東京製鐵 2024年12月契約売出 2カ月連続の全品種据え置き
東京製鐵は18日、記者会見を開き、2024年12月契約の鋼材販売価格については2カ月連続の横ばいで、全品種を据え置くと発表した。先月から継続して、鋼材市況の早期底入れを図る。市況下押しの要因となっていた輸入鋼材に関しては、円安のため対日向けオファー価格の値下がり懸念が和らぎ、「需給バランスの改善が見込まれる」と分析している。また、田原工場における酸洗コイル(5幅)の販売を今月契約より開始すると報告した。
輸出環境もホットコイルとH形鋼ともに先月から横ばいで、現在成約済みのものがホットコイルでFOB 560ドル〜570ドル。H形鋼がFOB 700ドル~720ドルを維持している。生産予定については11月全体で23万5000トン(前月予定比1万5000トン減)、H形鋼が8万5000トン(5000トン減)、ホットコイルは10万トン(同比1万トン減)[内、輸出は1万トン(5000トン増)]、厚板4万トン(5000トン増)。
物件価格及び在庫販売価格についても鋼材価格同様に横ばいとなった。H形鋼が12万円、異形棒鋼が9万円、厚板が10万3,000円(建値と同額)。本日11月18日(月)午後より販売開始した。
東京製鐵の基調コメントは以下の通り。
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鉄鋼関連製品を取り巻く環境は、おおむね各国において 底入れ機運が台頭してきているものの、本格的な反転までには至っていない状況。特に中国においては、政府による景気刺激策により鉄鋼需給の大幅な改善に期待が寄せられているが、足元では、総じて鋼材市況は様子見となっている。一方、米国では、大統領選挙の結果を受け、 今後の新体制下におけるさらなる景気浮揚への期待も高まっており、来年に向けて、国内消費の拡大による鉄鋼需要の増加次第では鋼材取引価格の上昇が予想されるが、引き続き、 世界の経済動向と金融政策、鉄鋼需給の変化について注視していく。
国内マーケットにおいて建材製品では、建設関連業種の労働力不足に始まり、設備や労務コストの上昇による影響が色濃く残り、予定案件は増加してきているものの、足元でも施工会社の受注調整が続いているなか、全国的に鋼材需要は低位で推移している。しかし、市中在庫は品種やサイズにより品薄や歯抜けが見られ、 鉄鋼メーカーへの現物の問い合わせも多くなっていることから、これまで下落傾向が続いていた鋼材市況は下げ渋りから底打ちへと転じつつある。今後の各種建設工事の進捗次第ではあるが、荷動きの増加に伴う市況の回復が待たれるところ。
鋼鈑品種では、各種の製造業向けにおいて目立った需要の回復には至っていない。また、 建設需要の低調さも影響し、商況は切り板を含めて盛り上がりに欠ける状況にある。他方で、これまで市況下押しの要因となっていた輸入鋼材は、円安のため対日向けオファー価格の値下がり懸念が和らぎ、今後の需要の回復次第では、国内鉄鋼メーカーの供給抑制と相まって、需給バランスの改善が見込まれる。
年末に向け、鋼材市況は底打ち感が強まることが期待されるが、引き続き国内外の受給動向を注視していきます。以上のような状況のもと、先月と同様に、 足元の国内外のマーケット状況を鑑みて鋼材市況の早期底入れを図るため、今月は全品種据え置きとした。引き続き需要に見合った生産を継続し、需給の調整に努める。
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海外、底値は脱してステージが変わった
また、小松﨑裕司取締役常務執行役員営業本部長はこのコメントに補足する形で、以下のように見解を示した。
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海外を見ると、アメリカの新政権発足や中国で次々と打ち出される景気対策がどのように鉄鋼需要に結びつくかを見極める必要があり、様子見の商況とみている。とはいえども、メーカーの採算式ははっきりしている。今月のアジア諸国のメーカーの売り出しをみていても、横ばいから若干の値上げということで、底値は脱してステージが変わったと思う。様子見ではあるが、中国の需給バランスには注意していきたい。
一方、国内では、低調な鋼材需要を受けた形で荷動きの盛り上がりは少ないが、市中在庫はおおむね適正水準で品種によっては品薄感もあり、相場の下げ止まり感が確実に見え始めたと認識している。当社としても底値感を示していきたい。また、需要回復や工事の進捗次第ではあるが、早期の底入れと回復に期待したい。先月に価格を据え置いた段階で、止まっていた案件も動き始めたと感じている。
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2024年12月契約の品種別販売価格(O/T NET ベース価格、トン当たり円)は以下の通り。
※11月契約の価格から全品種据え置き
H形鋼及び形鋼:2023年4月契約において3,000円の値上げ後、1年5か月連続で、価格据置としたが、2024年10月契約にて1万2,000円値下げ。
H形鋼=11万5,000円(2024年10月契約にて1万2,000円値下げ。)
縞H形鋼=12万5,000円(2024年10月契約にて1万2,000円値下げ。)
I形鋼=11万6,000円(2024年10月契約にて1万2,000円値下げ。)
溝形鋼=11万1,000円(2024年10月契約にて1万2,000円値下げ。)
角形鋼管(コラム):2022年9月契約において5,000円値下げ後、2年連続で、価格据置としたが、2024年10月契約において、更に1万円の値下げ。
角形鋼管=11万8,000円(2024年10月契約にて1万円値下げ。)
U形鋼矢板:2023年4月契約にて3,000値上げ後、1年と5か月連続で、価格据置としたが、2024年10月契約において、1万2,000円値下げ。
U形鋼矢板=12万7,000円(2024年10月契約にて1万2,000円値下げ。)
異形棒鋼:2023年7月契約にて5,000円下げ後、1年と2か月連続で価格据置としたが、2024年10月契約において、更に1万円の値下げ。
異形棒鋼=8万8,000円(2024年10月契約にて1万円値下げ。)
厚板:2023年7月契約にて1万円下げ後、1年と2か月連続で価格据置とした が、2024年10月契約において、更に1万5,000円の値下げ。
厚板=10万3,000円(2024年10月契約にて1万5,000円値下げ。)
コイル類4品種 2024年2月契約において2,000円値上げ後、7か月連続で価格据置としたが、2024年10月契約において、1万5,000円の値下げ。
(2024年2月以前の値上げは2022年5月契約にて3,000円値上げ以来だった。)
ホットコイル=9万2,000円(前回の値下げは2023年7月契約にて1万円下げ。2024年10月契約において、更に1万5,000円の値下げ。)。10万円を下回るのは、2021年5月契約(9万4,000円)以来。
縞コイル=9万5,000円(前回の値下げは2023年7月契約にて1万円下げ。2024年10月契約において、更に1万5,000円の値下げ。)
酸洗コイル=10万円(前回の値下げは2023年7月契約にて1万2,000円下げ。2024年10月契約において、更に1万5,000円の値下げ。)
溶融亜鉛めっきコイル=12万4,000円(前回の値下げは2023年7月契約にて7,000円下げ。2024年10月契約において、更に1万5,000円の値下げ。)
以下カットシート類(2023年7月契約において値下げを実施依頼、1年と2か月連続で価格据置としていたが、2024年10月契約において、更に1万5,000円値下げ)
熱延鋼板=9万7,000円(2023年7月契約にて1万円下げ。2024年10月契約において、更に1万5,000円の値下げ。)
縞鋼板=10万円(2023年7月契約にて1万円下げ。2024年10月契約において、更に1万5,000円の値下げ。)
酸洗鋼板=10万7,000円(2023年7月契約にて1万2,000円下げ。2024年10月契約において、更に1万5,000円の値下げ。)
[申込締切日:2024年11月20日(水)12時まで]
(IRuniverse K.Kuribara)
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