コバルト市場近況2024#9 動意乏しい、LGとHGの節目割れ迫る LME底堅さも鈍い
2024年9月のコバルト市況は同委の乏しい展開。ベンチマークとなるLGコバルトは仲値$11/LB前半で小幅な値動きにとどまった。HGコバルトも節目割れが迫り、硫酸コバルトも過去最安値圏でじり安の展開だ。供給過剰の改善が遠く、材料も乏しいまま取引自体も閑散としている。
■LG、HGともに節目割れが視野
過去3か月間のLGコバルト (Co99.3%)($/LB)価格の推移
LGコバルトの仲値は9月19日に$11.25を付け、その後も同水準で推移している。2016年7月に$10台を付けて以来およそ8年ぶりの安値水準で、8月22日に$11.25を付けて以来この水準での推移が続く。9月12日に$一時、11.275に小幅に上げる場面があったが、やはり元の水準に戻ってしまった。
上海有色網(SMM)は9月14日のレポートで、「9月に入っても需要が戻らない一方で生産増が続き、供給過剰が解消されない」と指摘。「コバルトは中間製品も含めて需要が停滞しており、新たな最終製品の値下がりが起きる中、卸売価格も下押し圧力が強い」とした。
過去3か月間のHGコバルト (Co99.8%)($/LB) 価格の推移
LGに比べ底堅さが感じられたHGコバルトも勢いをなくしている。9月19日に$15.125を付け、$15割れが視野に入る。8月初旬に小幅に上昇する場面があったが保てず、8月末からは段階的に下落している。
過去3か月間の硫酸コバルト価格の推移(20.5%min China)(RMB/Mt)
電池向けの硫酸コバルトも過去最安値圏での推移が続く。9月19日に仲値RMB2万8000/mtと一段安になった。7月25日から2か月近くRMB2万8500を維持してきたが支えきれなくなった。
■LMEコバルトは米利下げでやや持ち直す
過去3か月間のLMEコバルト価格の推移($/ton)
国際価格であるLMEコバルトは9月23日に$24.105/tonを付けた。8月中旬に節目の$25を割り込み、8月末には$24も下回る場面があった。9月に入ってからは、米連邦準備理事会(FRB)が9月18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.5%の大幅利下げを決めたことで金属価格が全面高となった流れを受け、やや持ち直している。ただ、勢いは鈍く、水準としては統計が取れる20年間での過去最安値圏にある。
■Topics
9月12日
チリで鉱山事業を手掛ける米資源会社のチリアン・コバルト(Chilean Cobalt、C3)は9月12日、自社ホームページ上で、「米鉱業スタートアップのUSストラジック・メタルズ(US Strategic Metals、USSM)およびスイス資源大手のグレンコア(Glencore)との間で、拘束力のない戦略的パートナーシップを結んだ」と発表した。
C3が運営するチリの鉱山から産出するコバルトおよび銅中間製品について、USSMが米国内の下流処理を行う。米国内のコバルトサプライチェーン(供給網)確立の一環とする。
9月11日
米ブルームバーグ通信は9月11日、「グレンコアなどの欧系3商社の事業連合が、コンゴ民主共和国(DRコンゴ)の鉱山で中国企業が生産した銅の入札に成功した」との消息筋の話を伝えた。コバルトに関しても同様の要求があったという。
関連記事:コンゴ、CMOC採掘の銅をグレンコアなどに売却か どっこい資源国、大国を嗤う | MIRU (iru-miru.com)
8月27日
ロイター通信は8月27日、「コンゴで、地元企業による中国勢への銅・コバルト鉱山売却計画に政府が待ったをかけた」と伝えた。国営大手が動いての出来事で、背後には米国の影も見え隠れする。
関連記事:コンゴ舞台にまた米中戦 中国勢の鉱山買収に政府が「待った」 背後に米国の影 | MIRU (iru-miru.com)
8月23日
中国鉱業大手の洛陽モリブデン業(CMOC)が8月23日、上場する香港・上海の両証券取引所で発表した2024年1-6月期決算は、純利益が前年同期の7.7倍の54億1700万元だった。2023年下期にコンゴでの鉱山が本格再開し、大幅増益に結び付いた。
関連記事:世界最大のコバルト生産者である洛陽モリブデン業の上半期の売上高は初めて1000億元を突破した | MIRU (iru-miru.com)
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(IR Universe Kure)
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