東京製鐵、グリーントランジション2024で新たな展望を語る

12月4日、東京製鐵の執行役員大阪支店長伊藤岳氏がグリーントランジション2024に登壇し、「EAF’s Green Steel with CN & CE」というテーマで講演を行った。今年9月に行われたサーキュラーエコノミーシンポジウムでの内容を踏まえつつ、今回の講演では新たな事例やデータが紹介された。
関連記事:東京製鐵・伊藤氏、老廃スクラップアップサイクルの大義強調―第4回CEシンポジウム
東京製鐵が掲げる長期環境ビジョン「Tokyo Steel EcoVision 2050」について、伊藤氏は再びその重要性を強調した。このビジョンは、2050年までにカーボンニュートラルを達成し、生産量を1,000万トンまで引き上げるという目標を掲げている。鉄スクラップと電炉を活用した製鉄は、従来の高炉製鉄と比較してCO₂排出量を大幅に削減する。具体的には、電炉による鋼材製造のCO₂排出量は0.4トン/トンであり、高炉製鉄の2.0トン/トンと比べてわずか20%だという。
電炉の使用割合を見ると、米国の鉄鋼業界では69%に達している一方で、日本の鉄鋼業界では26.7%に留まっている。伊藤氏は、米国では電炉の普及率がすでに比較的高いものの、今後さらに増加する可能性があると指摘した。また、日本における電炉の普及率はまだ低く、今後大きな成長余地があると述べた。
講演の中で伊藤氏は、東京製鐵が「老廃スクラップ」の活用を軸に、鉄スクラップのアップサイクルによる循環型社会の実現を目指していることを説明。また、Panasonicとの協力によるクローズドループの取り組みを新たな事例として紹介した。この取り組みでは、使用済み家電を回収・分解し、そこから選別された廃鉄を東京製鐵が鋼板として再生。その鋼板が再びPanasonicの家電製造に使用されるという循環が確立されている。
さらに、2025年開催予定の大阪万博では、東京製鐵とPanasonicを含む複数企業が協力し、使用済み家電からリサイクルされた鉄を基に、展示会場の柱や梁を構築する計画が進行中である。講演によると、会場内の鋼材の82%がスクラップから再生されたものになる予定だ。
質疑応答の場面では、CREAの研究員・沈昕一氏から「中国の鉄鋼業界も現在、脱炭素化を進めているが、東京製鐵はその技術を中国企業と共有する考えはあるか」という質問が投げかけられた。それに対し、伊藤氏は「東京製鐵はすでに海外の多くの企業と協力しており、中国企業とも技術を共有することに前向きだ」と回答。これにより、国境を超えた脱炭素技術の連携可能性が示唆された。
老廃スクラップの活用方法について沈氏から質問あり、東京製鉄は未来のために技術交流してゆきたいと回答した。
東京製鐵の活動は、国内外での環境問題への取り組みを牽引する存在として、令和版「大地の子」のような役割を担い続けている。これからの展開が注目される。
(IRuniverse Lin)
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