ステンレス鋼材国内市場近況2024 #46 盛り上がりに欠けた2024年
2024年のステンレス鋼材市況を振り返ると、Ni系、Cr系ともに、盛り上がりに欠けた1年、といえる。つまり需要は乏しかった。しかし考えなければならないのは、前回でも触れたが、鋼材そのものではなく、二次、三次の加工製品の日本への流入が増えている点である。この傾向は来年も続いていくと思われ、その動向には注視しておかなければならない。
今年最後の、12月契約の店売りで日鉄ステンレスはNi系について為替の円安を理由として、キロ当たり5円の上げを発表(12月5日)したが
「これは全くの空振りに終わるだろう」(ステンレスコイルセンターディストリビュータ担当氏)との見方が大勢で、市中実勢は下がり続けている。
「おそらく年度末(25年3月末)まで下がる」(前出同)とも。しかしこの見方は多くのステンレス鋼材の販売に携わっている方々は共通ではないだろうか?
やはり従前から存在する輸入品との値差は埋めがたく、国産304冷延薄板2Bコイルはコイルセンター販売ベースでキロ当たり560~570円、というところ。韓国のPOSCOと現代は日鉄の5円上げでオファーを上げているとのこと。しかしそれでも460~470円の水準。インドネシア青山材ならば350円前後。
430系は国産品は370円前後で変わらず。中国TISCO、宝新、ヨンジン製品は320円前後。
(2024年のLMEニッケル相場と国産ステンレス304冷延薄板市況の推移)
(2024年の高炭素フェロクロム相場と国産430冷延薄板市況の推移)
下げ基調とはいえ、いまだ日本のステンレス鋼材は世界トップレベルの価格であり、430系についても同様。
だからなのか
「需要が盛り上がらなかった原因のひとつに、高値を嫌ってステンレスから鉄に素材を変えるところもありました」(関西地区のステンレス加工企業)という事例もいくつか聞く。
あるいは
「ステンレスだけでなく、他素材や人件費が高騰したことで設備投資の予算を上回り、計画を先送りしているところもちらほら。設備投資案件がなかなか動かない1年だった」(前出同)とも。
一方、シリコンアイランドの九州地区では、東京エレクトロンの設備投資に合わせて精密板金加工の工場は来年3月までは繁忙という。中国向けの半導体製造装置の受注が増えている模様。しかしこれも来年3月以降は落ち着くため、九州地区での半導体製造装置向けのステンレス需要は概ね、24年比で横ばい、という冴えない予想となっている。ただ、その東京エレクトロンも2026年にインド、ドイツ向けの半導体製造装置の出荷が計画されていることで再び需要は盛り上がってくると、九州地区のステンレスディストリビュータ氏は期待している。
2025年のステンレス鋼材市況は今のところ今年と変わらず大きな盛り上がりは期待できなさそうだが如何に?
(IRUNIVERSE YT)
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