の四塩化チタン価格推移(99.99%min EXW China)(Rmb/mt)

 

　他のチタン製品の弱気ムードが波及し、4月に強気が続いていた四塩化チタンも5月以降は元気をなくした。6月6日に仲値RMB6500/mtと、5月半ばにRMB6650に値下がりしたのに続き一段安となった。4月18日にはRMB6700と2023年8月以来の高値を付けていたが、勢いは失せた。

 

 フェロチタン

 

過去3か月間のフェロチタン価格の推移(Ti 70% EU)($/kg Ti)

 

　4月18日に付けた仲値$7.55/kgから横ばい。FerroAlloyNetによると、5月に中国の製鉄所がフェロチタンの入札を開始し、6月も多くが入札を続けた。規模は例年並みで、価格交渉も安定的。中低品質のフェロチタンの新規受注の見積もり価格は一部で引き上げられているとも伝わるが、数は多くないようだ。

 

 

(IR Universe Kure)

 

 

関連記事