コバルト市場近況2025#2 下げ止まらず、LG10ドル割れ目前 反発材料見当たらず
2025年1月のコバルト市況は下げ止まらずにいる。2025年も構造的な供給過剰が続くとの見方が強く、「反発する材料が見当たらない」(コバルトを扱う外資系商社の担当者)様相だ。ベンチマークとなるLGコバルトがいよいよ10ドル割れ目前となり、「1ケタ時代」が視野に入ってきた。
■LGは10ドルぎりぎり、供給過剰続く
過去3か月間のLGコバルト (Co99.3%)($/LB)価格の推移
LGコバルトは2月13日に仲値$10.05/LBを付けた。1月上旬に節目の$11を割り込んでから、小幅ながらも段階的に水準を切り下げた。もし10ドル割れなら2015年12月以来9年超ぶりの安値圏となる。
中国レアメタル大手の洛陽モリブデン業(チャイナ・モリブデン、CMOC)は1月22日に上場する香港証券取引所で発表した2025年の生産目標で、コバルトの目標を10-12万トンと、2024年実績(11万4165トン)に比べ最大4.7%増やす計画とした。
関連記事: 中国CMOC、25年コバルト生産目標は最大12万トン 前年比5%増、価格低迷下で増産 | MIRU
CMOCによる供給の大幅拡大などにより、世界のコバルト供給量も引き続き増える見通しとなった。コバルトの生産地であるコンゴ民主主義共和国(DRコンゴ)では内戦激化が伝わるが、「コバルトの産地とは地域が異なる」(証券大手アナリスト)との情報もあり、現時点では供給には影響していない。このため「構造的な供給過剰が解消される見込みは薄い」(外資系商社の担当者)となっている。
■HG、LME、硫酸コバルトは横ばい
過去3か月間のHGコバルト (Co99.8%)($/LB) 価格の推移
製造業の低迷長期化を背景とした需要の鈍さも引き続き価格の下押し圧力となっている。航空機向けなどのハイグレード品であるHGコバルトは2月13日に仲値$13.375/LBを付けた。2月6日からの$13.325からはやや戻したが、2月初めの水準に上げただけで、微調整の範囲内。中期で見れば1月末からほぼ横ばいとなる。2024年12月中旬に割り込んだ$14台回復は遠い。
電池向けの硫酸コバルト、国際価格のLMEコバルトも横ばい。両者はともに統計が取れる20年間での過去最安値圏にある。
過去3か月間の硫酸コバルト価格の推移(20.5%min China)(RMB/Mt)
過去3か月間のLMEコバルト価格の推移($/ton)
■Topics
2月1日
インド政府は2月1日公表の2025年度(25年4月〜26年3月)の連邦政府予算案で、「コバルト粉末と廃棄物、リチウムイオン電池のスクラップ、鉛、亜鉛、その他12の重要鉱物について、輸入関税を撤廃する」と発表した。
関連記事:インド、コバルト粉末や電池スクラップの輸入関税を撤廃 25年度予算案、製造業拡大へ | MIRU
1月30日
スイス資源大手グレンコアが1月30日に自社ホームページ上で発表した2024年の生産実績のうち、コバルトの生産量は3万8200トンと前年比8%減った。
関連記事:グレンコア、24年は金属減産 コバルト8%、ニッケル16%の生産減 銅も減少 | MIRU
1月27日
国際業界団体のコバルト協会(Cobalt Institute)が1月27日に発表した2024年10-12月期のレポートによると、2024年の世界のコバルト供給量は25万6000トンと前年比22.5%増えた。
関連記事: 世界のコバルト生産量、24年は25万6000トン Cobalt Instituteレポート、価格一段安 | MIRU
中国が「リチウムイオン電池用リサイクル用のブラックマスの国家規格の制定を目指していることが分かった。含有するコバルト、ニッケル、リチウムのリサイクル環境の整備につなげる狙い。2024年12月31日に「GB/T 45203-2024」として公開しており、7月1日からの施行を目指すとしている。
関連記事:中国、ブラックマスの国家規格制定へ――7月1日実施予定 | MIRU
(IR Universe Kure)
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