REIA&JOGMEC&MIRU 国際レアアースシンポジウム3 記者会見に先立ち南鳥島の海底資源を紹介 海外からの関心高く
MIRU、REIA、JOGMECとのコラボレーションイベント「レアアースシンポジウム in Tokyo」が6月19-20日、 東京都港区の虎ノ門ツインビルディング・カンファレンスホールで開催された。ここでは20日の開催分について、抜粋して報告したい。
2日目はSolvayの最高経営責任者(CEO)であるPhilippe Kehren氏の講演で幕を開けた。その後も講演とパネルディスカッションを挟みながらプログラムが進んだ。
■南鳥島レアアース、環境汚染に海外から関心
このうち、午後の講演から、東京大学 工学部長 加藤泰浩教授による「The Deep-Sea Mining of Rare Earths: Pros and Cons, Yasuhiro Kato, Professor, University of Tokyo」と題するレアアースの海底資源に関する講演をまず紹介したい。加藤教授ら東大と日本財団は6月21日午後にレアアースの海底資源について共同記者会見を行ったが、シンポジウムでの講演は、海外の業界関係者に向けてそれを先取りして紹介した形で、日本でのシンポジウムならではとして高い関心を集めた。
加藤教授が紹介したのは日本の排他的経済水域(EEZ)小笠原諸島にある南鳥島(東京都)の巨大なレアアース資源。そもそも海底のレアアース資源は、陸地の資源に比べ約1000倍の量がある。中でも南鳥島付近には、近隣陸地の2000倍のレアアースが眠っているとされる。場所は改訂5700メートルの深海で、魚の骨などが源になってできたリン酸カルシウムなどを主要構成物に、レアアースを多く含んだマンガンの形で採掘される。
加藤教授によると、現在の陸地採掘によるレアアース産業・サプライチェーン(供給網)には、大きく2つの問題がある。
まずは採掘現場における問題。レアアースは知っての通り多く放射線物質を含むため、採掘現場では放射能廃棄物が排出されることになり、深刻な環境汚染を引き起こす。また、採掘現場での児童労働など人権問題も後を絶たない。
第2に、現在のレアアース採掘・加工産業は9割が中国に依存している。2011年の中国による輸出規制でそのリスクが明らかになった通り、中国依存を減らす必要がある。その意味でも、南鳥島の海底資源は一部を採掘しただけでも日本の需要を賄って十分であり、脱中国依存に大きく貢献する。
翻って、海底資源採掘のネックとなっているのはやはりコストの問題だ。加藤教授が示した巨大建造物による採掘莫大な資金が必要になる。
また、会場からも質問が出たが、環境汚染は海底資源採掘でももちろんゼロではなく、生態系に全く影響しないのは難しい。ただ、加藤教授は「固有種は当該海底にはいないことが判明している」と説明。「採掘現場での人権問題などが発生しないことを考えると、海底資源採掘の方がESGに沿っている」と話した。
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(IR Universe Kure)
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