コバルト市場近況2024#7 じり安、硫酸コバルト過去最安値圏、LME一段安
2024年7月のコバルト市況はじりじりと下落している。電気自動車(EV)電池材料の硫酸コバルトが節目の3万元を割り込んで過去最安値圏に落ち込んでいる。ベンチマークとなるLGコバルトは仲値$12/LB台前半で小幅ながらも下落基調を続け、ロンドン金属取引所(LME)での取引価格も一段安となった。
■硫酸コバルト、供給過剰で在庫急増
長くRMB3万500の水準で横ばいを続けてきた電池向けの硫酸コバルトは、6月27日に仲値RMB2万9500/mtと節目のRMB3万を割り込み、過去最安値圏に落ち込んだ。6月20日にRMB3万に値下がりしてからわずか1週間後の出来事で、その後は反発できずにいる。
下落の背景は過剰生産とEV需要の失速。上海有色網(SMM)によると「在庫急増と価格低迷を受けて中国の硫酸コバルト製錬所の損失が拡大している」という。各製錬所はすでに減産に踏み切っているが、需要の回復が見えない中、「価格押し上げは限定的になる」(SMM)可能性が高い。
過去3か月間の硫酸コバルト価格の推移(20.5%min China)(RMB/Mt)
■LGコバルト、12ドル割れ目前に
LGコバルトの仲値は7月11日に$12.175まで下げた。5月初旬に$13を割り込んだ後も下げ止まる気配が見えず、$12割れが現実味を帯びる。足元ではヘッジファンドによる投機買いもささやかれるものの、構造的な供給過剰が解決されず、反発機運は薄い。
過去3か月間のLGコバルト (Co99.3%)($/LB)価格の推移
一時期は軍用を含む航空機向け需要が期待されたHGコバルトも、LGコバルトに同調する。7月11日に$15.25/LBを付けた。6月20日に$15.625と小幅に上げたが勢いは続かず、LGの下落の流れに押された。2023年6月以来ほぼ1年ぶりの安値水準となる。
過去3か月間のHGコバルト (Co99.8%)($/LB) 価格の推移
■LMEは弱気中国GDPで一段安
国際価格であるLMEコバルトは7月15日に$26180/tonと一段安となった。2019年夏以来およそ5年ぶりの低水準となる。この日発表の中国の2024年4-6月期の実質国内総生産(GDP)が前年同期比4.7%増と市場予想を下回る水準にとどまり、金属相場が全面安となった流れが波及した。その後も同水準から這い上がれずにいる。
過去3か月間のLMEコバルト価格の推移($/ton)
■Topics
7月10日
Mining.comなどの外電は7月10日、「中国レアメタル採掘の中国洛陽栾川モリブデン(チャイナモリブデン、CMOC)が、2028年までにコバルト生産量を現在の約42万トンから80万-100万トン規模まで倍増させる計画だ」との消息筋の情報を伝えた。
関連記事洛陽モリブデン業(CMOC) 2028年までにDRCコンゴの鉱山の銅生産量を100万トンに倍増させる | MIRU (iru-miru.com)
コンゴのコバルトを巡っては、CMOCと合弁でコバルト採掘を手掛けるコンゴ国営のジェカミンが、同社権益分のコバルトの販売を始めたとも伝わった。CMOCによるコンゴのコバルト生産はロイヤルティの関係で2022年まで中止していたが、再開が軌道に乗ったことになる。
7月3日
豪資源大手チャリス・マイニングは7月3日、上場するオーストラリア証券取引所(ASX)で、「三菱商事との間で、西オーストラリア州での白金族元素(PGE)・ニッケル・銅・コバルト・銅(PGE-Ni-Cu-Co)の開発プロジェクトについて、拘束力のない覚書(MOU)を結んだ」と発表した。
関連記事: 三菱商事、豪資源チャリスと覚書 PGE・ニッケル・銅・コバルトの生産で チャリス側発表 | MIRU (iru-miru.com)
7月1日
米ブルームバーグ通信は7月1日、「アンカレッジ・キャピタル・アドバイザーズ(Anchorage Capital Advisors)やスクエアポイント・キャピタルLLP(Squarepoint Capital LLP)などのヘッジファンドが、コバルトの現物を買っている」との消息筋の情報を伝えた。
関連記事: コバルト、ヘッジファンドが底値買い? 価格はじり貧も「トランプ後」の商品高狙うか | MIRU (iru-miru.com)
(IR Universe Kure)
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