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Americas Weekly 30 米大統領選に直結するベネズエラの混乱 移民増加の気配と遠のく原油輸入再開

 ベネズエラの大統領選後の混乱が、国際社会を揺さぶっている。具体的な投票結果を示さないまま選挙管理委員会がマドゥロ大統領の勝利を発表したことに、欧米を中心に集計データの迅速な公表を求める声が高まった。米国は「確かな証拠がある」として野党候補が勝利したと認定した。マドゥロ政権と緊密な関係にあるロシアや中国、イランなどはいち早くマドゥロ大統領の勝利を受け入れており、対立の構図が浮き彫りになった。

 

 ベネズエラ大統領選は7月28日に投開票が行われた。マドゥロ政権がコントロールする選挙管理委員会は、3選を目指したマドゥロ大統領の得票が51.95%、野党統一候補の元外交官エドムンド・ゴンサレス氏は43.18%だったとして、マドゥロ大統領の当選を発表した。

 

 しかし、投票所ごとの集計データが公表されておらず、野党側は集計に不正があったとして全国規模で大規模な抗議デモに打って出た。

 

 野党側は投票所ごとの集計データを入手しており、これによるとゴンサレス氏の得票率は約70%となり、マドゥロ大統領の得票の2倍を獲得している。

 

 大統領選に監視団を派遣した米国の非営利組織カーターセンター(本部・アトランタ)は、投票所ごとの詳細なデータを選挙管理委員会が公表しないことについて「選挙の原則に対する重大な違反だ」と指摘し、今回の大統領選が公正さにおいて、国際的な基準を満たしていないと判断した。

 

 米バイデン政権は「確かな証拠がある」として、野党候補のゴンサレス氏が当選したと認定した。ゴンサレス氏は8月5日、自らを「次期大統領」だとSNSで宣言した。

 

 ラテンアメリカではアルゼンチン、チリ、コスタリカ、パナマ、ペルー、ドミニカ共和国、ウルグアイが、マドゥロ大統領の当選の結果に意義を唱えた。マドゥロ政権と良好な関係を維持するメキシコとコロンビアは、意義を唱えていないものの、集計データの公表をベネズエラに促した。

 

 主要7カ国(G7)の外相が選挙結果を懸念する共同声明を発表したほか、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、ポルトガル、オランダ、ポーランドの欧州7カ国の首脳は共同声明で、大統領選の詳細な集計結果を速やかに公表するよう求めた。

 

 一方で、ロシアや中国、イラン、キューバ、北朝鮮、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、ベトナム、インドネシア、ボリビア、ニカラグア、パレスチナなどはマドゥロ大統領の3選を承認している。

 

 マドゥロ大統領は「不正な選挙」だと抗議する野党側に、強硬姿勢を貫いている。選挙後に治安部隊と衝突したデモ隊約2000人を逮捕した。記者会見でマドゥロ大統領は「選挙結果に反抗する者には厳重な刑務所が待っている」と語り、テロ行為と憎悪の扇動などの容疑で、反対勢力のさらなる摘発に臨む方針だ。

 

 マドゥロ政権は国内の混乱を引き起こした責任を野党の指導者に負わせる方針で、有力指導者マリア・マチャド氏らの逮捕を視野に入れている。

 

 8月2日には、カラカス市内のマチャド氏の事務所に覆面姿の男6人が押し入り、ドアなどを壊し、書類や備品を奪う事件があった。野党側はマドゥロ政権による脅しだととらえている。

 

 こうした中、ラテンアメリカで影響力が大きいローマ教皇フランシスコも、ベネズエラは「危機的な状況にある」と懸念を表明し、「真実を追求し、あらゆる暴力を回避しなければならない」と述べた。

 

 米国は2017年、トランプ政権下でベネズエラへの金融制裁を発動した。ベネズエラにとって、ほぼ1世紀にわたって最大の顧客であった米国への原油の供給が事実上禁止され、ベネズエラ経済に深刻な影響を与えた。

 

 米バイデン政権は2023年、クリーンな大統領選の実施を条件にベネズエラへの経済制裁を解除した。しかし、マドゥロ大統領が掌握するベネズエラ最高裁がマチャド氏の大統領選への立候補資格をはく奪したことから、2024年4月に米国は経済制裁を復活させた。

 

 それでもバイデン政権はシェブロンなど石油メジャーに対し、ベネズエラ産原油の供給を継続する許可を与えていた。

 

 バイデン政権は、マドゥロ政権が続こうが、政権交代が起きようが、大統領選が整然と行われれば、ベネズエラ産原油の米国への供給を復活させることを考えていた。ベネズエラ産原油が米国に再び入ってくれば、高騰が続く国内の石油価格を抑えることができる。これによって大統領選を有利に進めたいというシナリオを描いていた。ところが、「マドゥロ大統領の裏切り」でベネズエラの政治的対立が先鋭化してしまい、原油輸入の再開はほど遠い状況となってしまった。

 

 さらに、ベネズエラ情勢の悪化は、米国を悩ます不法移民の増加にもつながる。マドゥロ政権の圧政や貧困から逃れるため、2014年以降、約770万人のベネズエラ人が故郷を捨てた。その多くが米国に向かい、ここ数年の不法移民の増加につながっている。

 

 大統領選前の世論調査では、ベネズエラ国民の約3分の1が、マドゥロ政権が続けば国外への脱出を検討すると答えており、ベネズエラからの亡命希望者が一段と増えることになりそうだ。

 

 米大統領選の直前に、国を捨てたベネズエラ人が米国に押し寄せれば、バイデン政権と次期大統領を目指すハリス副大統領にとって、極めて難しい対応を迫られることとなる。

 

 ベネズエラの混乱が、米大統領選を大きく揺るがす「火薬庫」となってきた。

 

 

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Taro Yanaka

街ネタから国際情勢まで幅広く取材。

専門は経済、外交、北米、中南米、南太平洋、組織犯罪、テロリズム。

趣味は世界を車で走ること。

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