トランプ関税、資源価格に波及 NY金2900ドル乗せ、銅上昇 米アルミ鉄鋼も堅調
トランプ米大統領は2月10日、鉄鋼・アルミニウムの輸入に25%の関税を賦課する大統領令に署名した。中国も2月10日に報復関税に踏み出すなど世界的な貿易戦争が激化する中、金や銅の国際価格が上昇している。関税対象となった米国の鉄鋼やアルミ価格にも力強さが目立ち、影響が資源価格にも出始めた。
■世界貿易の秩序破壊懸念で安全資産買い
国際標準となるニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物価格は 2月10日に一時2920/tozドルと節目の$2900を超え、過去最高値を付けた。米中をはじめ各国が関税の応酬を始めており、世界貿易の秩序が損なわれるとの懸念から、安全資産としての金が買われている。
過去20年間のNY金価格の推移($/toz)
市場では「(金価格と逆相関関係にある)米ドルがまだ他国通貨に対して高値圏にあり、金価格の下押し材料になる」(野村証券金融経済研究所経済調査部コモディティ調査の高島雄貴エコノミスト)との指摘もあったが、貿易戦争に対する懸念は強い。
■米鉄鋼やアルミ堅調、銅にも関税示唆
米国内の金属価格も動きが出てきた。トランプ大統領が2月10日に関税の対象とした鉄鋼とアルミの米国内価格は堅調だ。米国の線材鋼材・棒鋼鋼材価格、ホットコイル・コールドコイル価格はすべて2024年中に底を打ち、足元で値上がりの傾向だ。
過去1年間の米国の棒鋼価格と線材価格の推移($/ton)
過去1年間の米国のホットコイル価格とコールドコイル価格の推移($/ton)
アルミは米国のアルミ新地金が高値cents 30/LBと2023年2月以来2年ぶりの高値水準に上昇している。ロンドン金属取引所(LME)のアルミ価格の動きと比べると、力強さが目立つ。
過去3か月間のLMEアルミ価格と米アルミ新地金価格の推移($/ton)(cents/LB)
銅にも買いが入りつつある。トランプ大統領は2月9日、銅への輸入関税も示唆した。NY銅価格は2024年11月以来の高値圏に戻している。
過去3か月のNY銅価格の推移($/LB)
(IR Universe Kure)
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